一番青い海 | サバンナとバレエと

サバンナとバレエと

ブラジルからの便り

今まで見たなかで一番青かった海。



アハイアル・ド・カーボ(Arraial do Cabo)。

大学生だった頃行った。仲間5人、ワーゲンに乗って。





信じなれないほど青い海と空だった。



高い波はパーフェクトな壁になり、中にはきらきら輝く魚が見えた。



数々のかもめが魚に向って壁を突き破っていった。



かもめまで青く染まっていた。

青いかもめ。見た事ないな と思った。

海の反射で青いのだと気付くまでだいぶかかった。


それほど強烈な色合いに何もかもが染まっていた。








強い風が吹き、砂をパラパラとひっきりなしに肌に叩き付けた。


強い太陽が焼き付ける肌はだんだん赤く敏感になっていった。


風と砂と塩で傷ついた肌。


私達は風から逃れるために岩陰に小さくなって座り、ただ青い海を無言で見続けた。


何も話したくなかった。


言葉は口から出た瞬間にきれぎれに吹き飛ばされた。







風の音と一緒に人声が断片的に聞こえ、岩の向こう側にも人がいるのがわかった。


若い男女。たぶん恋人同士。



突然、風が笑い声を運んできた。高い透き通った笑い声。



そしてその女(ひと)は岩陰から走りでた。


赤い水着、髪にも体にも白い砂が付いていた。


波際まで走り、振り返って笑ったけれど、岩陰の私達には気付かなかったみたいだった。



そして


ふいに濡れた砂の上で踊った。


ピルエットを二回、くるくる回り、きれいなアラベスク、そして波に飛び込んだ。



細い体は逆光線でほとんど影に見えた。


肌にくっついた白い砂だけが輝いてた。


うしろには強烈な青い光。





隣の友達が私の耳に口を近づけて言った。


‘バレリーナなんだね。


‘うん。 


何か言ったら魔法がとけてしまう様な気がした。


何か大切なものが逃げていくような。


友達はだまっている私の肩に腕を回し、頭をもたれかけてきた。


感動が静かに伝わってきた。


私たち頭を寄せ合い、長い間、青い光の中のぽつんとした人影を見続けた。










サバンナとバレエと

あの時の画像は無いので、イメージに近い画像を FLICKR で探しました。 creditsGustavo Veríssimo



サバンナとバレエと


アハイアル・ド・カーボ  credits: Douglas Fernandes