荒川直人の週末シネマ -7ページ目

コララインとボタンの魔女

人形アニメの名作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を手がけたヘンリー・セリック監督作品『コララインとボタンの魔女』を3D版&日本語吹替版で観る。「高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」とはクラークの第三法則だが、ストップモーションの表現が“魔法”に感じられるほどの衝撃だ。少女の表情だけで20万通りのパーツを入れ換えたというから、思わず目からボタンが落ちる。凄まじいのは演技だけではなく、アイデア満載の脚本やユニークな世界観、さらに3D映像が人形の実在感を効果的に高める。神が細部に宿る傑作!【週末シネマ100307-2】

インビクタス/負けざる者たち

クリント・イーストウッド監督最新作『インビクタス/負けざる者たち』を観る。1995年、南アフリカ共和国初の黒人大統領ネルソン・マンデラは同国のラグビーチームを再建し、ワールドカップに挑むことで人種を超えた新たな時代を切り拓こうとする。本作は主演のモーガン・フリーマンが長年暖めた企画で、イーストウッドらしからぬ直球勝負の爽やかな物語が印象に残る。その出来過ぎた展開はいまどきの漫画でも流行らないほどベタなスポ根なのだが、これが実話なのだから“事実は小説よりも奇なり”である。嫌みのない演出が際立つ感動作。【週末シネマ100307-1】

続・押井ワールドの光と影

押井守監督作品『G.R.M./ガルム戦記』は2本のパイロット版を公開したまま、現在も企画凍結中の幻のプロジェクトである。このとき集められたスタッフの残党が、後に『アヴァロン』を完成させたわけだが、そこで謳われた「すべての映画はアニメになる」というコンセプトは、来るべきデジタルムービーに対する押井守からの一つの回答だった。図らずもそれは、『マトリックス』のヒットによって、全世界で実証されることになる。

さて、数々の押井作品でコンセプトフォトを担当しているカメラマン・樋上晴彦氏が今春、ひさしぶりに写真展を開催することになった。題材は“アイルランドの風景”だ。それだけなら何も驚くに値しないが、実はこの写真こそ『G.R.M.』の開発時に撮影された貴重なロケハンのショットなのである。

残念ながら『G.R.M.』の資料等は一切公開しないので、肝心の映画については想像力を働かせるしかないのだが、樋上氏の作品を通して未完成の押井ワールドを楽しむというのも、ファンならば十分にありだろう。会場では40点ほどの写真が展示されるという。(なお、展示は平日のみなので、来場時はご注意を)。

樋上晴彦写真展 「“凛”なる島」 -Land scape of IRELAND-
【会期】2010年4月26日(月)~5月7日(金)
【時間】10:00~19:00(最終日18:00)
【会場】コダックフォトサロン TEL:03-4455-3274
     (千代田区外神田3-12-8 住友不動産秋葉原ビル12F)
【休館】土曜・日曜・祝祭日
【料金】無料

荒川直人の週末シネマ

荒川直人の週末シネマ

(C)Haruhiko Higami

魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st

2004年に放映された第1期シリーズをリメイクした『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』を観る。明らかにファン限定の一作だが、テレビシリーズを知らなくてもわかる丁寧な構成に感心。最初から軟派なジャンルムービーの宿命を背負いながら、キャラクターをしっかり描写する硬派なドラマがうれしい誤算だ。大人の鑑賞に耐えうる傑作とは言わないが、ライバルの魔導師フェイトとの激しい魔法バトルと、その果てに描かれる心の交流は、多くの観客の胸を打つに違いない。萌えアニメだからと、これを大きなお友達に独占させるのは惜しい。【週末シネマ100306】

機動戦士ガンダムUC episode 1 ユニコーンの日

プレミアレビューと称するイベント興行でOVA『機動戦士ガンダムUC episode 1 ユニコーンの日』を観る。福井晴敏の小説に基づく新たな物語は“宇宙世紀”を舞台に、一年戦争から16年後の世界を描く。キャラクターデザインこそ安彦良和だが、監督の古橋一浩を始めとする気鋭のスタッフが挑んだ意欲作だ。60分の序章ながら手描きのMS戦など、気迫ある映像の連続には感嘆するしかない。本作は完結に3年を要するそうだが、この重厚感を維持しながら最後まで走りきることを切に願う。惜しむらくは、予備知識の必要な背景が観客を選ぶところか。【平日シネマ100303】