年末ですね。

私事ですが、スマートニュース株式会社で働きだして4年目に突入いたしました。

ついこの間な気もしてますが、月日が経つのは早いものです。

 

というわけでこの3年半余りを年の瀬という事で書いていきたいと思います。

タイトルの(1)の通り何回かに分けて書きますが、書かないかもしれません。

 

まずは自分的には大きく変わった英語についてと、どのようなマインドと

ツールの力を借りて乗り切っていったかを振り返ります。

 

スマートニュースの英語環境

 

会社全体の情報は公開されてないと思うのですが、私の所属するProduct divisionでは

英語を使用する機会が非常に多いです。私の上司がそもそもアメリカ在住ですし、

 Division の Director 陣も半数以上が在米です。

 

また、Product と非常に近接している Engineering div も非日本国籍者が

日本国籍者よりも多く、採用要件に入ってないため日本語話者でない方もたくさんいます。

 

昨年すっごい採用頑張ったんですけども、私のチームも日本国籍者は1/3で、

うち半数は日本語話者ではありません。採用面接も一部の例外を除くと英語で行っています。

 

ですので、必然的に英語のミーティングが多く、ドキュメントも基本的に英語で書きます。

体感的には60%のミーティングが英語、90%のSlackが英語、100%のドキュメントが英語、

という感じですね。

前職と比べると英語を話す機会も書く機会も格段に増えました。

 

入社前の私の英語レベル

 

大学4年生の時に1年休学して語学留学をしました。

その時に、ケンブリッジ英検のFirst certificate を取ったのと帰国してから

TOEICを受けたくらいです。TOEICは2年しか有効期間がありませんので

既に失効しています。確か890点くらいでした。

 

ビジネスでは当然ほとんど使ったことがありませんでした。

まぁ、レベル的に言うと旅行をする分には困らない。Ad tech のプレゼンはほぼ理解できる、

Round tableは自分の知見がある分野ならだいたい理解できる、みたいなレベルでした。

Ad tech を TED と置き換えても可です。

 

重要な点なのですが、1年しか留学経験が無いので私の英語はネイティブレベルからは

程遠いです。非英語圏のアジアンの英語を話しています。

 

英語で仕事をするために使っているツール

 

ほんとにね。21世紀ですよ。たくさんのツールに助けられています。

 

Grammaly

まずはこちら、Grammalyです。本当に便利。すごい。

Chromeにインストールできる拡張で、自分が書いた英単語の添削をしてくれます。

 

例えば、recive とミススペルをすると receive じゃない?みたいな感じで

suggest してくれます。

また、つまづきがちな冠詞や単数形複数形も添削してくれますし、

これまたミスりやすいカンマの使い方もカバーしてくれます。

 

これを入れるだけで文書を書くのがぐっと楽になります。おすすめ。

たまに日本語入力を邪魔してくるのですが、サイトやセッション毎に disable できます。

 

Caption on Google hangout

 

Google meet の caption は本当にすごいです!21世紀!

人によって画面が違うかもしれませんが、挙手ボタンとカメラオンオフボタンの間に

あるやつですね。

 

これをオンにすると、リアルタイムで喋ってる内容を拾ってくれます。

近しい体験としては、YouTubeで自動英字幕をオンにすると雰囲気が分かると思います。

 

精度もかなり高く、流石に固有名詞は拾えませんが、

概ね70%-80%の精度は出てると思います。

 

この英字幕は二通りの使い方があって、まずはリスニングの補助ですね。

「あれ?聞き逃した!」という時にチラ見すると安心します。特にネイティブスピーカーが

使う慣用句やスラングは非ネイティブスピーカーにとっては難しい事が多く重宝します。

最近では Nail down という表現を覚えました。

 

そしてもうひとつが、自分の発音の確認です。自分では喋れてるつもりでも

「あ、この単語ちゃんと認識されてない」という事が分かります。

 

社内ミーティングでは3割くらいですが、面接時には必ずオンにしています。

1点だけ注意ですが、あなたの相槌も拾います。なので、相手が喋ってる事に発話付きで相槌を打つと、hmm とかで流れちゃいます。

 

Google翻訳 または Oxford dictionary 

 

というわけで発音が気になったらこちらのサイトにいきます。

みんな大好き Oxford dictionary は留学時代から English - English を愛用しております。

Webサイトでは発音を教えてくれるので自分がうまく発音できなかった単語、新しく知った単語の発音を確認します。

最近では剪定を意味する pruning という単語の発音を調べました。

 

 

Exponent

 

こちらは本来、Big tech の面接対策のための動画なのですが英語学習にも役に立ちます。

トピックがトピックなので実務で使う英単語や technical term がたくさん出てきますし、

シャドーイングにも適してます。

 

例えば STAR framework を解説している動画では、 Program manager と Engineer が

技術的負債の返却を次回のスプリントに含めるべきか議論している、

みたいな例えが出てきます。

 

英語で仕事をするためのマインド

 

最後は精神論!実は留学時代の経験、前職時代の仕事の経験が実に役に立っています。

 

まずは留学時代に見つけた事から。

 

複雑な文章を喋るよりも、短く複数文を喋る。

これ非常に大切です。前述の通り私のレベルはネイティブスピーカーに程遠いので、

とにかく意図を正確に伝えることを優先します。

 

例えば、「去年のリリースのうち、収益貢献が大きかったのはどれ?」みたいな

事を聞く場合、1文ではなく以下のように話します。

 

- I would like to know what releases contributed revenue growth. <-最初に何を知りたいか説明する

- what items had major impact last year? <- 具体的に答えて欲しい事を言う

 

何を言いたいのかを先に伝えるので、後に続く質問が多少おかしくても「ああ、こいつはこういう事言いたいのね」と伝わります。

 

留学生は複雑な文章を作りたがる。短く話せ。とは留学時代の先生の教えでした。

 

知らない単語を知ってる単語で説明する。

これも、留学生が生き残るには必須のスキルでした。語彙はある日爆発的に増えることは無いので、どうしても当該単語を知らないという事はあります。

 

その時に、単語が分からないから止まるではなく、単語そのものを言い換えたり、

相手に聞いて会話を先に進めます。

 

とにかく意図を正確に伝えるべきなので、究極的には good/bad みたいな単純さで

伝える事もあります。

 

留学時代にこんな事がありました。とにかくヘビースモーカーのAさんを見て、友人Bさんがこんな事を言いました。

 

B「お前さ、あれみたいだな。ほら、家の上についてるやつ。ここら見えるあれ、煙出てるやつ。何ていうんだ?」

A「煙突?(chimney)」

B「そう煙突。ずっと煙出しててさ、お前煙突じゃん」

 

揶揄する言葉を相手に聞いてるのは笑いますが、意図が正確に伝わる事を優先し、難しい単語や言い回しを避けています。

 

似たような話として、私の発音が悪くて「Blocker」が伝わらなかった時「Obstacles」と

言い換えた事があります。

それも発音の問題で伝わらなかったら「Things you needed to solve to achieve that goal」

みたいに言ったと思います。

 

確認する。とにかく確認。そして書く。

自分が喋るときも聞くときも、重要です。議論がそれなりに進んだ時に良く

「let me clarify」「let me double confirm」みたいな言い出しで確認をはさみます。

 

相手のターンが長いときも「要するにこういう事だよね?」という確認もやります。

 

ミーティングは基本的になにかを確認したり、共有したり、決めたりするものなので

その結論部分を書いて確認します。

 

また自分が複雑な説明をせざるを得ないときも結構書きます。

「この事象は3つくらいの要因から起こっていて」みたいな事を説明する時に、

画面上にGoogle docsを映して「1○○、2△△、3XX」みたいに単語を書きながら

説明する事もよくあります。

 

相手に質問を受けた時に、1について?2について?と確認できますし、対策を話す際にも、

1についてはXで対応して、2はY、3はまだ対策考えれてない。みたいに説明できます。

 

素晴らしい同僚を持つ。

 

身も蓋もないですが、非ネイティブスピーカーに寛容な人達というのは確かに存在していて、

彼らは下手な英語も根気よく聞いてくれますし、くだけた表現を避けてくれたりします。

 

Global team で働いた経験のある人はこの傾向が強く、とても助けられています。

 

また、スマートニュースには通翻訳チームが存在していて、Slackで「こういう時英語でなんていうの?」

という問に答えてくれたり、素晴らしい同時通訳を提供してくれます。

 

私も自分の入社面接の時はボスと面接する際に同時通訳を依頼しました。

自分が言ったことが英語にどう通訳されるかを聞くと表現の勉強になりますし、何よりも自分がいった取止めの無い

文章が端的に分かりやすくまとまってたりして感動します。

 

「俺が喋った内容より、同時通訳のほうがわかりやすくまとまってる」というのはスマートニュースで働くひとが

一度は言ったことがあるセリフだと思います。

 

ちなみにこれは個人的な経験からくる感想ですが、英語が不得意な日本人に一番厳しいのは日本人だと思います。

 

というわけで私と英語でした!

 

査定の時期ですし、最近査定を提出したばかりですので

鉄は熱いうちに打てという事で査定について書きます。

 

基本的には査定する側の人に向けた文章です。

メンバーに納得感を持ってもらい、自分も仕事を進めやすくなる査定について書きます。

純粋に技術なので、職種と会社を越えて再現性があります。

 

全部で4パートあります。

  1. 基本的は期初に設定された期待値が一番重要
  2. 期中の1on1はその次に重要
  3. 査定提出前に本人の自己評価とすり合わせる
  4. 最終査定が確定したらFB面談をする

基本的は期初に設定された期待値が一番重要

 

いきなりですが、査定で最も重要なのは実は期初の期待値設定です。

期末に行う査定ですが、実は期初がキーなのです。

 

あなたには、今期、こういう成果を期待したいという設定を期初に行います。

この時に重要な点が2つあります。

 

ひとつは、設定した期待値が被設定者のグレードに比べて高いのか低いのかを

明確にするという事です。

 

よくある査定ハックに「わざと低い目標を設定して高い達成率」を出すというものや、

よくある査定のすれ違いに「目標を達成したのに査定が芳しくなかった」があります。

 

これを、この段階ですり合わせてしまうのです。

「あなたはグレードXだから、これくらいの成果を期待したい」という形で。

 

そして2つ目は関連がありますが、設定した期待値が被設定者のグレードに比べて

高いのか低いのかを本人に伝える事です。

 

人にはモチベーションの波があります。だから、「今期はそんなにがんばれないかも」

という事は当然あるし、我々はそれを許容するべきだと思います。

 

ただし、その時に「ではあなたへの期待値はこう調整します。ただ、本来のグレード

よりも低い期待値なのでそこまで査定は良くなりません」と予め伝えておくべきです。

 

当然ですが、マネージャー側はグレードに比例してどれくらいの成果を期待するべきか

という事を把握しておく必要があります。

 

例外的に、トリッキーなケースがあります。多くのケースでグレードに対して給与レンジ

が設定されていると思いますが、被設定者の給与がそのレンジの上限付近の時です。

 

これもやはり、会社のレギュレーションで許されている範囲で伝えるべきだと思います。

「あなたに設定した期待値はグレードに見合っているが、さらに給与を上げていくために

は昇格が必要な給与レンジになってきている」という形で。

 

期中の1on1はその次に重要

 

次に期中です。はい。

期末に行う査定ですが、次に重要なのは期中のコミュニケーションなのです!

 

期中でやることは、このままだと期待値を越えた成果が出ない場合、

それを当人とすり合わせる事です。

 

査定が出てからではなく、芳しくない時に

「このままだと期中の査定は厳しいですが、改善しませんか?」という

コミュニケーションを取ります。

 

わざわざ「改善しませんか?」と聞くのには理由があります。

改善しない、という選択肢が尊重されるべきだからです。

 

どうしてもチームに合わないからがんばれない。家庭の事情、

本人の健康上の理由。いろんな理由で「今期はこれ以上無理」という

ことがあると思います。

 

我々はそれを尊重するべきです。

 

ただし、その時に「ではあなたへの期待値はこう調整します。ただ、本来のグレード

よりも低い期待値なのでそこまで査定は良くなりません」と予め伝えておくべきです。

(2回目の登場)

 

査定提出前に本人の自己評価とすり合わせる

 

まだ査定が始まらないよ><

 

次に、査定評価を書き終えたら、それを被査定者の自己評価とすり合わせるべきです。

紆余曲折ありますが、私は査定として提出するスコア、査定に付記する文章の全てを

本人に公開しています。

 

ちなみに、昇格推薦をするつもりかどうかも伝えます。

 

良いにせよ悪いにせよ、本人に伝えてない事を査定評価として提出する事はありません。

目的は、本人の今期の成果をMGRと本人でしっかりすり合わせる事です。

 

本人の評価とギャップがあることもありますが、その際には理由をきちんと聞き、

そして伝えます。もちろん評価を改める必要がある場合には改めます。

 

ただ、です。

 

実はこの段階でギャップがあるという事は、期中の1on1がミスってます。

評価者としてその点は反省するべきです。

 

なので、ちゃんとすり合わせをした上で、本人とも1on1の在り方を振り返りましょう。

「1on1を通じてXXXという事を伝えたつもりだったのですが、どう表現するとよりスムーズに

意思疎通できましたかね??」

 

最終査定が確定したらFB面談をする

 

最後に結果が出たらそれを伝えます。

 

この時、1点だけポイントがあって、それは昇格が叶わなかった場合に、

何がもっとできるとあなたが再推薦するつもりかを伝える事です。

 

当然、昇格の承認者に当人のどこの部分が改善したら昇格推薦が

承認される可能性が高いのかを確認しておきます。

 

長くなりましたが、全般的に、

  1. 査定者はちゃんと査定の仕組みを理解しておくこと
  2. 基本的に選択を尊重する。ただし選択を尊重することと査定が良い事は別であることを伝える
  3. 期初、期中、期末にすり合わせる
という事になります。
以上です。長い。

 

今月上旬、かねてより闘病しておりました父が鬼籍に入りました。

 

日頃から故人と暖かな交流をいただきました皆様と、

生前経営していた会社のお取引先の皆様には故人に代わりまして厚く御礼申し上げます。

格別のお引き立てを賜り、ありがとうございました。

 

遺志に従い家族にて密葬を済ませ、故人は荼毘に付されました。

本来であればもっと早く連絡するべきところを皆様には事後の報告になりました事、

お詫び申し上げます。

 

葬儀終了時までは東京の親族以外には誰にも連絡しないというのが願いでしたので、

父の最後の我儘という事でご容赦いただけましたらと、切にお願い申し上げます。

 

享年、72歳でした。

 

父から突然「家族だけで話がしたい」と連絡があったのは今年のGWごろでした。

日頃から軽口の多い父が改まっているのは、悪いことがあった証拠。

様々な可能性を頭にしながら帰った先の実家で告げられたのは、

父が悪い病気にかかっているということでした。

 

病名は、膵臓がん。

肝転移が認められ、本人は言いませんでしたが、どこでどう調べてもステージ4でした。

 

「残念ながら、もう長くないよ」そう笑った父は、健康そのもの。

少し痩せたように見えましたが、大酒飲みらしくメタボな姿で

年不相応に元気な、私のよく知る父でした。

 

実際、医師にも驚かれたようなのです。

 

今倒れてもおかしくない数値が検出されているはずなのに、

平気で食べて歩き回って仕事をしている父を見て、

「でも、小越さん、元気だなぁ」と思わずひとりごちてしまうくらいには。

 

程なくして医師から家族向けの説明も受けました。

 

丁寧ながら、はっきりと事実を告げている医師に質問しながら

ふと違和感があることに気が付きました。

 

話が、ゆるやかに噛み合わない。

聞いてる事にこんなにも分かりやすく、はっきりと答えてくれているのに。

 

理由はすぐに分かりました。

 

家族は良くなる方法、寛解への筋道を聞いているのに対して、

先生は医療従事者として大変厳しい状況である事を説明しているからです。

 

なるべく抗がん剤は強すぎないほうが良い

保険外治療もあるにはあるが今の状態ではおすすめできない

ご本人が過ごしたいように過ごしたほうがストレスがない

 

5年生存率を聞いたときに、返ってきたのは半年生存率の話でした。

 

言外に、今後は闘病でありながら終活でもあることが何度も滲みでて、

その僅かにはみ出したニュアンスがいちいち私の心を逆撫でてきました。

 

科学の徒である医師は、寛解の可能性をゼロと言いません。

ほんの小数点以下のわずかでもそこに確率が存在していれば。

 

しかしながら、統計的には今議題にするべきは余命とQOLであると、

先生はそう伝えていたのです。

 

ご本人が、過ごしたいように過ごしたほうがストレスがない

父が選んだ過ごし方は、抗がん剤治療を平行しながら仕事を続ける事でした。

 

新潟から上京してきて、営業マンとして実績を積んだあとに会社を起こした

父にとって、仕事は人生そのものでした。

 

自分の足で少しずつお取引を増やし、子供達を稼ぎで育て、

業界に長くいたからか組合の理事になり、

そして地域への長年の貢献から天皇陛下の璽が入った賞状と勲章も賜りました。

 

そのお祝いをしたのが、去年です。たったの1年前。

 

それから年が回って、自分の余命が宣言されてなお、「来年施工の大型受注」を

気にもんでいるような状態でした。仕事が、人生そのものだから。

 

しかしながら、抗がん剤治療は体力を使います。

 

病巣を除けば健康で、気丈な父も少しづつ体力が削がれていきました。

 

最初の変化は運転でした。得意だった運転がおぼつかなくなり配達に母を帯同

するようになります。もちろん、運転してもらうために。

 

次に歩行でした。急な階段の上り下りが厳しい。もはや一人では配達にいけません。

 

そして決定打は転倒です。本当になんでも無いところで転んでしまった。

 

ころんだ父は顔に怪我をし、やや久しぶりに会うと情けなさそうに少しはにかみました。

病気に見えないじゃないかと思っていた父はだいぶ痩せ細り、

年相応の深い皺が喉に目立つようになりました。

 

ある時、家族全員で仕事をやめることを説得しました。

本人だって嫌というほど分かっている体の状況を理由に家族が真剣な顔を

しているのを見て、「もう辞めるよ。配達もやらない」そう吐き捨てたのが答えでした。

 

ついに、言ってしまった

 

その時の父の顔に、はっきりそう書いてありました。

ずっと続けてきた仕事です。人生であった仕事です。それをやめると言った時、

本当に寂しそうな顔をしていました。

 

今思えば、父は家族の誰かに「まだやれるよ」と言ってほしかったのかもしれません。

仕事をやめるとはまた、彼にとって身体機能の低下をはっきりと認めるものだったから。

 

病魔が父の体力を奪っていきましたが、

仕事をやめた事はある種の気力を奪ったように思います。

 

そこからあまり歩かなくなっていった父は衰えていき、腹水がたまるようになりました。

そろそろ緩和ケア病棟への入院も考えたほうが良いのではないか。

そう思って入院先が決まった矢先、苦しさを訴えた父は緊急入院をします。

 

そして、様態が急変したのが翌日。

 

意識が途切れる直前まで会話が可能で、看護師さんに「痛みが楽になりました。ありがとう」

と言っていたようです。

 

父が急変した当日は急な予定変更がたくさんあり、

ご協力をいただいた皆様ありがとうございました。

そして、ご迷惑をおかけいたしました。

 

さて

 

私が今このブログを書いているのは、故人を偲ぶためでもありますが、

私の内面に向き合うためでもあります。

 

父を喪った事は私にとってとても悲しい出来事ですが、

同時に私は自分の中にある、ある種の薄情さに気が付きました。

それを吐き出さなければ、区切りがつかないと思ったからです。

 

それはひとつ私は既に自分の家庭を持っていて、

父と違う人生を明確に歩んでいると感じた事です。

私が実家を出て、配偶者と暮らすようになってそろそろ20年近くになります。

子供も3人います。

 

父の病状を聞いた時、家族と相談している時、少しづつ痩せて行く父を見ている時、

私の心には確かに非日常的な哀しみがありました。

 

しかし同時に、私自身の家は相変わらず日常の延長線上にあって、父が闘病している間も

長男はYouTubeを見すぎて怒られ、長女は宿題を邪魔されて次男を怒り、

次男はマイペースにお菓子を食べています。

 

仕事もあるし、会食も行っていました。哀しみは常にうっすらと私の中にありましたが、

心を乱して何も手に付かない。そういうしおらしさが自分の中に無いことを知りました。

 

私と違い、姉と母は父と同居していました。

日常を過ごしている2人のLINEには、手触りのする苦悩が綴られています。

 

小説『ノルウェイの森』で、介護経験者の登場人物が、こんなような事を言う場面があります。

 

「たまにくる親戚が、『かわいそうでかわいそうで胸がいっぱい。食欲もわかない。

あなたは食べられて強いわね』と言ってくる。冗談じゃない。日々苦労して介護しているのは

私。うんこを片付けるのは私なの。同情でうんこが片付くなら百万遍、同情するわよ」

 

自分がまさか、その親戚側か。私の中の薄情さに気づいた時に思いました。

 

父の名誉のために言うとうんこが片付けるのが大変な時期があったわけではありません。

念の為。

 

語弊を恐れずに言うと、ひとつだけ良いことがありました。

それは、父の意識は最後までかなりはっきりとしていたのでいろんな事を話せた事です。

 

どう最期を迎えたいか、どういう葬式が良いか、事業はどうするか。

誰に、どんなタイミングで連絡するべきなのか。

 

そういう事を何度か話して、ひとつづつ片付けて行くことで、自然と最期の日に向けて

一緒に歩んだように感じます。

 

ですから、悲しみの中にあって、父が他界した事自体は自然と受け入れられました。

突然ではなく、そうした準備を進めていくことで、小分けに小分けに別れに向けての

準備が心の中で出来ていったように思います。

 

最後になります。

 

悲しみの中にあって日常を送れる僅かな薄情さを自分に見出したのは事実です。

でも、薄情ながらも消し難い悲しみを感じていたのもまた、事実です。

矛盾していますが、確かにそうだったんです。

 

それをどうしても書いて、整理したかった。これはそういう文章です。

 

そして

 

薄情ながら、末筆にて

故人の冥福を祈ります。

 

合掌

 

*何回も確認したのに、まさか薄情と白状でご変換していた誤字を修正しました。