昨日、坂口志文先生がノーベル医学生理学賞を受賞されました。大変おめでとうございます。業績は制御性T細胞を発見したということです。わたくしは1980年に免疫病理学を主とする講座で大学院生活をスタートしました。当時免疫学の主流はヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞でさまざまな実験が繰り返されていました。
特にサプレッサーT細胞については日本人の研究業績が目立っておりました。それに関与する遺伝子がI-Jと名付けられました。Jはジャパンの略ではないかということでそれを命名したグループのセンスに喝采が起こったものでした。
確かにヘルパーT細胞はCD4でサプレッサーT細胞はCD8という比較的シンプルな組み合わせの中で、その作用や機序も色々と解析されていきました。が私どもはなかなかついていけませんでした。自己免疫にどのように関わっているかよくわからなかったというのが実感でございました。皮膚科領域においてもモルモットとかラットに、ある免疫抑制剤を投与することによってサプレッサーT細部の調節ができるということがわかって、薬疹などについてたくさんの研究がされたように記憶しています。ところがこのサプレッサーT細胞があるのかどうかということに、否定的な意見が多くなりサプレッサーT細胞については研究の終焉を迎えたような時期がありました。そのうち坂口先生がサプレッサーT細胞を提唱され・見事に発見され・証明され現在に至っています。そしてノーベル賞に結びついた。わたくしはある学会を主催した時に(2008年)坂口先生に講演をしていただきました。その当時既に制御性T細胞の存在は肯定されていて研究がどんどん進んでいくというような時代であったと思います。個人的に知っている坂口先生は決して器用ではないんですけれども、己を信じて常に前に進む、孤高の先生でした。
そんな先生を身近に知っているということは私の人生にとっても大変貴重な経験になっております。
