尚実の変態ホットライン -7ページ目

尚実の変態ホットライン

ゆりかごという名の孵化器のなか、リハビリ中。

マスターはあるとき突然こう仰った。
これからは、わたしのことを「マスター」と呼びなさい。
もしも、間違って「御主人様」と呼んでしまったら、
おしおきするって言われた。


いろんな想いがいっぱい溢れてきて

毎日毎日押し潰されそう。

いつも伝えたいことだけを

簡潔に伝えられたらいいのに。

うまく伝えられなくて

それが哀しいから

地雷をたくさんしかけて

すぐに吹っ飛ばそうとしてしまう。


あの日、帰り道で

消えてしまいたい

誰もいないところへ行きたい

わたしを隠してお願い

って電話口で泣きじゃくったわたしに

「あんたにとって、消えることは

息をするよりも容易いんだよ」、と

彼女は宥めるように言った。


ほら今も、あんたは消えてる。

あんたはいろんなものに消えて溶けてる。

そこらへんに溢れかえるそのものに含まれて

あたかもそれがあんたのように然なりと消えてゆくんだよ。


泣いているのはそうきっと

本当は消えたくないからだよ。


あんたがそのものに溶けていくのを

どうしようもなく止められない。

あんたの流出を

あんた自身の侵食を

止められないくらいにあいまいで。

それが哀しいから泣いて居るんだ。


消えることなんてわたしにとって

息をするよりもたやすいことなんだよ。





夜、Masterからメールがきた。

「顔を見せなさい」

たったそのひとこと。


奴隷は、正面からノーメイクの顔を撮って送った。

「だめだ、やりなおし」

ダメだし。


きっと、睨み付けるような目つきが悪かったんだろうな、と
今度は媚びるような目をして撮った。


「だめ、やりなおし」


困った。何がダメなのか、全然わからない。
こういう場合、Masterに直接理由をたずねるのは、
今までの経験上、ナンセンスだと知っている。
今度は、顔のパーツがかろうじて入るくらいに
アップの写真を送った。


「だめだ。少しましにはなったがまだまだ。」


ん?
ますます分からない。
今度は、横顔を撮ってみた。


「分かってないな」


Masterの溜息が聞こえてきそうなメールを頂いた。
焦り始める奴隷。


返事を待つ間、お風呂に入っていろいろ考える。
そうだ、御主人様は、鼻フックがお好きなのだ。
つまり、取り澄ました表情をしても、悦ばれないのだ。
奴隷は、自分の指で鼻を押し上げた写真を送った。


ブヒ。


その一言も忘れずに。
決してふざけているわけではない。
これも調教の時に教えていただいたのだもの。
Masterが奴隷の鼻を押し上げた時は、何て言うのだ?
「ぶひぶひ」
そう教えて頂いたのだ。

きっと今度こそ気に入ってくださるはず。
奴隷は少し自信があった。
それにしても、なんという酷い顔だろう。ぷぷぷ。
送った写真を自分で見て、しばらくウケる。
よく、調教中に笑いそうにならないものだな、すごいな、Master。
わたしなら、きっと笑い転げてしまうだろうに。


ひとりで笑っているとメールが返ってきた。


「違う」


ダメだし、しかもあのブタ顔をスルーされた!!!!!

奴隷はもうどうしていいか分からず少しパニックになる。

「どうしたら気に入ってくださるのでしょう」
奴隷は控えめな問いかけにも取れるような微妙な言葉を発しながら、
鼻と口と目の超ドアップを送る。


「違う。もっとわたしを知りなさい」


ああ、問いかけなんかするんじゃなかった。
自分の努力の足り無さがダイレクトに返ってくるだけなのに。
そういえば、奴隷は調教の間はほとんど鳴いてるか叫んでるかどっちか。
ああ、そうか!たまには笑ってる顔が見たいのかも!
そう思い、ニッコリと満面の笑みを浮かべて撮る。


「違う。」


違うけど、どうやらウケたみたい。
ブタ顔より、ニッコリ笑顔が笑えるって、どういうことだろう。
よほど胡散臭い笑顔だったからだろうな。
そういえば、自分で見ても笑える。


笑いながらどうしたもんだろう、と身悶えて悩むこと数分。
そういえば、私の身体にはもう一つの顔があることを思い出す。
刺青だ。
奴隷は刺青のアップ写真を撮って送る。


「まぁ、まぁだな。このくらいで赦してやろう」


満足しては下さらなかったようだけど、
とりあえず赦してくださった。

9時から始まって夜中の1時まで続いたやりとり。

Masterは、こういった調教を好まれる。
奴隷はかなり疲れるし、混乱する。