第179話 『リングは回る』  (Bパート)

 

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どこをどう逃げたのか、  
裏道で、一息つき、
呼吸を整える、安田三郎でしたが、
裏道に面した、店の勝手口を開けて、
出て来た男がまた、安田の前に立ちます。
 
今度は片眼鏡に帽子をした、中年の男でした。 
 
片眼鏡の男
「見ていたよ。
 怖い思いをしたようだね。
 
 だが、それは君自身のせいだ。
 君はその気はなくとも、災厄の種を拾ってしまった。
 
 君は、多くの人が欲しがるところから、
 あのリングを、価値がある物と思っているようだが、
 だから、ひと儲け出来るとでも考えたなら、
 それは、とんでもない話だ。」
 
安田三郎
「おじさんは?」
 
片眼鏡の男
「私が誰かは、どうでも良い。
 君が誰かも、どうでも良いんだ。
 
 ただ、そのリングは渡して欲しい。
 悪い事は言わない。
 
 もともと私の手に、来るはずの物だったんだ。
 色々あって、手違いでね。
 
 君が持っていても意味は無いし、危ないんだ。」
 
静かではありましたが、これまでとはまた違う、
何か威圧的な、雰囲気を感じて、
素直に「うん。」とは言えませんでした。
 
片眼鏡の男
「君のためだ。
 私に渡したまえ。
 
 さもないと… 死ぬよ?」
 
安田三郎
「け、結構です。」
 
それだけ言うと、慌てて反対側に逃げ出します。
 
安田三郎
(裏道にいたら、かえって危険だ。
 
 表通り、人目が多い方が良い!)
 

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【瀬加下市(せかしたし) 商店街】
 
オープンカフェで、人の流れを見ながら、
コーヒーを飲んでいる、安田。
 
安田三郎
(どうしたものか?
 
 どうやら、リングを持ってる限り、
 どこにいても、何をしてても、
 結局は欲しがる奴が、嗅ぎつけて来るらしい。
 
 いっそ、捨てちまうか?
 
 いや、だったらやっぱり、
 最初から、捨てれば良いって事に、なっちまう。
 
 でもそれじゃ、今日半日の苦労が水の泡だし。)
 
考えていると、いつの間にか隣にいた人物に、
声をかけられます。
 
それは最初に出会った、初老の、
古風な帽子と、トレンチコートの男でした。
 
初老の男性
「やはり、他の奴らも、
 嗅ぎつけてきたようだね。
 
 私は君から、力づくで奪う事は、
 許されてはいない。
 
 だから君から、渡して欲しいんだが。」
 
安田は、他の奴らに比べたら、
まだいくらかは、紳士的な感じの、
この男からは、切迫感は感じませんでした。
 
が、
得体が知れない事には、変わりありません。
 
迷った末に、思い切って聞いてみました。
 
安田三郎
「あのう…
 おじさんは、誰なんです?
 
 このリングは、何なんです?」
 
初老の男性
「私は…
 
 テンベルム・リランと言う定理者だが、
 固有名詞も立場も、君には理解出来ないだろう。
 
 リングは、私のすべてであり、
 責任があるので、渡して欲しいんだ。」
 
安田三郎
「前にも、私の物では無いって言ってましたよね?
 
 それじゃ、このリングは、
 本当は、誰の物なんです?」
 
初老の男性
「誰の物でも無い。
 
 エカープスは、
 誰かが物にする事など、出来ない。」 
 
やはり、言ってる事が理解出来ない、安田。
 
安田三郎
「誰の物でも無く、持ち主がいないんなら、
 拾った、ぼくの物にしたって、
 問題ないはずじゃ、ないですか?
 
 と言うか、拾い主のぼくの物でしょ?」
 
そう言って席を立ちます。
 
初老の男性
「所有する事など、出来ない。
 
 だから、返して欲しいんだ。」
 
安田三郎
「矛盾してるよ!」
 
声を聞きつけて、再び接近する者があります。
ユリコとクロスでした。
 

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【瀬加下市(せかしたし) 中央公園】
 
再び公園に戻り、ベンチで話す3人。
 
クロス
「指輪を拾ってから、色んな奴らに、
 付け回された…かあ。」
 
安田三郎
「何で、みんなして欲しがるんだか、わかりません。
 これってそんなに、貴重な物なんですか?」
 
クロス
「現物すら、見ていないんだから、
 リングの正体が、何なのかは、
 我々もまだ、わからないんだけど。」
 
ユリコ
「見せてもらえる?」
 
一度ユリコに、リングを渡す三郎。
 
ユリコ
「やっぱり、見ただけじゃわからないけど。
 
 どうも、地球の技術の産物とは、
 思いにくいような、ところもあるわね。
 
 ねえ、これ預からせて、もらえないかしら?
 
 これ以上、あなたが持っていても危険なだけだし、
 私達で、分析してみたいわ。」
 
が、少し迷いながらも、
安田はやはり、手を出します。
 
指輪を返すユリコ。
 
安田三郎
「いや…。
 ここまで持ってたんだ。やっぱりぼくが持ちます。
 
 言っちゃなんだけど、持ち主がいないんなら、
 見つけたぼくの物にしても、良いはずだし。
 
 それを、不当に奪おうと言うなら、
 そいつらから、守ってくれるのが、
 あなた達の、仕事でしょう?」
 
顔を見合わせて苦笑する、ユリコとクロス。
 
クロス
「確かに、君の言い分も一理あるけど。
 
 それなら、守るためには、
 こちらの言う事も、聞いてもらえないと。」
 
その時、
前の黒服の男5人と、サングラスの女が今度は3人、
前後から現れて、近寄って来ます。
 
安田三郎
「お前達は?」
 
サングラスの女性A
「やむなく一時的に休戦、共闘にしたの。
 
 まずあなたから、リングを手に入れるのが、
 我々にとって、最優先だからね。」
 
クロス
「いけない、逃げるんだ。」
 
前後に、ユリコとクロスが立ち、
90度横から、安田を逃がそうとしますが、
それぞれ数人が別れ、安田を追います。
 

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【瀬加下市(せかしたし) 市道】
 
逃げる安田ですが、左右から追いかける、
黒服と、サングラスの女に追いつかれます。
 
安田を捕まえる、サングラスの女。
が、
ポケットを探り、指輪を取り上げるも、
見つめるうちに、怪訝そうな顔になります。
 
サングラスの女性A
「違うわ!?」
 
追いついた黒服が、それを問いただします。
 
若い黒服の男A
「そんなはずは無い。
 
 まさか、お前…!?」
 
サングラスの女性A
「違う! 私じゃない。
 
 こいつの持っていたのが、すでに…」 
 
その時、片眼鏡の男が現れます。
 
片眼鏡の男
「リングを渡してもらおう。」
 
星人の姿になる、片眼鏡の男。


 
若い黒服の男A
「クソッ この立て込んでいる時に。
 
 ここは、俺が何とかする。
 お前は本物を探せ!」
 
サングラスの女性A
「わかったわ。」 
 
黒服の男もまた、星人に変身します。


 
光線を撃ち合い始める、2大星人。
 
その様子を見て、サングラスの女は逃れ、
安田も慌てて、逃げだします。
 

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グノ星人
「ええい、うっとおしい!
 踏みつぶしてやる。」
 
叫ぶと巨大化する、グノ星人。
 
一方の、キュラカンテ星人も叫ぶと、
地中から怪獣が、現れます。
 
郊外で戦闘になる、グノ星人と怪獣。

 


 

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ユリコとクロスの前に現れる、サングラスの女。
 
サングラスの女性A
「リングをどこへやった?
 
 渡せ!」
 
ユリコ
「さあ、どこへ行ったんでしょうね?」
 
サングラスの女性は、分裂しながら変身し、
バーラル星人の、姿になります。


 
2人を取り囲み、襲うバーラル星人に、
反撃する、ユリコとクロス。
やがてクロスが、血路を開きます。
 
クロス
「ユリコ隊員、ゴウリ隊員達と合流を!」
 
ユリコ
「わかったわ。」
 
ユリコを逃がすと、クロスはウルトラホープをフラッシュ。
閃光と共に、等身大のゾフィが現れます。


 
 

さらに分裂して、7~8人になるバーラル星人ですが、
次々にゾフィに倒されると、最後の1人になります。
 
バーラル星人
「ボルテール!」
 
叫んで倒れると、空中に元素が集まり、
メタン怪獣ポルテールが現れます。
 
それを見ると、巨大化するゾフィ。


 
すぐにゾフィを認識し、光線波動を放つボルテールに、
ゾフィもまた、飛び上がって避けながら飛び掛かります。
 
飛び掛かられて、転がる両者。
一呼吸早く起き上がると、怪獣を蹴り倒すゾフィ。
 

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【UST作戦室】
 
怪獣との戦闘の様子を、スクリーンで見守っている、
ヒデコ隊員と、カジ参謀。
 
そこにマキノハラ博士が、入って来ます。
 
マキノハラ
「リングは、どうなったかね?」
 
カジ
「一応、こちらで確保出来たようですが、
 まだそれを巡っての、争いが続いていて…。
 
 なにか、わかったんですか?」
 
マキノハラ
「余りに、荒唐無稽な仮説だが…
 
 まさかと思って、フィルに話したら、
 同じ事を、言われた。
 
 もしそれが正しければ、あのリングは…」
 

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その頃、グノ星人と、
シリコン怪獣ラヒュートの、戦いを知ったUSTは、
ユルガ隊長が、≪アーク1号≫で駆け付け、
ゴウリとナワテを拾うと、≪アーク1号≫を3機に分離、
怪獣と星人に、攻撃をかけていました。
 
皮膚を発光させ、ビームやミサイルを弾く、
怪獣ラヒュートに、苦戦していると、
グノ星人が、光線を放ち、
ナワテの≪アーク・ウイング≫が被弾、不時着します。

 
そこへやって来る、ボルテールを片付けたゾフィ。

 


  


 

怪獣と星人を、同時に相手にしながらも、
≪アーク・アロー≫、≪アーク・ソード≫の援護で、
ラヒュートを、サテライズ・ビームで、
グノ星人は、サブ・グレイダーで切断後、
ローリング・ビームで破壊、爆発させます。
 

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【瀬加下市(せかしたし) 中央公園】
 
ユリコと落ち合う、安田三郎。
 
その三郎の手を握り、ある物を渡すユリコ。
それは例の、リングでした。
 
ユリコ
「ごめんなさいね、黙ってすりかえて。
 
 わけを話したら、了解してもらえても、
 どうしてもあなたの挙動が、不自然になると思って、
 私の一存で、やったのよ。
 
 でも、もう、宇宙人は一掃出来たと思うから、
 これは返します。」
 
複雑な表情で、受け取る三郎は、
後に向かって、声を上げました。
 
安田三郎
「おじさん。
 
 これ… もう良いよ。」
 
現れたのは、古風な帽子とトレンチコートの、
初老の男性でした。
 
初老の男性
「良いのかね?」
 
安田三郎
「何か… 気が抜けたと言うか。
 
 一度、もういいやと思ったら、
 むしろ何で、今までこだわってたのかと。
 
 冷静に考えれば、考えるほど、
 こんな物騒で、得体の知れない物は、
 彼女のプレゼントには、出来ないよ。」
 
初老の男性
「ありがとう。
 
 感謝するよ。」
 
そこにクロスが来て、合流します。
 
クロス
「あのう…
 
 それは、何だったんですか?」
 
ユリコ
「価値のある物、だったんですよね?
 
 あれだけの星人達が、欲しがってたんだから。」
 
初老の男性
「価値があるかどうかは、考え方次第だ。
 
 でも彼らは、勘違いをしている。
 これは手にする事は、出来ない。
 
 超大過ぎる物は、利用出来ないんだ。」
 
クロス
「超エネルギーの、塊みたいな物?
 
 でも、
 ナワテ隊員の話では、計測器には反応なかったって。
 
 それにあなたは、どなたです?」
 
初老の男性
「当たり前だ。
 反応あるわけない。
 量など、計測出来ないんだから。
 
 これはね、宇宙なんだ。」
 
安田三郎
「宇宙!?」
 
初老の男性
「そうだ。
 
 宇宙は普通、一定空間の規模を、
 過去から未来へ、悠久の時を流れる。
 
 だがたまに、アクシデントが起き、
 一度、閉じてしまう事がある。
 
 宇宙の終焉と、言うやつだが、
 実際には、完全に終わって消滅ではなく、
 極小状態から、再崩壊して宇宙は生まれる。
 
 悠久のリング自体は、不変だか、
 その時は一定期間、閉じて冬眠してしまうんだ。
 
 エカープスと言う状態で、
 卵やさなぎのような物だな。
 
 そしてその時が過ぎ、条件が整うと、
 再び宇宙は、生まれる。
 
 だが、条件がそろわない時もある。
 
 その中の、一つが、
 他の宇宙の中に、入ってしまった時だ。 
 
 すでに宇宙がある状態では、重積してしまうので、
 この場合は、エカープスはリングになって眠る。
 エカープス状態のまま、変化しなくなり、
 宇宙は、生まれられない。
 
 私はそれを確保して放ち、再び宇宙が生まれるように、
 見守る役目を持った、定理者だ。」
 
クロス
「宇宙全て… 丸々ですか?」
 
初老の男性
「そうだが、いまこのリングに、
 宇宙が入っている、わけでは無い。
 
 崩壊・極小化して、卵になり、
 形成化された、宇宙の元だよ。
 
 そして、リングは回る。
 今も回っているし、これまでも、これからも。
 
 世界の場と時は、リングなのだから。
 
 それじゃ。」
 
初老の男は、トレンチコートを開けます。
 
そこには、何もなく、
漆黒の空間の中に、大小、いくつもの、
光るリングが浮かんで、回っていました。
 
三郎が渡したリングも、吸い込まれるように、
漆黒の空間の中に、入って行き、
最後は、コートだけが地面に落ちました。
  
安田三郎
「き、き、消えた!?」
 
ユリコ
「帰った… のかしら?」
 
クロス
「おそらくね。
 
 この宇宙の外へ。
 
 そして、リングを開放し、
 別の宇宙を、始めるのだろう。」
 

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【西小原池 須川大橋 展望エリア】
 
椅子に腰かけて、くつろいでいる、
マキノハラ博士、ユルガ隊長、ユリコ、ナワテ、
クロス。
 
マキノハラ博士
「やはり宇宙か。」
 
ユルガ隊長
「宇宙全体に、匹敵するエネルギー…
 
 と、考えれば、
 
 そんな強大な、エネルギー、
 宇宙人は、どんな事をしてでも、
 手に入れたかったんだろうな。」
 
クロス
「強大… 過ぎますよ。
 
 強大過ぎて、手に負えるわけない。」
 
マキノハラ博士
「その通りだ。
 
 コップ一杯の、水が欲しい時、
 海全部を、コップに入れたらどうなるのか?」
 
ナワテ
「と、理屈ではわかっても、
 ついつい、欲しくなっちゃう物ですかねえ。
 
 人間と言うか、生き物と言うやつは。」
 
ユリコ
「あら、生き物は、そんなに愚かじゃないわ。
 
 ライオンだって、お腹いっぱいなら、
 他の動物を、襲わないでしょう?」
 
苦笑するクロス。
 
クロス
「結局、欲のある知性体の方が、
 ある意味、愚かなのかも知れませんね。」
 
ヒデコ隊員とゴウリが、
コーヒーと紅茶、クッキー類を持って現れます。
 
ゴウリ
「欲の皮、つっぱらかって、
 食べ過ぎるなよ。」
 
ナワテ
「ぼくはわかってますよ。
 失敬な!」
 
ユリコ
「そう言えば、安田さん、
 結局、彼女へは、自分のお金で、
 何か小物買って、上げる事にしたそうです。」
 
ヒデコ
「まあ、それが一番ね。
 気に入られるかは、わかんないけど。」
 
池の野鳥を見ながら、何となく言葉を思い出します。
 
回る。
 
リングは回る。
 
今も回っている。
これからも回る。
 
【第179話・終わり】

 
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