うちの長女はサンパウロでちょっと便利のいい地域のアパートで暮らしている。
長女の幼馴染のCちゃんのお祖母さんのもので
その方が亡くなって使われてなかったアパート。
長女はCちゃんと一緒に住み始めてすでに5年。
まったく仲の良い二人で喧嘩したことも一度もないそうだ。
長女とCちゃんはごく幼かったころから
サンパウロの田舎でカールスカウトのころからの友情だ。
一緒にキャンプしたり
川や湖で泳いだりして育ったのだが
どうやら今でもやっているらしい。
キャンプの場所はジャングルから野外ロックライブに変わっているが。
「ねぇ ママェ Cちゃんってさちょっとピント外れなんだよね。」
長女が面白そうに瞳をくるくるさせながら言う。
ちょっと小難しいときもあるが
機嫌の良いときは実に面白い子だ。
「どうして?」
「テレビ局の仕事でさ、子供番組を撮影してセットにでっかい鉛筆があったんだ。
本当に大きいの。私の背丈より。
もう使わないから捨てるって聞いて私が欲しいなーと思って。
ねぇ、アパートのデコレーションでステキじゃない?
とりあえずCちゃんの意見訊こうと思って電話かけたんだ。
そしてね、私が
ーねぇ、ドデカイ鉛筆持って帰っていい?
訊いたら
彼女
ー何色?って
ー黒
って答えたら
ーうん、いいよ
って。。。」
けらけら笑ってる。
「この会話ありえないよねー。
ねぇ 普通ならさ、
ーえっ?鉛筆って、どでかいって何のこと?
っていうよね
何色?うん、いいよ
って、可笑しくって」
どうやらタクシーで運んだらしい。
「そしてねータクシーのおっさんが鉛筆見て
これ何?って訊くんだ。
真面目な顔で
ーでっかい鉛筆です
って答えたら
ー車に傷つけるからだめ
ってニコリともしないで言うんだよ。
ー大丈夫6Bですから
って言っても怖い顔してた。
一体どちらがピント外れなの?って訊いた。
まったくあの二人、いいコンビだ。
「どでかい鉛筆」は、古臭い家具が並んでいる応接間の隅で愛嬌振りまいている。