「なんだこれ!?みーんな超かっこいいって言うから期待して聞いたのに、、こんなの音楽じゃ無ぇ!」
Children Of Bodomファンの友人は私にそう吐き捨てた。
そのアルバムは18歳の中学2年生だった私の心に深く突き刺さり、42歳の中2の梅雨である今も尚、呪縛の様に纏わりついているのであった。
アルバムタイトルはTransilvanian Hunger、アーティストはノルウェーのブラックメタルバンド、Drakthrone。
劣悪な音質と怪しげなアートワーク、何故か頭に残るフレーズで構成されたこのアルバムは、後にプリミティブブラックメタルの名盤となり、今日に至るまで同ジャンルにおいて最大級の影響を与え続けている。
私がブラックメタルに初めて触れたのは、EMPERORの1st Album「In The Nightside Eclipse」。
Burzumと一緒にトイズファクトリーから国内盤が発売される事になり、
それが当時毎月購入していたDoll誌の広告に掲載されていた事がきっかけだった。
なので、Transilvanian Hunger自体は若干後追いで触れる事になった訳だが、その時の衝撃は未だ忘れられない。
本当はそんな事は無いが、その瞬間だけは全てが自分に向けて発信されていた。
まずは見て欲しい。このジャケットを。
かっこよさここに極まれりである。
まずロゴがかっこいい。そして写真がかっこいい。デザインがかっこいい。
これが後々のブラックメタルバンドがテンプレートの様に使う白黒2階調ジャケットの元祖(では無いが、完成形と考えればこれを起点にしても良いと思っている)である。
基本的に全てのブラックメタルファンはこのジャケットのデザインの服を来た事がある筈だ。
現に私は20年近くこのデザインの服を消耗品の様に拠れたら買い直し続けている。
また、余りにも完成されているこのジャケットデザインは、世界中のマイノリティな人間に愛され、マグカップ等としても販売がされている。
ブラックメタルファンを自称するならば、是が非でも手に入れ、砂糖を入れずにコーヒーを飲むべきであろう。
そして、音。プリミティブブラックメタルの特徴はその音質の悪さにある。
とにかく音が悪い。確かにChildren Of Bodom等のファンの人間が、初めて触れれば冒頭に書いた様な感想になるのも理解ができる。(ちなみに私、Children Of Bodomも好きですよ。)
しかし、バンドの中心人物であるfenrizのインタビュー等からすると、意図的に録音の質を著しく下げる事は、メインストリームである事を否定しアンダーグラウンドである事を良しとする彼らのその時なりの意思表示の様な物なのだと言う事が分かる。
結果として、それは禍々しい雰囲気や狂気・冷たさを孕み、世界観をよりはっきりとさせる事に成功しているのだと思う。
と言う訳で歴史的名盤Transilvanian HungerのリードトラックタイトルもそのままTransilvanian Hunger、を置いて置くので聴いた事の無い人は是非触れて欲しい。
新しい世界が開けたならばそれはとても幸せな事だと思う。
如何であっただろうか?
明らかにアンダーグラウンドな音であるにも関わらずこの何とも言えないキャッチーさ。
このバランスがこのアルバムの奇跡的な所だと、個人的には思う。
音のバランスも奇跡的。劣悪なのにも関わらず、全ての音がしっかり聞こえる。
今の世の中プリミティブブラックメタルバンド等星の数程いるが、このバランスを実現しているバンドなどほぼ居ないのでは無かろうかと思う。
原点にして既に完成形なのだ。
特にこの曲は名盤の中の名曲である為、非常に多くのカバーが存在する。
その内のいくつかを置いておくので、気が向いた時にでも聴いてみて欲しい。
世界中の変人達の愛を感じる筈だから。
恐らくいい人なんだと思う。
お部屋のBGMにでも。
プリミティブ8bit!ずっと聴いていられるね!