暖かい思い出 | サバンナとバレエと

サバンナとバレエと

ブラジルからの便り

昔の記事です。
これは2010年7月28日の記事(リンクはこちら




一時期、本当に生活に困った頃があった。




夫も私も博士課程を終えた時期でサンパウロの田舎に住んでいた。

ブラジル経済はまったく不況でなかなか就職出来なかった。


夫は私立大学で教えるためにサンパウロ州のいくつかの町をめぐっていた。毎日相当な距離を運転しながら。


私は車なしの生活。仕事も見付からず、主婦として子供達の面倒を見ながら、出来るだけ節約するための遣り繰りに暮れる毎日だった。



次女の学校の送り迎えのバス賃さえもなかった。



学校まで歩いて片道45分もかかり、次女は毎日往復1時間半、私は迎えも入て約3時間歩いた。

いやがる次女をなだめるため 毎日 一生懸命 いろいろな遊びを考えながら歩いた。


なにかいいもの見つけること。新しい道を見つけること。





将来のことや借金のことなんか考えると気が狂うぐらい不安だったけれど、とにかく生活していく事、そう自分に言い聞かせながら生きていく毎日だった。








ある日一度も行ったことのない道に入り込んだ。舗装もされてない小道だった。


道の両方にあった塀が途切れると突然、広い景色が目に入ってきた。






‘ママ、見て!

次女は嬉しそうに指差して叫んだ。



なんとそこは牧場だった。田舎町でも珍しいものだった。

まさか町の中にあんな農場があるなんて。





小さな農場だったが、沢山の動物がいた。



牧場を横切っていくと牛や馬がゆっくり牧草を食べていた。



子ヤギが後をつけて来た。



鶏は沢山のひよこを連れて歩いていた。



遠くに泥のなかに鼻をつっこんでる豚もみえた。




冬の朝日のなか私達二人は有頂天になって歩いた。 



なんだかタイムスプリップしたような感じだった。 別次元に迷い込んだような。



`ママ、 魔法の入り口見つけたのかな?



‘そうかな? 二人だけの秘密にしようか



‘うん、お姉ちゃんにも内緒ね。



次女の喜ぶ顔が忘れられない。

まだ小さかった次女の姿を思い出すと胸がいっぱいになる。



いろいろ苦しかった時期だったけれどいい思い出も沢山ある。



結局、苦境なんてこんな感じだった。全てが灰色ではなく心を和める出来事がまばらにあった。



ぱらぱらと散らばった真珠のように。灰色とのコントラストのためより輝いていた。


それだけに余計愛おしい思い出の数々。