別にこれと言って泣きたい理由なんかはなくて、ただ単純に何かに涙を流したいと思ったんだ。

君は夕陽より朝日が好きだと言っていた。君の大好きだった廃墟は跡形もなくただの鉄の塊たちになってしまった。

秋の星は綺麗だよ。君が言ってた台詞に僕はただ曖昧に返事をして、眼鏡がないから見上げた夜空には何も見えなかった。

今さらになって思う。あの時君とあの夜空の星をちゃんと見ていたかったと。

簡単なことですぐに笑う君の優しい笑顔にもっと触れてもっと温もりを感じたかった。

無くさなければ気づかないのが人間ならば、僕はもう人間なんてやめてしまいたい。

過ぎ去った日々よ、僕に何を残してくれたの。

優しい君の温もりと微かな甘い香水の匂い。

君は今、君は今、君は…今。
幼すぎた僕は秋の夜1人、寂しく昔を振り返る。

ああ そうだ。

君の香りは金木犀に似ていたね。