なせ踊るか2 | サバンナとバレエと

サバンナとバレエと

ブラジルからの便り

たしか5才ぐらいだったのだろう。バレエの舞台を初めてみた記憶がある。眠れるもりの美女。姫が王と女王の前で踊るシーン。





実は見れたのはたった3分ほどだったと思う。あるデパートの催しで会場は満員で座るところはなく、小さかった私は大人の体の間から舞台を観た。
母は
「観える?」って私に訊いていたけれど
「みえるよ」と答えたのに
「‘ほかのものを見よう‘」  と私の手を引っ張って屋上につれていった。





‘どうして? あれ見たい。‘




‘あとで。




そうか。あとで見れるのか。




屋上にはいろいろな漫画のキャラクターのぬいぐるみで盛り上がっていた。弟は喜んでいたが私は辛抱強く会場に戻るのを待った。大人の足の間から少しだけ見えた舞台しか頭になかった。




だけど会場にはもどらなかった。






家に帰るバスの中、すごく悲しかった。だけと気を取り直して自分であのように踊ろうと決心した。忘れないように一生懸命踊りを思い出した。






現在でも目を閉じるとはっきり見ることができる。白い水玉模様の赤いドレスを着たバレリーナ。小さな私でも水玉模様はちょっとへんだなっとも思ったのもおぼえている。




そのあとずいぶん長い間、一人で、誰にも内緒で踊ろうとした。子供部屋でだれも見ていないとき。なかなか出来なかったけど。でも想像のなかではくるくるとピルエットをする私がいた。




大切な秘密だった。あんまり大切だから誰にもいえない秘密。今ではその様な秘め事はだいぶ溜まったが、あれは私の人生で第一番だった。





もし誰に見付かって‘そんな馬鹿なことやめなさい。なんて言われたらあまりの悲しさでばらばらになってしまうだろう。あんなに小さな頃にもうすでに分かっていた。だから誰にも言わなかった











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ロライマの夜