クラッシュを見て、思うまま文を紡ぐ
インディカーレースで大変なクラッシュがあった。
インディとは主にアメリカを主戦場として戦う
オープンホイールレース(F1みたいにタイヤ丸出しのマシンで走る)で、
テクニカルコースも走るが、基本的には楕円形のオーバルコースを
平均時速300キロオーバーでひたすら周回する恐ろしいレースである。
まあ実際にはあんまり見たことはない。
個人的にはほとんど同じレースであるCARTの方が面白かった気がするが、
いつのまにか統合されていたようだ。
ひたすら楕円形コースをぐるぐる回っているだけなんだけど、
常にとんでもないスピードで回ってるために、
ピット作業での順位入れ替えが激しくて、迫力もある。
クラッシュも多いので、レース展開も波乱が起きやすいし。
アメリカ人は自国発祥とか自国が強い競技しか興味がないので(偏見だけど)
アメリカではF1よりも人気があるっぽい。
二輪でも、アメリカじゃmotoGPの人気ってそんなでもないっぽいしな。
アメリカ国内のAMAシリーズの方が人気高い印象。
実際はどうだか、あんま知らないけどね。
まあレースの安全性ってのは現代ではすごい高いんだけどね。
F1のカーボンモノコックフレームとかHANSの効果は相当らしいし、
サーキット側の安全対策も昔に比べてものすごく向上している。
どこでどうクラッシュが起きたらマシンや人間がどう吹っ飛ぶか、
あらゆる可能性を検討して安全マージンを取っているのだ。
だからレースというのは普通の人が考えるよりはるかに安全なスポーツだ。
一般道だって飛ばしてるヤツはいるし、レーサーからすれば
数えきれない人々が全く違う目的地、全く違う技術レベルで走る公道の方が
よほど怖いというものだ。
サーキットでは皆が同じように早く走るし、
技術レベルやマシン性能が違いすぎると、一緒に走ることもない。
歩行者や自転車が飛び出してきたり、
一時停止無視の車が出てくることもないのだから、
何も気兼ねすることなく全力で走れるのである。
それでも限界ギリギリのスピードで走る以上、
100%の安全はどうあっても保証できない。
モータースポーツは危険な競技だということは、
残念ながら、きっと永遠に否定はできないのだろう。
かくいう俺もいろんな吹っ飛び方をしてる。
二輪は生身なわけだけど、レーシングスーツの性能も今はすごく高い。
特にプロライダーが使うような物は、素材もプロテクターもすごく拘ってるものだ。
80キロくらいで空中1回転したり、1日に2回クラッシュしたり、
普通の人からすれば有り得ない恐怖体験をしても、
だいたい即座に起き上がってきた。
雨の筑波で2位走行中に転倒した後、
再スタートして14台抜きしたのはいい思い出だ。
あの日は乗れてたんだよー。
当時の雨の筑波での全日本でもトップに匹敵するタイムだったからな。
皆コースアウトでもしたのかと思ってたらしく、
レース後「いやコケたんだよ」って言ったら驚かれた。
確か最終的に7位か8位くらいまで追い上げたんだよね。
またあの位、周りが驚くようなレースがしたいな。
もてぎで優勝したレースも
ラストラップの攻防とか評価されてたんだけどな。
マジでえげつないブロックしたからねw
1回前に出たからには殺してでも譲らないと思ってるから。
まあ今度周りを驚かせるときは、舞台が全日本以上しかねーけど。
いくらブランクあるとはいえ、さすがに地方とか東日本で何やってもねぇ。
まあそれはともかく、時には事故はおきるんだ。
加藤大治郎、ノリック、最近だと富沢祥也選手の事故死など。
富沢選手の事故はゾッとするものがあるね。
あんな風に後続車に轢かれたら、受け身とか関係ないよ。
ハイサイドでバイクが上から落ちてきた時もそうだけど、
もう死ぬしかありませんね。
それはレーサーなら皆覚悟してると思うんだよね。
死んでもいいなんて思ってないけど、
一つの結果として死こともあると覚悟してるはず。
二輪なんて特に、死亡事故だって珍しくないしさ。
それでも、勝ちたい、走りたいっていう気持ちには勝てないんだ。
俺は絶対にサーキットに戻ると決めている。
趣味じゃない。プロライダーとして戻る。
もう走れなくなるまで、あるいは自分の限界を悟るまではやめない。
別にそこまでバイクが好きでもないと思う。
レースだって自分が走ってない今はそんなに見てない。
普段はバイク乗らなくたって何も気にならないし。
でも、レースで戦うことが好きだ。
レースで勝ったときの、ウイニングラン程気持ちいいことはない。
表彰台でのシャンパンファイトに勝るご褒美はない。
きっとレーサーの誰もがそんな気持ちを持っている。
それを生涯の目標とか、仕事にまでする人は多くはないけれど。
そしてどんな分野でも、通じると思うのだ。
遊びでは得られないものがある。
仕事でも、本気でやらないと得られないものがある。
さらば、ダン・ウェルドン。
あらゆるレーサーが、貴方の意思を継ぐだろう。