テレビで板東玉三郎さんが「後進の指導には「共に時間を過ごす」ことが大切だ、というようなお話をされていた。先生と生徒は教室で向かい合って指導をする。職人の世界では師匠の背中を見て学ぶ、「ワザを盗む」というような表現がよく聞かれる。自分がやってきた映像制作の世界ではどうだろう。撮影の現場でも編集室でも、先輩と後輩はたいてい並んで同じもの(撮影対象や編集モニター)を見ている。背中は見せようがないし、ワザを盗むヒマもない。そう考えると「共に時間を過ごす」ということがとても大事なことだったように思われて来る。撮影現場や編集室だけではない。映像の企画会議から
ロケの準備(オールスタッフミーティング、機材準備)、ロケ先への移動、現地入りしてからの移動のロケ車の中、撮影現場の最終確認、ロケハン、撮影本番、終わった後の食事、こうした時間を共に過ごすことで学ぶこと、伝わることがたくさんある。もちろんそのスタッフの中に職人肌の方がおられると質はさらに高まる。
「正解」や「定石」というものがハッキリしていないクリエイティブな現場では無意識のうちに互いが互いのスキルややり方を尊重し合って遠慮をし、「そのやり方は違う」とか「こうしろ!」とか新人や後輩からすると理不尽に思えるような怒られ方や教えられ方をすることはあまりない。そういう先輩後輩関係が生まれるのは偶然を待つしかないかもしれないが、できる限り「共に時間を過ごす」というのはたしかにとても大切なことなのかもしれない。さすが人間国宝、おっしゃることに重みと真実がある。勉強になりました。