夏の宴 第十二話
日曜日。
金曜の夜に百合子がこのマンションの一室に監禁されてから三日目の朝を迎えていた。
朝8時、安永が目を覚ました。
ソファーの上で、全裸のままだらしなく足を広げた高本と、手錠で片足をベッドのパイプに繋がれた百合子が眠っているのを確認すると、安永は自分が今まで寝ていた部屋に戻り、押入れを開けて布団を取り替えてから、部屋を簡単に片付けた。
小一時間が過ぎ、安永は百合子が目覚めたのを見ると、手錠を外し、彼女を浴室に連れ込んだ。
今日、これからの”営業”に備え、商品である百合子の身を清めるだけのつもりであったが、シャワーを浴びて濡れた彼女の白い肌を見ていると、簡単に男の本能のスイッチが押されてしまうのであった。
このところ、何の制限も無く自らの性欲を、望むべく最高の形で開放してきた安永にとって、昨日の夕方からのインターバルは十分以上に長いものだったのである。
安永は百合子を浴槽の淵に正面を向いて座らせ、彼女の股座に顔を埋め、クリトリスを、陰唇を舐め、顔を離すと指を2本入れて中を激しくかき回し、彼女の内部が粘液で満たされ切ったのを確認すると、勃起した性器を挿入した。
すっかり慣れ親しんだ百合子の中の感触が亀頭の全体を包み込んだ。
百合子はもう、何か言葉らしきものを発して抵抗の意思を示す事すら少なくなっていた。
もちろん頭の中は、恨み、憎悪といった思いが渦巻いていたが、何より絶望感が、抵抗する気力を奪っていた。
そして、身体を弄られる度に、自分の意思とは真逆に反応してしまう自らの性感らしきもの、そしてそれに呼応して声を出してしまう自分に対する嫌悪感。
浴室特有の篭った音に変わった女の喘ぎ声が響いていた。
浴室から出ると、安永は高本を揺り起こし、百合子をソファーに座らせ食事を与えた。
「今日はあんたに会いたいって人が来るから、しっかり食っとけよ」
安永は服を身に着けながら言った。
百合子にはその言葉の意味がはっきりとは理解できなかったが、それ以前に、そんな意味など考えたくもないという風情でうつむき、黙って首を横に振った。
考えてみれば、百合子がこの部屋に連れ込まれてから、今までずっと彼女は衣服を身に纏う事を許されていないのだ。
動物のペットですら、今どきは服を着せられたりするというのに。
安永は自分が服を着る行為により、その事を強く意識し、えもいわれぬ征服の歓びを感じるのであった。
「先輩もそろそろ起きて服着て下さいよ」
起こされてからも、またベッドに移り二度寝をしようとしていた高本に安永が声を掛けた。
「ああ、眠いわ……どうせ今日はできんのやろ? 俺、パチンコでも行ってくるから、あと頼むわ」
眠そうに目を細めた高本は、そう言って立ち上がった。
「くれぐれもヤバい事にはならんようにしいや」
身支度を終えた高本が安永に耳打ちした。
「ええ、もう今日の8人、全員の時間調整は済みましたから。掲示板も削除しましたし」
「8人ってか? えげつないなあ、お前も」
「いいじゃないですか、どうせ奴隷なんだし、使えるだけ使わないとね」
「そっか、ほな任せたで」
高本は部屋を出ていった。
時計の針が11時を指そうとした頃、安永は百合子が逃げ出さないようにと、再び彼女を手錠で動けないようにしてから部屋を出て、エレベーターに乗り込んだ。
マンションの前に出ると、しばらくして40代半ばの小太りした男が現れた。
「高橋さん、ですか?」
男がそう尋ねると、安永は、ええ、と一言頷いた。
高橋とは安永がネット上で用いた偽名である。
安永は男をマンションの中へ案内した。
「ホ、ホントにあんな女とヤレるんですか……?」
エレベーターの中で男が安永に言った。
「ああ、安心して下さい。秘密さえ守ってもらえれば」
「あの……」
「何です?」
「その……、中とかに出してもいいんでしょうか?」
「ホントは良くないんですけど、せっかく来てもらったんだし、倍の料金を払ってもらえればいいですよ。もちろん女を見てから決めてもらっても構いません」
見知らぬ男を連れた安永が部屋に戻ってきたのを見た百合子は、一瞬、困惑の表情を浮かべ、両腕で前部を隠した。
「どうです?」
ニヤリとした表情を浮かべた安永が囁くと、男は、
「え、ええ! 写真より数倍いいです」
と興奮を隠し切れない様子で返事をした。
安永は男から2枚の札を受け取ると、百合子に近付き、無表情に手錠を外しながら、
「あの人に抵抗するんじゃねえぞ」
とだけ低く小さな声で言い、彼女の手を引き、隣の部屋へ入るように指図した。
「では、私はこちらの部屋で待機してますので、約束の1時間、好きに楽しんで下さい」
ほどなくして、閉ざされた扉の向こうから、男と女が交じり合う声が聞こえ始めた。
初見の、うだつの上がらない中年男の責めに、当初はいつもより激しく抵抗している雰囲気が物音から感じられたが、そこにあるただならぬ背景を感じた男は、余計に興奮を増している様子であった。
男が部屋に消えてから30分も経たぬ頃、
「いやっ! いや、やめて」
という聞き慣れた百合子の声が高く響き、その声は男の興奮した声と混じり合い、そして次の瞬間、ぴたりと止まった。
その後も、残りの時間を無駄にせぬよう楽しんだのだろう。
男が与えられた時間ちょうどになって部屋を出てきた。
男が帰っていくのをを見送ると、安永はぐったりとうなだれる百合子を強引に両腕で抱きかかえるように起こした。
「どうよ? たまには俺達以外の男のチンポもいいもんだろ?」
「も、もう、ダメ……帰らせて……」
「何言ってんの? あんなに声上げてさ。気持ち良かったんだろ? あのオッサンのチンポ」
流しても流しても枯れる事のない涙が、また百合子の頬を流れ落ちた。
「さあ、シャワー浴びるんだ。またすぐお前に会いたい人が来るんだからな」
安永は浴室に百合子を投げ捨てるように入れた。
安永はさも、彼女が逃げ出すのを防ぐかのように浴室の扉の前に座り込んで煙草を吸った。
身体を洗い終えた百合子が出てくると、安永はまた百合子を手錠で縛り付けた。
それは、いつもはだらしなく仕事をする安永が見せる徹底した奴隷の管理態勢であった。
安永は先程と同様に客を迎える為に部屋を出た。
その後、安永は自ら組んだタイムテーブルに従い、1時間、客に百合子の身体を与え、30分後にはまた次の客を迎える作業を夜の10時半まで繰り返した。
安永が客に中出しの話を持ちかけると、客は皆、喜んで倍の金額を彼に手渡した。
下は二十歳そこそこの大学生風から、初老の労働者風の男まで、様々な見知らぬ男達が百合子の若く、妖艶な肉体を舐め、触り、犯した。
そうして、その日、百合子の膣内には、8人の異なる男の精液が注ぎ込まれたのである……。
続く