前回、高校に入って声楽を本格的に始めるまでのお話をしましたが、続きを書いていこうと思います。
高校一年の夏、声楽の先生のところに通い始めた頃は、とにかく悲惨な発声でした(苦笑)
それまで、割と自分は歌える方だと思っていたのですが、合唱時代に身についてしまった発声の悪いフォームを取り除くことに、とても苦労しました。
一概にそうとは言えないのですが、合唱は全体で一つの音楽ができますよね、なので、周りの声を聞いてバランスを考えながら、自分の声を出していくので、私の場合、少し無理をして声を出していたみたいなんです。
その結果、かなり喉で歌うくせがついていましたので、それを取るのに半年以上かかったと思います。
しかも、癖が取れた段階では、声量が全然なくなってしまい、本当にゼロからのスタートなんだなぁと思いました。
という感じで、最初の半年は曲は全く勉強せず、ひたすら発声・体の使い方を徹底的に教えていただきました。
時には、床に寝そべって、腹式呼吸の練習をしたり、体を柔軟に使うための体操も行いました。
フランスで、先生が習った方法だそうです。
徐々に、イタリアの古典歌曲集をポツポツとやり始め、高校2年生の夏に、初めて音大の講習会に参加しました。
確か、東京音大だったと思うんですが、他の受験生の方々のものすごい声量に打ちのめされて帰ったのを覚えています。
今思えば、別にショックを受けなくても・・・というレベルだったと思うんですが、声量のなさを悩んでいた時期だっからでしょうか。
そんな私に先生は
「大きな声を出そうと思ってはダメ。きちんとした体の使い方を身につければ、小さな声だって大きな舞台の後ろまで通るんだから。」
と、絶対に「そば鳴り」の声にならないように注意しながら指導してくださいました。
※そば鳴りの声とは、近くて聞いているととても声量があるように感じるのに、いざ大きな舞台なので聞いてみると声が届いてこない声のことを言います。喉だけで発声している人によく見られます。
高校3年生から、その先生の芸大時代の先生、今は名誉教授をされている方を紹介して頂き、月に1~2回のペースでレッスンをして頂きました。
やはり、受験になりますと、選曲や音楽的なことなど、受験生の指導に慣れている方に見て頂ければ安心だと思います。
その先生のご提案で、芸大を受験するために用意していた曲が大幅に変わり、とても難易度が高い曲を歌うことになりました。
芸大声楽科の一次審査は課題曲で、日本の歌曲を4曲、外国歌曲を4曲提出し、当日あたった日本歌曲2曲と外国歌曲2曲の中から一曲ずつ、計2曲歌う、というものでした。
私が実際の一次試験に提出した曲目は
・北秋の (信時潔)
・母
・行々子 (信時潔)
・かやの木山 (山田耕筰)
・Nuits d'etoiles (Debussy)
・Mai (Faure)
・Ici-bas (Faure)
・Marinconia,ninfa,gentile (Bellini)
という感じで、受験生の中では珍しくフランス歌曲をとりいれました。
というのも、やはり私の声はかなり未発達でしたし、声量もありませんでしたから、イタリアものを歌ってしまうと、しっかりと声を出さないといけない分、不利になってしまうので、イタリアものはなるべく避ける方向で、先生方が考えてくださったんです。
フランス歌曲は声量というよりも、センスがとても大切になってきますから、他の受験生と真っ向から対決しないという意味で、とても賢明な選択だったと思いますね。先生方、さすがです!
今日はこのへんで、次回受験当日の話など書こうと思います。
ではまた