河野さんのブログ で紹介されてた本。
結論から言うと面白かった。

■子会社で好き勝手やります。


美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)


本書はサブタイトルが“「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史”と
なっていますが、実質プレステ、SCE、久夛良木さんにスポットが
あたった内容となっています。

著者の西田さんがSCEを追っかけてきた人みたいで、
久夛良木さんの「しめしめという感じ」といった近くで
取材をしてきた人ならではのコメントが紹介されていたりします。

さて、この本を読んで面白かったポイントはいくつかあるんですが、
そのひとつがSCEが子会社であるが故やりたい放題であった点。

本書中、何回か「昔のソニーはやんちゃな人が多かった」という
セリフが出てきます。ベンチャーマインドを持ち、誰もチャレンジしたことの
無いことに挑戦する気概を持っていたソニーも、いつの間にか人が
増え保守的な体質に。。

ならば、子会社を作り、理想とするようなベンチャーをもう一度やろう。
そういう思いを持って設立されたSCEは、本社の保守的体質に
合わなかった人達が集まってきます。

■美学&実利


任天堂の裏切りからゲームを開発することに端を発するSCEは
徹底して逆を張っていきます。

ROMが中心だったソフトをCDに、
在庫リスクを吸収する1次問屋を廃止し直販に、
枯れた技術の水平思考よりも、最先端技術を採用し表現力を。

プレイステーションは、そうやってバージョンを重ねる毎に
技術的困難と新しいビジネスモデルに挑戦し続けてきたわけですが、
その美学の裏には実利をとれる計算が常にありました。

「半導体は作れば作るほどコストダウンできる。何千万台と売れる
ゲームソフトであれば、自社でやった方がもうかるんですよ」

「処理能力が高くなったんだから、HDD。当たりまえですよ」

「DVDは標準規格だから」

表題とは違い、ビジネスマン久夛良木氏の原則を深く理解し、
大胆に応用し、美学と実利を共に追及する言動と行動はとても魅力的です。

■PS、敗れる


さて、もうひとつの創業ソニーとしてゲームの世界に風穴を開けた
SCEですが、結局PS3では大きな躓きを経験します。

その理由は様々あるのでしょうが、SCEが大きくなりすぎてしまった為、
ベンチャースピリットだけでいられなくなったというのがたぶん理由のひとつなんでしょう。

ブルーレイの採用は比較的早い段階で決まっていたそうですが、
結局のところ、それが縁で共同開発をするようになったソニーのエンジニアと
カルチャーが合わなかった。というのはとても象徴的なエピソードです。

とはいえ面白い良書です。

美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)
西田 宗千佳
講談社
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おすすめ度の平均: 4.5
5 任天堂の記述は少ない「久夛良木健」史なれど、その業績は「もう一つのソニー」と評価できると思います
4 プレステの歴史がこの1冊に