第068話 『霧笛を追う者』 (Bパート)
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こうして、現地の気象予測を聞き、
霧の発生しやすい2日後を、作戦日と決定します。
万が一、霧の出方が少ないようなら、
人工的に、霧を流す算段です。
海上には、海軍第1艦隊を布陣させて、
USTと共に、怪獣Aの監視と警戒。
もし怪獣Aが、単独で行動を終了し
何も被害を出さずに、帰るなら、
UST・海軍は、手は出さずに、
見守るだけに留めます。
来るかも知れない、空からの怪獣Bに対しては、
海軍第5機動部隊が、上空を哨戒して警戒します。
もし出現して、怪獣Aと争いになっても、
それだけならば、自然の捕食行為と考えて、
基本的には手を出さず、見守ります。
ただ、両者の戦闘が、海岸から内陸に及び、
人間の生活圏内に、侵入するようならば、
まず排除の範囲での、迎撃を行う予定とします。
USTは、ヒデコ隊員の乗る、
海上の≪アーク3号≫を、連絡拠点とし、
ゴウリとナワテの≪アーク2号≫を主戦力、
また、遊撃部隊として、ユリコ隊員と、
クロスの≪パレステリアス≫が、海中待機します。
ナワテ
「あと15分したら、人口霧発生装置を作動させ、
同時に霧笛を、鳴らし始めて下さい。」
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
『了解。』
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【夕方 観音井湾(かんのんいわん)】
霧が出始めた海上を、不安そうに見つめ続けている、
高納清。
高納清(たかなきよし)
「大丈夫。
地球防衛機構は、きっと守ってくれる。」
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【夕方 観音井湾(かんのんいわん)沖】
クロス
「こちら≪パレステリアス2号≫クロス、
怪獣A、出現しました。
海中です。
海中からゆっくり、海上に移動し、
観音井湾を、目指す模様です。」
カジ
『海中?
海中に突然現れたのか?』
クロス
「そうです。
ソナー圏外から、入って来たのではありません。
海中にいつの間にか、現れました。」
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【UST作戦室】
シズカ
「やはり、異次元怪獣の類かも知れません。
どこか別に、居留地を持ち、
特定の時期だけ、こちらに移動する。」
カジ
「霧の発生を、察知してか?
不思議な怪獣だな…。」
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怪獣はそのまま、観音井湾に接近します。
観音井湾の、崖のそばに来ると、
水中に沈んで、静かになりました。
遠巻きに警戒する、第1艦隊、第5機動部隊、
その少し内側で待機する、≪アーク2号≫。
ユリコ
「こちら≪パレステリアス1号≫ユリコ、
怪獣はどうやら、卵を産んだようです。
現在海底で、静止しています。」
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【UST作戦室】
ユルガ
「卵がかえるのを待って、移動かな?」
シズカ
「おそらくは…」
カジ
「しかし…
それではかなり、長くならんか?」
シズカ
「いえ、卵胎生と言うのもありますし、
過去の記録では、何日も逗留したと言うのは、
無いようですから。
比較的早いようには、思いますが…」
ヒデコ
『上空を哨戒していた、≪やはた≫艦載機から連絡。
怪獣Bが、空中に出現しました。』
カジ
「来ちまったか…。」
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緊張が走る、USTと海軍ですが、
まずは見守ります。
空中に現れた怪獣は、目標の位置が大体わかるらしく、
断崖の崖の方に、向かって行きます。
海中にいた怪獣も、わかるのか、
同じように向かって行き、戦闘が始まります。
空から来た怪獣は、電撃のような光線を、
海にいた怪獣は、霧と糸のような物を出して、
一見、互角の戦いでした。
空から来た怪獣の方が、大きくて武器も強いのですが、
海の怪獣は、巧みに海中に潜ったり出たりで、
海を利用して、立ち回っていました。
が、次第に戦闘は、海岸に近づき、
電撃の流れ弾が、そこかしこに降り注ぎます。
ユルガ
『陸に近づけるのは、まずい。
何とか沖へ、押し返してもらえますか?』
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
『了解、やってみます。』
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【海上 第1艦隊 旗艦≪みちのく≫ブリッジ】
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
「ニオギ、出来るか?
こっちの駆逐隊も、ギリギリまで回す。」
ニオギ(第5機動部隊提督・IDMN)
『やってみます。』
海岸側には、大型艦は回り込めないので、
空母≪やはた≫と≪はにやす≫の艦載機で、
海岸側から、攻撃をかける事になります。
が、これに怒ったのか、空の怪獣は、
艦載機、さらには艦隊に攻撃をかけ始めました。
戦闘機隊隊長
『こいつ、好戦的です!』
海岸側に回り込んだ≪アーク2号≫も、
攻撃に参加しますが、それでますます怒り、
電撃を放ちます。
ゴウリ
「やっつけちまいましょうよ。
こんなやつに、手加減してたら、
こっちが、持たないですよ。」
ナワテ
「ぼくも今回は、ゴウリ隊員と同意見です。」
ユルガ
『確かに、この状態で上陸されたら、
取り返しが、つかんな…
上がられたら、すぐ村だ。』
が、航空機、艦艇に徐々に被害が出始め、
≪アーク2号≫も、電撃を避けて、
少し距離を取ります。
海岸ギリギリまで来ていた、クロスは、
その様子を見て、ウルトラホープを出します。
閃光と共に、海中からゾフィが現れ、
そのまま空の怪獣を、殴り倒します。
海面に倒れる怪獣。
その時、海中のユリコ隊員から、
連絡が入ります。
ユリコ
『海底下の地中にあった、生命反応ですが、
今、急速に、上昇して来ます。』
ユルガ
「第3の怪獣がいたのか!?」
海底下から、海面に出た怪獣は、
そのままゆっくり、卵のある崖を目指します。
一方、戦闘区域と卵の中間で、
身構えていた海の怪獣は、第3の怪獣出現で、
すぐに卵の方へ、戻っていきます。
卵の手前で、2体の怪獣は接触し、
再び戦闘になりますが、
連戦の海の怪獣は、傷を負っている事もあり、
第3の怪獣に、押され始めます。
その様子を見た、ゾフィは、
そちらに、向かおうとしますが、
背中を向けると、空の怪獣が電撃を出します。
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【観音井湾(かんのんいわん) 崖の上】
じっと海上を見つめていた、高納清ですが、
(大丈夫)と思おうとしても、気が気ではありません。
高納清(たかなきよし)
「おじさん、どうして何もしてくれないんだよ。
大丈夫じゃないよ!
やられちゃうよ。」
思わず声を上げると、海面が急に泡立ち、
第3の怪獣のすぐ後ろに、大きな船が浮かび上がります。
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【≪小夜嵐≫ブリッジ】
マトバ
「撃て!」
主砲弾が、次々に命中すると、
目の前の敵に夢中だった、第3の怪獣は、
無防備方向からの不意打ちに、思わず倒れます。
うなりながら、振り返る間にも、
次々に砲弾、ミサイルが命中し、
振り返った時には、今度は自分が後ろから、
海の怪獣に突き飛ばされて、波間に倒れます。
すかさず撃ち方を止め、ゆっくり後退する≪小夜嵐≫。
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【海上 第1艦隊 旗艦≪みちのく≫ブリッジ】
ニオギ(第5機動部隊提督・IDMN)
『≪小夜嵐≫です。』
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
「えっ 艦隊旗艦が?
司令が来てるのか!?」
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【観音井湾(かんのんいわん) 海上】
怒った第3の怪獣は、火炎弾のような物をはきながら、
こちらも海軍艦艇に、メチャクチャに攻撃を始めます。
その様子を見て、海の怪獣は沈んで行き、
第1艦隊では、空の怪獣、第3の怪獣に、
総攻撃命令が出ます。
ゾフィは、空の怪獣を投げ飛ばし、
サンダー・バスター、ボウアンドアロー・スラッシュで、
ダメージを与えると、第3の怪獣に向かいます。
その後、空の怪獣はやっと起き上がって、
空中へ逃れようと、したところへ、
≪アーク3号≫の援護射撃で、動きが止まり、
≪アーク2号≫、第1艦隊の砲撃を受けて爆発。
第3の怪獣は、再び卵に向かおうとしたところを、
≪パレステリアス1号≫の、雷撃を受け、
今度はそちらへ、火炎弾を撃ち始めたところに、
ゾフィのラインビームで、引っ張られ、
バランスを崩して、海上に転倒。
火炎弾を弾きながら、接近したゾフィが、
持ち上げると、沖に投げ飛ばします。
海面から上半身を、出したところで、
海面をM87光線が、光の魚雷のように疾走。
水竜巻を巻き上げながら、命中すると、
怪獣は爆発して、吹き飛びました。
その後、海上にまた霧が立ち込めると、
海面に海の怪獣、フェストンが顔を出し、
一回り小さい、子供らしき姿と一緒に沖に出、
夜霧の中に、消えて行きました。
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【観音井湾(かんのんいわん) 海上】
夜の海上に集合する、≪アーク2号≫≪3号≫、
≪パレステリアス1号≫≪2号≫
ユルガ
『本部ユルガだ。みんな無事か?』
ゴウリ
「えーと。
大丈夫です。みんないます。」
ヒデコ
『≪アーク2号≫、大丈夫ですか?』
ナワテ
「大丈夫。
損傷はしてるけど、飛行は出来ます。」
ユリコ
『じゃあ、各機帰投して本部で再会ね。』
ナワテ
「今から帰ったら、≪パレス≫だと夜中ですねえ。」
クロス
『地元民間に被害無しで、撃退して終われたんです。
一つ間違えてこじれたり、取り逃してたら、
いつまで、かかってた事か。
それを思えば、あとは帰るだけですから、
気楽ですよ。』
ゴウリ
「お、海軍も撤収みたいだ。」
海軍の艦艇が、発光信号で、
「お疲れ様」と、伝えて来ます。
ナワテ
「同文、返しますね。
じゃあ、我々も帰りましょう。」
海面から浮上する≪アーク2号≫≪3号≫
海面を進み始める≪パレステリアス1号≫≪2号≫が、
それぞれ海軍艦艇と、すれ違います。
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【≪小夜嵐≫ ブリッジ】
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
『来てるんなら、言って下さいよ。』
マトバ
「悪い悪い。
いや、ちょっと様子だけ見てな、
手に余らん、ようなら、
黙って帰ろうかと、思っててさ。」
ニオギ(第5機動部隊提督・IDMN)
『それだけで旗艦、出したんですか?』
マトバ
「だってお前、純真な少年の期待は、
裏切るわけには、いかんだろ。
海の男としてはさ。
じいさんも、海の男だって言うしよ。」
ミヤサリ(第1艦隊提督・IDMN)
『司令、都合の良い時だけ、海の男を出しません?』
マトバ
「それが海の男だ。」
ニオギ(第5機動部隊提督・IDMN)
『他の海の男に、怒られますよ。』
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【観音井湾(かんのんいわん) 崖の上】
怪獣フェストンが去った後も、海を見続けていた、
高納清。
海軍艦艇が、引き揚げ始めたのを見て、
手を振り、「ありがとう」と叫びます。
見えるはずも、聞こえるはずも無いのですが、
再び、大きな船が、海中から海面に出ると、
発光信号が、放たれます。
ツーツーツー、ツートンツー。と光ると、
速度を上げて、沖へと去って行きます。
高納清(たかなきよし)
「おじさん、ありがとう!」
と叫ぶと、
もう一度、大きく手を振りました。
【第068話・終わり】