※ギャグです。さらっとテッドが蘇っているので注意…!

 

 

『トランの英雄を動物にたとえて下さい 』


 それは、いつものようにナナミと二人で目安箱の中身をチェックしていた時のこと。
 一枚の手紙を前に、カナタはぴたりとその手を止めた。
「誰だろ?こんな手紙を入れたの」
「名前がどこにも書いてないね~」
 ナナミが横から手紙をあちこち眺め回すが、差出人の名前らしきものは何一つ書かれていない。
「んー…ま、いっか。怪しいからとりあえず処分処分~っと」
 考える様子を見せたのも束の間、カナタはあっさりと決断を下し、手紙を破り捨てようと手をかけた。
 しかし、それに異を唱えたのはナナミだ。
「えー!?駄目だよっ、せっかく面白そうなのに!」
「え、ちょっ、ナナミ?」
 カナタから無理やり手紙を奪い取り、キラキラと目を輝かせる。
「マクドールさんを動物にたとえると何なのか、いろんな人に聞いてまわろうよ! カナタだって気になるでしょ!?」
「そんなこと――」

 ―――ない。

 と言いかけて、ふと、獣の耳やら尻尾やら羽やらが生えているユリウスの姿を想像する。

 ―――…確かに、面白そうだ。

「うん。気になるね」
 カナタの変わり身は、実に早かった。
「だよね!?よーし、じゃあさっそくいっくよー!」




                                       幻想水滸伝
                              君はにゃんこ

                                            
                                            
                                            
                                            
 case.1 ~ルック~


「――は? ユリウスを動物にたとえろ?」
「うん。ルックはどう思う?」

 まず最初に訪れたのは、いつも仏頂面で石版の前に立っている、風使いの少年。
「あんた、とうとう頭湧いたわけ?」
「生憎だけど湧いてませんー!いたって正常ですー!異常なしですーっ!」
「こらカナタ、落ち着きなさいっ」
「あたっ」
 笑顔でルックの胸倉に掴みかかったカナタの頭を、ナナミがぽかんっと叩いて諫める。
「……君たちは姉弟漫才をしにきたのかい」
「あのね、目安箱にこんな手紙が入ってたの。だからみんながどう思ってるのか、カナタと調べてるんだ~」
「……何これ。ただの悪戯だろ。興味ないね」
 至極楽しそうに差し出された手紙を一瞥して、ルックが面倒くさそうに溜息を吐いた。
 そのぞんざいな態度に、カナタの目がキランと怪しく光る。
「いつも『興味ないね』で済むと思ったら大間違いだよルック。今日という今日は、軍主の名にかけてぜっったいに答えさせてやるっ!」
「そこで軍主の名前を使う気がしれないんだけど………やるっていうなら相手になるよ?」
 愛用のトンファーを構えたカナタに対し、不敵に笑って風を纏い始めるルック。
 両者の間に一触即発の空気が流れ、今まさに戦いの火蓋が切って落とされ――――…なかった。
「二人とも喧嘩は駄目だよっ!お姉ちゃんの言うこと聞かないと、花鳥風月百花繚乱竜虎万歳拳を食らわすわよっ!!」
「「………」」
 アホらし、と呟いて。
「………まぁいいや。あんたたち二人なら、動物にたとえてあげてもいいよ」
「え?」
「あんたは『サル』。で、そっちは『イノシシ』」
「Σ何それえぇっっ!!乙女に向かってイノシシなんてっ…!!」
「うわっ、ナナミ!落ち着いてっ!お願いだから城壊さないでぇ~!!」



 case.2 ~フリック&ビクトール~


「――ユリウスを動物にたとえると何かだって?」
「はい。フリックさんはどう思います?」
「つーかカナタ。お前なんでそんなボロボロなんだ?」
「はぁ…まぁ何というかこの城の危機を退けたというか………」
「「??」」
「動物といってもなぁ………そもそも『人間』だって動物じゃないのか?」
「うわっ。それ最悪な答えですよフリックさん」
「さすがは『青雷のフリック』だね!」
「どういう理屈だそれは!!」
「……………『白鳥』、じゃないか?」
「「「っ!」」」
「白鳥……ですか?」
「どうしてどうして?」
「白鳥ってやつは、水面では優雅に泳いで見えるが、水ん中ではジタバタもがいてるだろ。ユリウスも同じだ。俺たちの前では絶対に弱みを見せねぇくせに、本当は誰よりも傷ついて陰で苦しんでる。そんなところが似てると思ったんだが………って、な、なんだよ?」
「……ビクトール。お前、顔に似合わずロマンチストだったんだな」
「それにしても白鳥って……」
「ビクトールさんって、マクドールさんのこと大好きなんだね!!」
「だぁ~~っ!!うっせぇよ!!つかお前らが言えって言ったんだろーがっ!!」
「……今の台詞をユリウスさんが聞いたらどんな反応をするのか、個人的に気になるところなんですが」
「やめてくれ。想像が付かないが、なんだか俺にまでとばっちりが来るような気がする」
「被害妄想もそこまで来ると立派ですね。さすがは『不幸のフリック』さん」
「Σちょっと待てぇ!!いつそんな通り名が付いたんだ!?」
「えー、みんな言ってるよぉ。ねぇカナタ?」
「ねぇ?」
「可愛らしく首を傾げるなーっ!」



 case.3 ~テッド~


「――ん?あいつを動物にたとえると?」
「はい!ルックやフリックさんたちにも聞いたんですけど、いまいち参考にならなくて。ここはやっぱり、親友であるテッドさんに聞いてみるのが一番かと!」
「動物、ねぇ……」
「「ドキドキ、ワクワク」」
「ユリウスといったら、アレしかないだろ」
「アレ?」
「アレって何なに??」
「――『黒猫』」
「「くろねこぉ!?」」
「どうして黒猫なんですか?」
「あ、私わかったー!!」
「えっ、ほんと?」
「マクドールさんの髪が黒いからだよね!!」
「………そのまますぎるよナナミ」
「ははっ。確かにそれも一理あるな」
「ぅえ!?」
「あいつの髪と瞳の印象から、黒にしたのは本当だし。どうして猫なのかは……まぁ見てればわかると思うけどな」
「はぁ…」


―――というわけで、トランの英雄をしばらく観察することにしました。


「………テッド。この染みは何だい?」
「へ?」
「この本は僕のお気に入りだって、言ってあったと思うけど?」
「あー、えーと……それはその~…――――悪いっ!!」
「………逃げるとはいい度胸だね。でも…――逃がさないよ!!」

人間離れした軽やかな身のこなしで、追いかけっこ。


「マクドール殿!!ぜひ俺と一戦、剣を交えていただきたい!!」
「お断りします(にっこり)」
「貴殿の噂に名高い妙技を、この目で拝見したいのです!!」
「お断りします(にっこり)」
「おーい、ユリウスー」
「! テッド。それにフッチも。珍しいね、どうしたの?」
「あの……実は、ユリウスさんにお願いがあって……」
「うん、何?」
「僕に稽古をつけて下さい!!」
「え?」
「俺からも頼むよ。こいつさ、もっと強くなって、今度こそ自分の竜を守ってやりたいんだと」
「そっか………わかった、いいよ。僕でよければ喜んで」
「! ありがとうございます、ユリウスさん!テッドさんも!」
「テッド『さん』かぁ。おーおー、あの可愛げのなかったガキが大人になって!」
「親父くさいよテッド」
「……お前は可愛げがなくなったよな」
「気のせいじゃないの?」

心を許した相手と、そうでない相手とで、見せる表情がまったく違う。


翌朝。
「ユリウスさん、テッドさん!朝ですよ、起きて下さい。今日は交易で忙しいんですからね!」
「んー……カナタか…?」
先に起きたのはテッド。彼は眠そうに目を擦りながら、カナタの方に視線を向ける。
しかし当のカナタは、その横で安らかに寝息を立てている人物に目を疑った。
体を折り曲げ、小さく縮こまって、テッドにすり寄るようにして眠るユリウス。
その顔は無防備以外の何物でもなく、年相応どころかとても幼い。
誰が見ても口を揃えて可愛いと呟くだろう。
カナタの目には、髪や瞳と同じ色をした猫の耳と尻尾が生えているように見えた。
「………テッドさん」
「ふぁ?」
「やっぱりユリウスさんは黒猫でした」
「は??」

というわけで、無事に目安箱の依頼達成です★



                                         END