抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎と急速進行性間質性肺炎 | FF残日録のブログ

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広島県出身。各地で皮膚科の医療に関係してきました。2017年から,高槻の病院に勤めてます。過去の文書や今の心のうちを,終活兼ねて記して行こうと思ってます。2023/1/8に、dermadreamからFF残日録のブログに名称変更。

優れた歌唱力のあるYさんが亡くなったそうです。亡くなった原因については、膠原病と書いてある記事もあれば、皮膚筋炎と正式病名を記述したものもありました。Yahoo!記事によれば、急速進行性間質性肺炎の合併とさらに詳しく述べてありました。私は皮膚科医で、皮膚科が膠原病を診断する機会は多いです。エリテマトーデスや皮膚炎はその代表的な例です。これらの膠原病は皮膚症状が大変高頻度に現れます。中でも皮膚筋炎は日本の皮膚科医の研究者によって診断学や治療が飛躍的に進歩した領域です。

皮膚筋炎いう名前のごとく、皮膚症状と筋肉症状が現れることが特徴ですが、中には筋肉症状がないかあるいはほとんど現れない患者さんがおられます。ではそういう病気のタイプは非常に予後が良いかと言うとその真逆です。筋肉症状がない皮膚筋炎では、短期間で間質性肺炎を合併してなくなる患者さんが多いということを皮膚科医なら知っているはずです。このような難治性の肺炎を合併する患者さんを見つけるのは大変難しかったわけですけれども、melanoma differentiationーassociated gene 5(MDA5)に対応する抗体が血液の中にあるかないかということによって、比較的簡単にわかるようになりました。

筋肉症状はなくて、皮膚症状が主体で急速に肺炎症状を伴ってなくなる患者さんがおられるということは、日本では半ば常識的な事実でした。しかし欧米ではそのような患者さんはあまりないというのが一般的でした。しかしながら15年から20年位前位から、アメリカやヨーロッパでも、確かにそのような患者さんがおられるということがわかってきました。

皮膚筋炎はいろんな症状を伴ってきます。この抗体は成人の皮膚筋炎患者さんの10~25%に見つかるとされています。最近では多くの大学病院でリウマチ膠原病科が整備され、皮膚科が初期の診断に携わることが少なくなっていると言われています。しかし、皮膚症状から皮膚筋炎を早期に正しく診断・治療をすることによって、患者さんの健康に貢献すると言う事は、皮膚科医にとっては大変嬉しいことです。またそうするために修行をすると言うことも当然のことながら求められていると思います。亡くなった歌手のYさんと私はほぼ同じ年齢なので、とりわけ思いを致すところが多くあります。

 

指定難病 50

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