努が口を開いた

「今のこの景気だし旅館の経営は良くない…
それで銀行は融資を打ち切ると言い出してきた。

そこに大手のホテルチェーンから買収したいという話を持ってきた。

だけど俺はこのままの旅館が好きなんだ。
買収なんかされたくない!

…銀行が言うには…
長男である俺が旅館を継げば融資を続けると言っている…」

うなずく私…

「○○…」

「俺は会社を辞めて旅館を継ぐ事に決めた」

「!」

「…本当は…
○○も連れて来たいけど…

○○の仕事も順調だし、
俺の都合だけで○○の仕事を取り上げる事はできない…」

一度黙り
そして優しい笑顔で

「だから○○は今の仕事を
精一杯やりなさい!
いいね?」





私は今している旅行の企画の仕事が大好きで今、自分が考えた企画が採用され、現実しそうな大事な時なのであった。

そんな私を知っていたから…
以前の努は誰にも相談せず一人で決めて
何も言わずに私の前から去ったんだ…



だけど今は違う。
ちゃんと私に話してくれた…



気が付くと私は涙を流していた

「ご、ごめん…泣くつもりは無かったんだけどな…
あ、涙が…止まらない…」

努が涙をぬぐってくれる

「…ん…」

抱き締められて唇を重ねる

とめどなく涙が流れる

何度も何度も口づけ合う

離れたくない
離れたらそのまま終わってしまう気がして…

努の腕の中で泣いた





ある程度落ち着いた私は
無理矢理笑顔を作りながら
「ほんとごめんね!
あっでも今は顔見ないで!
泣いて不細工だからさ…」

「泣き顔も可愛いよ
世界一可愛い俺の彼女だからな!

他に誰も居ない
泣いてもいいよ
俺が抱きしめてあげるから…」



月明かりの中、
離れられずずっと抱き合っていた



……………続く