リハビリ病院を退院して久しぶりに会社に行った時、地下鉄の壁に「KPIとKGIの違いが分からない」という、某新聞社の広告ポスターが掲出されていた。

倒れる少し前にも職場で話題になっていた、

「KPI」とは、

「KeyPerformanceIndicator」、「重要業績評価指標」というヤツで、組織の業績やパフォーマンスを評価する際に使われる指標のことだ。

「KGI」は、

「KeyGoalIndicator」、

「重要目標達成指標」のことで、

「KGI」を達成するために行う様々な活動の指標が「KPI」という関係にある。ふと、リハビリにおける「KGI」と「KPI」は何だろう?と思い、検索サイトで「リハビリ」「KGI」「KPI」と入れて検索してみた。すると出て来たのは、案の定、病院やクリニックの経営における「KGI」「KPI」の話だった。いや、そうじゃなくて、期待したのはリハビリを進めて行く上での患者の「KPI」というか(苦笑)、私の場合「障害者になる前の状態に回復する」というのが「KGI」だとしたら、「麻痺側の運動性を高めて「歩行能力を上げる」とか、「腕の可動域」を広げて「動かせる可能性を高める」というのが「KPI」になるかもしれない。そしてその評価指標的にOT(作業療法士)さんから言われるのが、「ADL」だ。「ADL」は、

おそらく

「Activities of(for?)Daily Living」の略で「日常生活の動作」というような意味だ。この「Daily Living」は、おそらくそれぞれで、どんな生活をしているかで十人十色だろう。一時期OT学会か何かのポスターで、主婦らしい女性が洗濯物を干している絵に、「お母さんが洗ってくれてる、嬉しい」という、ジェンダー的にはかなりアブナイ表現のコピーが描かれたモノが病院とクリニックの壁に貼られていたことがあったが、女性の「作業」は「家事」だと決めつけているようで、「このポスター見て、リハビリしたくなくなる人も出て来るんちゃうかな?」と思ったものだ。

「ADL」の中身は慎重に患者と療法士で話し合って考えるべきだと思うが、私は「AH」というものを考えて欲しい、と思う。「AH」とは、

「Activities of(For?)Hobby」のことだ。私が障害者なりに勝手に考えた言葉で、リハビリの用語でも何でもない。

「Hobby」、つまり「趣味」のことだ。私にとっては「ギターを弾くこと」がそれに当たる。生活がかかっている訳ではない。私がプロの演奏家で、それで生業を立てているならそうかもしれないが、そうではない。「趣味」の大切さは今更語るつもりはないが、失って知る、人生におけるエッセンスよ。現代日本において脳内出血で倒れた私は通行人の早期発見と発達した急性期病院の医療、適切なリハビリ病院と療法士さんのリハビリによって杖を突いて歩けるようになり、退院して復職してもなお、温かい職場のフォローと対応と家族の支えにより、「生活」はおかげさまでむしろ楽しく送っている。しかし休みの日にふと、ギターを手にして歌うことができない。何度も開いた楽譜も本棚にしまったままだ。テレビで歌っているあいみょんを観て、自分も同じように弾き語りがしたくなる。これは大きな喪失だ。あらためて「失ったモノ」の大きさを実感する。いつかギターを持ってお世話になった人や施設を回って、歌を歌って披露したい。そのための「セットリスト」も作ってある。

だからこそ「AH」を高めることは、私にとってリハビリの原動力であり、曲げられない、捨てられない「願い」だ。「希望」だ。

「AH」という言葉が「ADL」と同様に当たり前のようにリハビリの現場で使われるようになることを願ってやまない。誰か、論文書いてくれへんかな。「AH」という指標は患者と療法士双方で共有しやすく、高まった時の喜びが共に分かち合え、シェアできるモノだと信じる。


以前にも似たようなコト、書いてた。笑

趣味で料理したい人だっているに違いない。