石田ゆり子師匠(勝手にそう呼ばせて頂いております)のエッセイで、吉本ばななさんの小説が素晴らしい、とありましたので読ませて頂きました。
6篇の短編小説。 タイトルのこの小説から読み始めました。
お互いに『ふびん』さを持ち合わせる男女(外山君とゆき世さん)。
ともに親から反対された結婚…紆余曲折の末、結ばれた2人が、半ば駆け落ちのようにヘルシンキに新婚旅行に出ました。
町のとある高級レストランで、クローク係の男性から2人にかけられた、心温まる言葉。
『見ればわかるんですよ。私はずっとここでいろいろなご夫婦を見てきましたからね。あなたたちは見る方が微笑んでしまうような、とても良いご夫婦です。もし私があなたたちの親だったら誇らしく思うでしょう』
この時、2人の親はともに他界していました。本当は祝福の言葉を言いたかったのかもしれない・・・。
それを異国の心優しき方が代わりに祝福してくれました。
そしてラストの外山君の言葉も、ぐっと心に染み入りました。
『この上ないふびんさを自明のこととして持つ人類とその輝かしい幸せを乗せて、いつでもどこでも地球が回ってるんだな』
今日も冷たい氷に閉ざされる夜がやってきたヘルシンキのにぎやかな街角で私(ゆき世さん)は確信するのでした。
そしてヘルシンキの冷たい空気は、日本の春と一つの空でつながっている。
心が温かくなる、ハッピーエンドの小説でした。