同門会の皆さまへの御礼と案内状
2017年3月に無事 和歌山医大を退職できました。皆様のお陰と感謝します。退職記念祝賀会や記念学会もありがとうございました。そのさい、皆様から頂いた記念行事の為のご浄財を和歌山県立医科大学皮膚科同門会 教授退職記念事業研究助成とさせていただきました。特に、ハンセン病をテーマとした和歌山県立医科大学の人権教育における学生レポートの解析のために、学術的活用いたしました。多数例のレポートをそのまま読み込んで、キーワードを抽出するという方法です。EKWORDSを用いた(http://www.djsoft.co.jp/products/ekwords.html)という方法で行いました。特許明細書の分析に使われている方法です。解析は、とっくに終わっておりましたが、論文化にてまどりました。コロナ禍で、(学生レポートの為、持ち出すわけにも行かないので京都/高槻と和歌山の移動)大変ではありましたが、添付の用に日本皮膚科学会雑誌に一ヶ月前に投稿し、アクセプトされました。→掲載ページ 日皮会誌:130(13),2689-2697,2020
下記は考察のダイジェストですが、言いたいことのみピックアップしてみます
2011年度だけ相対使用頻度が高いキーワードがあった。それは「私たち」「政策」で、3倍に一過性に上昇した。2011年3月には、東日本大震災が起こり、そのおよそ100日後の講義であったので、未曽有の出来事が学生心理とレポートに反映されていた可能性がある。先述のように、2005年の「胎児・新生児の標本114体」報道の影響が、一過性にせよ学生の人権意識・社会意識・倫理観に影響を与えていた可能性があることを考えると、医学部生時代の体験の影響の大きさが窺い知れる。新型インフルエンザが流行した2009年には一過性に「予防法」が上昇していること等から考えると、2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックな流行による様々な医学的あるいは社会的な事象が、学生の現在と将来の医師としてのあり方にさらに大きなインパクを与えることは想像に難くない。
2回生から5回生に進級した医学部生の意識の変化を、同一の新聞記事に対するレポート分析を行った結果、人権の面からのキーワードの表われ方に著変はみられなかった。しかし、表5のように3年間に使用頻度が非常に増加したキーワードとして「疾患」「研究」があった。また、3年間に使用頻度が非常に低下したキーワードとして、「講義」、「自分」、「思う/思います」があった。医学部の教育・学習の結果、「自分」の感想を「思う/思います」と述べる段階から、「疾患」という用語を使うようになり、医療に必要な「研究」の重要性を積極的に考える段階に進んだものと思われる。今回の報告には述べなかったが、個人別にみても表2にある「記事を詳細に解説」と「教科書的な総説」のパターンから、個別的要素が目立つようになり、特に「共生・共鳴型」や「現状分析型」が増加していた。
「人権・偏見・差別」の考え方、とらえ方、法律での定義など時代あるいは世相的に変わることは否定できない。その中で、現時点の常識をもって当時の行為を批判することはできないとの考え方や、新聞記事にある「けしからん」行為をした医師が、何故そのような医療行為を行うに至ったのかを知ることが自分達にとって重要であるとのレポートが少なからずあった。この意味で、学生にとって、ハンセン病の歴史と現状を知ることを通して、臨床倫理でなにが問題で、なにが大切かを深く考える機会になったと想像できる。また、学生はハンセン病のみならず全ての疾患において、時空を超えた正確な医学的知識を学び続けることが、医師・皮膚科医にとって必須であることを認識したであろう。