※まだ読んでいない方は必ずパチンコ小説第1話から読み進めて下さい。
銭形平次は聞いていたとおりの台だった。
計算上の収支では1日あたり3万どころか4万を超える日も珍しくなかった。
貯玉が生かせるエースばかりで打っていたのだが、等価のマックスに行ってみるとパチプロの青帽子も銭形を打っていた。
青帽子の隣しか空いてなかったので渋々座ったのだが、打ち方は思いがけずとても参考になった。
銭形が打てる機種だと分かってからは休日は丸一日打つようになり、さらに平日の1~2日ほどを社員に外出と言っては打ちに行っていた。
出玉は全て以前のようにへそくりにしていて瞬く間に増えていった。
パチンコの事は妻どころか社員にも内緒にしていたため、外出が次第に多くなり社員の2人には申し訳ないがより頑張ってもらう事になってしまった。
したがって月に1回だけ貯玉から2万円を換金し、社員2人を焼き肉や寿司などの食事に誘うだけでなく、事務所の備品類も必要な際は貯玉から換金しては支払いを行っていた。
それでもみるみるうちにへそくりは膨れ上がっていった。
順調なパチンコ収支とは対照的に整体の客数は相変わらず伸び悩んでいた。
広告は必要最小限にし、経費についてもギリギリまで削減している。
私自身はパチンコ収入があるため役員報酬もほとんどゼロに等しくしていた。
それでも社員2名を食わしていくのがやっとだった。
仕方がない。
なかなか気が進まずホームページを眺めるばかりだったが、銀行に追加融資を申し込む決意をした。
まだ2年も経っていないうちに追加融資を申し込むのは重い腰だった。
残債がたっぷり残っているからだ。
中でも追加融資に必要な書類のうちの事業計画書がなかなか書けなかった。
主に今後の見通しを書く書類なのだが、開業時にはスラスラ書けたのが1年経って決算も赤字だった今となってはなかなか筆が進まない。
借りやすい開業時のうちにもっと多めにでも借りておけばよかった。
それでも書かなければいずれ資金繰りに窮してしまうとの思いで何とか書き上げ、銀行に申込みを行なった。
銀行の担当者から予想どうり時期が早いですねと言われたが、それでも融資を何とかこぎ着けようと今後の見通しを熱弁し、後日返答しますとのことで申込みを終えた。
夕方になって店に戻るとアドバイザーからの書き置きの伝言があった。
今日はアドバイザーの月1訪問日だったようだが、そんな事はすっかり頭になかった。
もはや形式ばった今月のキャンペーン内容の告知文と新しい試みとしてランキングなるものが置かれてあった。
直営店とFC店を併せたチェーン全体の施術者を対象とした施術数上位ランキングを作成したようだ。
各施術者を奮起させようとの思いがあるようだが、大して参考にならないものだった。
上位ランキングは直営店がほとんど占めていて、FC店から唯一ベスト10入りしている施術者がいたが、この街よりもずっと大きい街の店舗でしかも結構な歩合制で知られるFC店だったからだ。
直接お話ししたい事があるので折り返し電話くださいという内容の伝言もあったがどうせロクな内容でもないだろうと無視していた。
それより営業時間終了後に社員2人を集めて、今日銀行に追加融資を申し込んだことを告げた。
融資申し込みの感触は悪くなかったが、万一融資が下りなかった場合は資金ショートする可能性があることも伝えた。
2人はいつになく険しい表情をしながら黙ったままだった。
*
「何だって!どういうことだ!これ以上うちを苦しめる気か!」
まだ開店前という事もあって静かな店内に罵声が響き渡る。
次の日の朝一にアドバイザーから電話があって、その内容に怒りを抑えきれなかったのだ。
社員の2人も雑巾を片手に立ち止まっている。
ガチャンと電話を切り、コーヒーを一口飲んで気を落ち着かせた後、2人を呼び寄せた。
「大きな声を張り上げてすまなかった。
アドバイザーからの電話につい声を荒げてしまったのだが、
2人にもどんな内容だったか説明しておかなければならない。」
2人は黙ったまま注目している。
「この近くに西店が出店するらしい。」