3月末日、弟が武庫川の職業訓練所へ入所した。1962(S37)年のこと。
3月に中学を卒業した弟は、高校へ進学せず、手に職をつけるため職業訓練の道を選んだ。その訓練所は武庫川にあるので、親元を離れての寮生活になる予定だ。
出立の日、親父は珍しいカバンを出してきた。親父が若いころ使っていた馬革のカバンだ。トランクと呼んでいた。後に出来た映画で「寅さんシリーズ」があるが、その寅さんが持つトランクと同様のものだ。そのトランクに母が、寮生活で要る衣類や日用品を入れて、みんなで見送った。

↑ 革のトランクを提げた弟
夕食時、いままで7人で食卓を囲んでいたが、その日からひとり減ったので、ちょっぴり寂しくなっていた。