第125話 『青い雪』

 
古代怪獣ワンザス

 

…もし、ウルトラセブンの最終回のあと、
TVでゾフィが始まっていたら?の妄想ストーリーの第125話。

 

ある村では、百年に一度姿を現す怪獣が、
無病息災をもたらす存在として、慕われ信仰されていました。
しかしその一方で百年一度、一人犠牲者が出ていました。


  

【UST=防衛チーム】

ユルガ(隊長)
ゴウリ
ナワテ
ユリコ
ヒデコ
クロス

【IDM=地球防衛機構】
     
ユウキ(Bチーム=情報技術副班長)
リオ(Bチーム)
ユウ(Bチーム)
 
【その他・ゲスト】
 
【狭場郁村(さばいくむら)村民】
 
富本美恵
富本正司(父)
富本幸子(母)
 
山衛実 (村長)
若永敏 (医師)
葉田廉 (宮司)

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
  

 
【狭場郁村(さばいくむら)】
 
町外れの広間に、着陸している≪アーク3号≫。
手前の道で、空を見ている二人。
 
ゴウリ
「また、降って来たなあ…。」
 
空を見上げると、雪が降り出してきます。
 
ユリコ
「盆地だし谷はあるし、特徴的な地形だから、
 何か降りやすいのとか、あるのかもね。」
 
と、向こうから、もう二人駆けて来ます。
息を弾ませているリオと、必死について走るユウでした。
 
ユリコ
「ご苦労様ー!
 何か、わかったー?」
 
苦笑しながら、指で小さくバッテンを作るリオ。
 
リオ
「ダメですねー。
 まさか村全体で、口裏合わせてるわけじゃ、
 無いとは、思うんですが…。」
 
ゴウリ
「こう言う、雲をつかむような事件は、苦手だよ。
 怪獣ならすぐに、やっつけてやるんだが…」
 
一度、両手を広げて息をはき、
≪アーク3号≫に、戻っていくゴウリ。
後に続くユリコ、リオ、ユウ。
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【≪アーク3号≫内 仮設作戦室】
 
ヒデコ
「ご苦労様でした。
 どうぞ。」
 
と、ホットココアと、コーヒーを配るヒデコ隊員。
USTと、B班のユウキ、リオ、

ユウが揃ったところで、話し始めるユルガ隊長。
 
ユルガ
「収穫無しか?」
 
リオ
「申し訳ないであります!」
 
ユルガ
「いや、君らのせいでは無いよ。
 一度、整理しよう。
 
 話は特務軍、情報8課からだ。
 特務8課は国内の、広域情報収集をやってる。

 
 それがこの、狭場郁村(さばいくむら)で、
 妙な話を、かぎつけた。
 
 狭場郁村では、100年に一度、怪獣が現れる。
 その怪獣が青い雪を降らせ、村を祝福する。
 
 すると村は、また100年間、
 大きな事故や、病気もなく、
 平和に暮らせると、信じられている。
 
 村人はどうも、その怪獣の事を、
 村の守り神や、守護神のように思っているらしい。
 だから、怪獣に関しての聞き込みには、
 何となく、口が重い。
 
 実際これだけなら、本当にいたとしても、
 土地と共存しての、無害な怪獣と言う事になるが、
 問題は、100年に一度の青い雪の時、
 この怪獣が村人に、いけにえを欲求すると言う事。」
 
ゴウリ
「どんなに祝福してくれて、他は無害でも、
 いけにえが必要じゃ、話になりませんよ!」
 
ユルガ
「私も、そう思う。
 
 普通なら、そう思うものだろうが、
 その辺が何とも、釈然としない。
 
 どうも村人は、特に疑問もなく、
 いけにえを受け入れている、フシがある。」
 
リオ
「まさか、江戸時代じゃあるまいし。
 と、思っちゃいますが、
 閉鎖的な村だと、そうなっちゃうんですかね?」
 
ユルガ
「確かに、そう言う面はあると思う。
 100年が本当なら、もう何度もあったはずだ。
 村全体の慣習に、なっているとしたら…。
 
 クロス、ユウキ君、怪獣の方はどうだ?」
 
クロス
「今のところは、これと言っては…」
 
ユウキ
「一通りの、通常探査では引っかかりません。
 
 仮にいるとすれば、冬眠か仮死状態、
 もしくは、地下の深部と考えられます。」
 
ユルガ
「じゃ、明日からは二人にも、
 聞き込みに回ってもらうか。」
 
ユウキ
「シズカ班長から、伝言されてるんですが…
 お友達作戦が、オススメだそうです。」
 
ゴウリ
「お友達作戦?」
 
ユウキ
「はい。
 なるべく村人と仲良くし、友達になる事。
 
 事件解決のために、機械的に聞き込むのではなく、
 まず仲良くなる。協力する。そんな気持ちでと。
 
 怪獣に関しても、
 村人が怪獣に、好意を持っているなら、
 くれぐれも“やっつけに来た”と、
 思われないように、したほうが良いとの事で。
 
 むしろ、村人と共に怪獣を尊重する。
 攻撃はしない。保護や守りに来たんだ。
 くらいのニュアンスで、接したほうが良いと。」
 
ゴウリ
「まどろっこしい作戦だなあ…」
 
ユウキ
「と、言っても、
 怪獣を受け入れている、閉鎖的な村なら、
 他にこれと言って、解決に直結する、
 劇薬的な方法は、多分無いそうです。」
 
ユルガ
「いや、確かにこれと言って、他に名案も無いし、
 同じするなら、それで良いよ。
 
 いけにえが本当なら、見逃せないが、
 そこまで含めて、真相はまだわからないんだ。
 
 そして、真相がわからなければ、
 怪獣退治も、強行策も無い。
 
 じゃあ、今後だが、
 まず、村民のデーター関連は、
 ユウキ、リオ、ユウくんの、
 B班女子3名中心で、当たってくれ。
 
 収集出来たら、続いて解析を。
 これは必要なら、ナワテも協力頼む。
 
 残りの者は、怪獣の方の聞き込みと、
 調査を続けよう。」
 
全員
「了解。」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
それからは、UST&B班のメンバーは、
なるべく親しく、村人に話しかけ、
怪獣や行事の、風習の調査に来ただけで、
何も問題なければ、立ち入るつもりは無いと、
ていねいに、話して回りました。
 
報告があったので、調査しないわけには行かない。
そして警察等が、乱暴、一方的な報告をしたら、
我々は怪獣を探し、退治せざるを得なくなってしまう。
 
だがUSTは、何でもかんでも怪獣呼ばわりして、
殺したりするような、恐ろしい事はしない。
人類の平和を乱す怪獣だけを、退治している。
 
だから、他組織に任せたり、わからないまま帰ると、
最悪の結果に、なりかね無いが、
調査して事情が把握出来た上で、無害となれば、
もう今後は、村に立ち入る事はない。
 
そんな風に、説得して回ると、
徐々に村人の口も、開いてきました。
 

 
【村道上】
 
ナワテ
「そうか。
 君のおじいさんが見た事ある?
 じゃあ怪獣自体は、本当にいるんだね。」
 
富本美恵(狭場郁村、村民)
「そうよ。
 そして、みんな元気に生きているだけでも、
 怪獣様は、人間を襲わない、
 害の無い存在だって、わかるでしょう?」
 
ナワテ
「確かにそうだね。
 話してくれてありがとう。
 
 また話を、聞かせてもらえる?」
 
富本美恵
「ええ。
 こんな事で良ければ、いつでも。」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【村内診療所】
 
話を聞きに来ている、リオとユウ。
 
若永敏(医師)
「この村は規格外なほど、健康優良なんですよ。
 
 私が知ってる限り、病気らしい病気はなく、
 過去には、医療機関やTV局が、
 レアケースとして、取材に来た事も、
 あるくらいなんです。
 
 私の赴任後では、確か…
 心不全で亡くなられた方が、一人いたけど、
 病死は、それくらいじゃないかなあ。」
 
リオ
「青い雪の後、インフルエンザが流行るって、
 別の方から聞いたんですけど。」
 
と言うと、笑いながら答える医師。
 
若永敏(医師)
「そりゃあ、寒い季節ですからね。
 青い雪を見上げてるうちに、なったんでしょう。
 
 その時だけは、注意するよう言うんですが、
 ま、神事みたいな、ものですからね。
 つい、ながめちまうんでしょうなあ。
 
 それにしてもみんな、すぐ治ってますから。」
 
ユウ
「こちらでも、分析したいので、
 村の人の健康に関する、記録の類を、
 一時、お借りしたいんですが…」
 
若永敏(医師)
「かまいませんとも。
 変な噂や疑いがあるなら、晴らして下さい。」
 
と、
次々に出てくる、山のような書類・写真・資料。
 
若永敏(医師)
「あの…
 入れる物は、お貸ししますが、
 女性お二人で、持てますか?」
 
ユウ
「え… えっと… それは…」 
 
リオ
「はいはい、私が持ちますよ!」
 
と、両手で抱えるリオ。
 
ユウ
「リ、リオちゃん、力持ち…。」
 
リオ
「の、わけないじゃん!
 
 こんな時に、アカイのおっさんがいれば…。
 つか、ゴウリさんが来てれば、良かったじゃん。」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 

 
【狭場郁神社(さばいくじんじゃ) 事務室】 
 
話を聞きに来ている、ユリコとクロス。
 
葉田廉(宮司)
「百年巫女… と、我々は呼んでますが、
 確かに青い雪の時、一人いなくなります。
 
 しかし、いけにえって…。
 別に我々が、いけにえを縛って、
 怪獣様に、持ってくわけじゃないですよ。」
 
クロス
「すると、その百年巫女とは、
 どう言う物で、どうなるんですか?」
 
葉田廉(宮司)
「百年巫女は、不思議な物でね、
 青い雪の少し前に、誰かが名乗り出るんです。
 必ず村の誰か一人が、自覚するんですな。
 
 そして村に、幸せと健康をもたらす怪獣様を、
 迎えに、行きます。
 
 そしてそれきり… 帰って来ないんですわ。」 
 
ユリコ
「どこへ行くんですか?」
 
葉田廉(宮司)
「村はずれの百年洞と言う、洞窟だそうです。
 そこへ行くと言ったり、入る姿を見たとか。
 
 洞窟の奥が、村はずれの谷に繋がっており、
 そこに怪獣様がいると言う、言い伝えで。」
 
クロス
「じゃあ、本人が、自分から進んで?」
 
葉田廉(宮司)
「そうです。
 だから実際は、いけにえではない。
 
 本人が、自分の使命を感じての、行動ですよ。
 それで村全体の、平和と健康になるなら、
 安い物じゃないですか?
 
 行方不明者や、自殺者などいくらでもいる。
 この村では、百年にたった一人で済むんです。」
 
クロス、ユリコ
「………………」 
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【狭場郁村(さばいくむら)村長宅】
 
話を聞きに来ている、ユルガ隊長とゴウリ。
 
山衛実(村長)
「そう言えば一人だけ、怪獣様の事を、
 信じない者が、おったな。」
 
ユルガ
「一人だけ?」
 
山衛実(村長) 
「ああ。
 もう、だいぶ前になるが、
 富本さんとこの、ばあ様だな。
 
 とにかく、人が白と言えば黒と言う、
 偏屈な、ばあ様でな。
 若い頃から、あちこち出歩いてたので、
 村のもんとは、考えが違ったんじゃろう。
 
 百年巫女など、バカバカしい迷信だと言って、
 村の者とは、合わなかった。
 
 長生きはしたが、最後は心不全でな。
 その時は、バチが当たったと言われとったよ。」
 
ユルガ
「怪獣を信じないで… 心不全になったのか?」

 

 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【≪アーク3号≫内 仮設作戦室】
 
B班のユウキ、リオ、ユウで医療データーを収集し、
集まってからは、分析をしています。
 
ヒデコ隊員が、それを手伝いながら、
食事等の、生活関連をこなし、
残りメンバーが、組ごとに動いて、
怪獣についての話を聞いては、持ち寄り、
その断片をまとめて、整理、
分析すると言う手順で、進めていました。
 
ユルガ
「ある程度、アウトラインは見えて来た。
 
 まず、怪獣は、
 百年に1度、村はずれの谷に現れる。
 青い雪は、その時に降る。」
 
ユリコ
「青い雪と怪獣は、関係ありそうですね。
 
 青い雪にひかれて、怪獣が現れる。
 もしくは怪獣が、青い雪を呼ぶか、
 あるいは、降らせているのかも?」
 
ユルガ
「うん。
 そしていけにえは、その前に出現する巫女の事で、
 村の誰かが、自覚して巫女になる。
 
 百年巫女は、怪獣を呼ぶために、
 青い雪の時、百年洞へ行く。
 そしてそれきり、姿を見た者はいない。」
 
クロス
「名目上は、いけにえではなく、
 本人が、勝手に出て行った。
 そしてあくまで、行方不明。
 
 確かにこれなら、犯罪にはならない。」
 
ゴウリ
「いや、でも、明らかにおかしいだろ?
 人一人いなくなる事は、変わらない。
 
 それをなんだって、村全体で、
 容認してるような態度、取るんだよ?」
 
ユルガ
「その辺の感覚なんだよなあ。
 
 だが、シズカ班長が言ってたように、
 それを我々が、おかしいと責めれば、
 村民は態度を、硬化させるだろう。
 
 納得行かないのや、道義論はおいといて、
 情報収集と割り切り、話を合わせよう。
 
 B班、健康状態の方はどうだ?」
 
ユウキ
「詳細分析はまだですが、ここまででは、
 村人の話に、嘘はありません。
 
 確かに異様に健康で、病死がほぼ無い。
 これはむしろ、異常の領域です。
 食べ物か水か環境か、何かの原因か。
 
 反面、青い雪の後には、
 インフルエンザらしき症状が、流行っています。
 
 しかしこれは、村医の話し通り、
 寒い中で、青い雪に見入っていたと考えれば、
 むしろ、当たり前とも取れますし、
 しばらくして、全員が回復しています。
 
 そして、この村で、
 病気らしい病気が、確認されるのは、
 この百年単位の、青い雪の時だけです。」
 
ナワテ
「青い雪自体に、病原菌なり毒物が含有され、
 インフルエンザ、もしくは似た症状を、
 引き起こしていた、可能性は?」
 
ユウ
「そう言われれば、雪の資料は無いので、
 無いとは、言えませんが…
 
 ただ、程無く全員、回復してますから。」
 
ユルガ
「こうなると、唯一、心不全で亡くなられた、
 変わり者のおばあさんが、気になるな。
 
 何か条件でも、違ったのか?」
 
ゴウリ
「富本のばあ様だっけ?
 若い頃、出歩いてたんだそうだから、
 村の慣習には、こだわり薄かったんだろうな。」
 
ナワテ
「えっ?
 富本?」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【翌日 富本宅 縁側】
 
並んで話ている、ナワテと美恵。
 
富本美恵(狭場郁村、村民)
「はい。
 それ、うちの、おばあちゃんです。
 
 若い頃は、ずいぶん活動的で、
 年とってからも、型破りな人でした。
 
 怪獣様の事を、よく思っておらず、
 それで村の人とは、衝突してましたが、
 私は、好きだったなあ。
 
 今でも形見のお守りは、持ってるんですよ。」
 
ナワテ
「心不全で、亡くなられたんだって?」
 
富本美恵
「そうです。
 
 当時は、怪獣様を信じないから、
 祟りだって、言われたけど。
 もう百近かったですね。」
 
ナワテ
「そりゃ、祟りどころか、大往生じゃないか!」
 
富本美恵
「年齢だけだと、そう思うんですが、
 この村では、老衰以外では亡くならないから。」
 
ナワテ
「それも、不思議な話だよなあ。
 あの… 美恵さんは、どう思う?」 
 
少し考える美恵。
 
富本美恵
「私も、怪獣様の事は信じています。
 
 こんなに、病気が無いのは、
 怪獣様の祝福以外、考えられないし、
 それを思えば、百年に一人くらい、
 仕方ないと、思いますよ。
 
 だって普通は、もっと亡くなるでしょう?」
 
ナワテ
「そうかあ。」
 
富本美恵
「ただ… 
 おばあちゃんのお守り、見ながら考えてると、
 おばあちゃんが、間違ってたとも、
 思いたくなくて。」
 
ナワテ
「そうだよね!うん!
 ぼくも良いしきたりなら、反対しないけど、
 いけにえと引きかえって、どうも抵抗あるよ。」 
 
富本美恵
「でも、
 怪獣様の事を、悪くは言わないで下さい。
 ここではみんな、そうしているし、
 どっちが正しいとか、私にはわからない。
 
 それにあくまで本人が、自分から旅立つんです。
 いけにえじゃありません。自分の意思です。」
 
ナワテ
「あ、そ、そうだよね。
 ごめん!」
 
笑ってこちらを見ている、おばあちゃんの遺影。
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 

 
【百年洞 洞窟内 深部】
 

捜索を続ける、ユルガ隊長とユリコ隊員。
 
ユリコ
「隊長、ビデオシーバーと、
 調査機器のいくつかが、不調です。
 
 磁石もだめだわ。」
  
ユルガ
「何となく、異様なところだな。
 
 人体や精神にも、影響あるかも知れん。
 無理はしないほうが、良いかも知れんが…
 
 ん? これは…」
 
かがみ込んで、地面に落ちている、
何かを拾う、ユルガ隊長。
 
それは衣服の、切れ端でした。
 
ユリコ
「隊長、これって…」
 
ユルガ
「多分、
 百年巫女とやらの、着ていた物だろう。
 こんな物が、あると言う事は…
 
 よし、
 生きてる機器で、この辺り一帯の記録を、
 取れるだけ取ろう。」
 
ユリコ
「はい。」
  

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【≪アーク3号≫内 仮設作戦室】
 
難しい顔で、口にはさんだボールペンを、
ぶんぶん上下させながら、聞いてるナワテ。
 
ユウキ
「と言うわけで、今のところは、
 確かに、インフルエンザウイルスは、
 当時の写真からも、確認出来ます。
 
 ただ…
 改まって、無線ポリグラフで調査すると、
 はっきりした嘘とは、違いますが、
 村人の大半が、何かナチュラルな、
 マインドコントロールにでも、
 かかっているかのような、感じです。」
 
そこへ入って来る、ヒデコ隊員。
 
ヒデコ
「ナワテ隊員、やっぱり、
 純粋な本人の、自由意志のみじゃないと思う。
 
 すごーく、わかりにくいんだけど、
 何かに、憑かれているとでも言うか、
 微妙に不自然なの。」
 
さらに、険しい顔になるナワテ。
 
ナワテ
「もしも… もしもその、青い雪に、
 村人を、コントロールするような、
 何かが含まれて、いたとしたら、
 村人の意思が、統一されるのもわかる。
 
 富本のおばあちゃんが、青い雪の時、
 村に不在で、その後に帰って来たなら、
 村人と違うのも、説明はつく。
 
 すると、村人に病気が無いのも、
 その、青い雪のせいなのか?
 
 だとしたら、
 影響はずっと、続いているはずで、
 インフルエンザウイルス以外の物も、
 あるはずなんだけど…。
 
 ユウキさん、写真・画像の分析を、
 引き続き詳細に、やってもらえますか?
 必ずまだ何か、あるはずです!」
 
ユウキ
「わかりました。」
 
ユウキが出て、入れ替わりに、
クロスとユリコが、それぞれ入ってきます。
 
クロス
「百年洞の、衣服の痕跡ですが、
 やはり百年巫女の物に、間違いないそうです。
 
 内部から、引き裂かれた形跡があり、
 一方で不思議なのは、本人がどこにもいない。」
 
ヒデコ
「なんなの、それ?
 百年巫女本人が、服を引き裂いて、
 洞窟からどこかへ、行ったって事?」
 
ナワテ
「あるいは、その時はもう、
 本人ではなくなっていたか…」
 
ヒデコ
「え?」
 
ナワテ
「だとしたら、これは、
 とんでもない、食わせ者だよ。
 何が、怪獣様だ!」
 
ユリコ
「それでね、あの、ナワテさん。
 
 村で、聞いたんだけど、
 今年の百年巫女が、決まったって。
 
 それが… 富本さんなの。」
 
ナワテ
「なんだって!?」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
 
【翌日 富本宅 縁側】
 
並んで話ている、ナワテと美恵。
 
富本美恵(狭場郁村、村民)
「そうなんです。
 夢で見て、今年は私だって。
 
 三日後に青い雪が降るって、啓示があったので、
 その時、百年洞に行こうと思います。」
 
ナワテ
「い…、行っちゃいけない!美恵さん。」
 
富本美恵
「え? なぜ?」
 
ナワテ
「それは、そのう… 」
 
迷いに迷う、ナワテですが、
やがて意を決して、口を開きます。
 
ナワテ
「あのね…
 冷静に聞いて、欲しいんだけど、
 怪獣は祝福なんか、してないんだ。
 
 それはただの迷信で、思い込まされてるだけ、
 本当は、利用されているんだよ!
 
 だから、君が犠牲になっちゃ行けない。」
 
なぜか笑い出す、美恵。
 
富本美恵
「ナワテさん、おばあちゃんと同じ事言うのね。」
 
ナワテ
「え? そうなの?」
 
富本美恵 
「うん。
 だからおばあちゃん、村で一人だった。
 
 おばあちゃんも、ナワテさんも、
 気持ちはうれしいけど、迷信なんかじゃない。
 だって現実に、みんな元気でいるんだもん。」
 
ナワテ
「だからそれは、怪獣が、
 自分自身が生きるために、してるんだよ!」 
 
富本美恵 
「だからって、私一人のわがままで、
 ここまで続いてきた事を、勝手には破れないわ。
 
 もしそれで村に、何か起きたら、
 うちの一家は、もう村にいられない。」
 
ナワテ
「し、しかし、君が犠牲になっては…」
 
富本美恵 
「このお守りを見ていると、
 おばあちゃんを思い出して、不安にもなるけど。
 
 でも、おばあちゃんは逆に、
 何かあったら、お守り持ってろって言ってくれた。
 
 だから百年洞に行っても、このお守りがあれば、
 おばちゃんが、守ってくれるかも知れない。
 そんな気が、するんです。」
 
ナワテ
「いや…
 良いお話しだけど、はっきり言って、
 お守りじゃ、無理だよ!
 何の科学的根拠も、無いじゃないか。
 
 しきたりとか、迷信とか、お守りとか、
 そう言う事じゃ、なくて、
 ちゃんと科学的に、対処しないと…。」
 
富本美恵 
「ナワテさん、
 ナワテさんが、私の事を心配して、
 色々言ってくれてるのは、わかります。
 
 でもやはり、迷信やしきたりに、
 科学的根拠無いって、言われても、
 私は、自分一人のわがままで、
 これまで続いた事を、破れない。
 
 そう言う事なら、
 もう、来ないで下さい。
 ごめんなさい。」
 

☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*☆*゚¨゚゚・*
   

ペタしてね