あのころの君たち Part.6 | 西島三重子オフィシャルブログ「御殿場より愛をこめて」Powered by Ameba

あのころの君たち Part.6

ひなたの子どもを見つけた翌日、

散歩夫人に言われて、

私は家主さんの家に挨拶に行ったんだ。


そしたらおばあさんが出てきて、

「仕方ないね・・・」と言ってくれたんだけど

翌日、東山湖に行くと管理小屋に、

家主さんから

「なるべく早く子猫を引き取ってほしい」

と伝言があったんだ。

考えてみればそうだよね。

野良猫が家の納屋で子供を産んだのを見つけたら

誰だって困るよね。

それで、突然だけど、

お引っ越しさせることになったんだ。

とりあえず管理小屋の隣の空き家の倉庫に
いいスペースを見つけたので
そこへ入れるようにいろいろ準備したんだ。

ひなたが食事しているうちに子猫を連れて来て

一緒に新しい棲み家に案内しようという作戦。

ところがここでアクシデント。

用意した引っ越し用のエコバックに入れたはずの子供が

一匹行方不明になっちゃったんだ。


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とりあえず三匹を連れてひなたの所へ行こうと庭先を抜けるとき

家主さんの奥さんにばったり会ったんだ。

残りはあとで迎えに来ます…とは言って安心させたものの、

見つける自信はなかったよ。

もう、ひなたの母性にすがるしかなかったんだ。

管理小屋前の餌場に戻ったけど、何かを察知したのか

ひなたはいつもより餌を食べないんだ。

そうしてひなたに連れてきた子猫を見せたけど、ひなたは知らん顔。

(さては育児放棄か…)

しばらく様子を見てたけど、棲み家に帰って行こうとするから、

あわてて先回りしてひなたの棲み家で待つことにしたんだ。

棲み家は行方不明の子猫の捜索の時に半壊したから

仕方なくエコバックのまま元の位置に子供たちを置いたんだ。

帰って来たひなたは事情を察知したらしく、

バックの中から子猫を一匹咥えて

納屋の反対側から奥へと消えていったんだ。

だけど待てど暮らせどひなたは帰ってこない。
家主さんのこともあるし、周りには他の猫たちもいる。

自然の中は危険がいっぱいだし、

このままここに置いて行くわけにもいかず、

ひとまず管理小屋の前に戻ったんだ。

そこへ散歩夫人と散歩嬢が来たんだ。

子猫をみて目を細めていたけど、

ここからが大問題だったんだ。


私たちも散歩夫人も明日は家にいないんだ。

つまり子猫の面倒を見れる人がいないんだ。

人の手に触れた子猫は育児放棄されるから

留守の間は動物病院に預け先生に相談した方がいいと

散歩夫人と散歩嬢に言われて、

夕方病院が開くまで家に連れて帰ったんだ。

でも不器用に哺乳瓶からミルクを飲む子猫たちの顔を見ていたら

とても無理だと思ったよ。

やはりひなたのもとに置くのが一番なんだってね。

冷静になって考えてみると、私は人間の身勝手な判断で、

入っちゃいけない領域に、土足で踏み込んでいたんだ。



そうなんだ。

いろんな人にいろんな意見をもらって行動したけど、

私が一番信じなくてはいけなかったのは

他ならぬひなたの母性だったんだよ。

私の目の前で一匹咥えて姿を隠したひなたには

ちゃんと母性があったんだものね。

私はあの時のひなたの母性にもう一度賭けてみようと思ったんだ。


今度は家主さんに見つからないように

私はそっとひなたの元の棲み家に行ったんだ。

そうして藁を直して子猫たちを置き、

ひなたが姿を消した納屋の反対側に行って

小さな声でひなたを呼んだんだ。

それから子猫たちのもとへ戻り、ひなたを待っていると、

ひなたがどこからともなく現れた。

ひなたは私を見て声なき声で鳴くと、

また一匹咥えて姿を消したんだ。

そして間もなく戻ってくると、

最後の一匹も咥えていったよ。

行方不明の子猫も、ひなたならきっと見つけたはずだよ。

大丈夫。

こんどはもっと安全な場所を見つけたはずさ。

幸い家主さんは子猫たちはもういないと思っているからね。


やっぱりひなたは誇り高き野良。

人間の思うようにはいかないよね。

その日、私はひなたから沢山のことを学んだよ。

これからはひなたの信頼を裏切らないように

距離を置いて見守っていこうって決めたんだ。

いつかひなたが子猫たちと姿を現すまで

待っていようって決めたんだ。


翌日、東山湖に行くと、

ひなたはいつものように待っていて、

私を見ると、飛んできた。

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そうして私があげたご飯を食べてくれた。


ひなたのおっぱいは、ちゃんと膨らんでいて

子猫たちに飲ませているようだった。

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ひなたは以前のように散歩にもついて来てくれた。
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ひなたとの距離はむしろ近づいたみたいで

散歩嬢がこんなに近くに来ても大丈夫になったんだ。

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そんなある日、

突然ひなたが子供たちを連れて来たんだ。


橋の脇の茂みの中から、

お母さんについて3匹の子猫が姿を現したんだ。

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あのとき行方不明になった三毛の子猫も

ちゃんと元気に姿を見せてくれたよ。

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ひなたにそっくりだったから

私はジュニアって呼ぶことにしたんだ。


ねえ、こたろう。

この子が誰だかわかるかな?
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そう、君のことをお兄ちゃんのように慕って

追いかけている『あんず』だよ。

ほら、背中の模様は今も変わらないだろう?


今私の前に姿を見せるのはあんずだけだけど

サバ柄の女の子はお腹が大きい時に

餌を食べに来ていたから、

きっとみんなどこかで

自分のテリトリーを見つけて

逞しく生きているって思うんだ。


もしかしたら私の知らないところで

君たちは会っているんじゃないの?



                  ・・・・・・・つづく