アフガン情勢好転せず、多国籍軍の死者最多 イラクの二の舞? | インド・パキスタン・南アジア 最新ニュース

アフガン情勢好転せず、多国籍軍の死者最多 イラクの二の舞?

アフガニスタンに増派された米軍部隊が本格的な軍事作戦を開始してから1カ月が経過した。人口集中地域でのイスラム原理主義勢力タリバン排除に力点を置く 米軍に対し、タリバン側は仕掛け爆弾などを用いて反撃。7月の米軍など多国籍軍の死者数は74人(米兵43人)と2001年の開戦以来最悪となった。一層 の増派を求める声が高まる中、オバマ米政権の対応によっては「イラクの二の舞」に陥りかねない。

 増派作戦を遂行するためアフガン駐留米軍の司令官に就任したマクリスタル陸軍大将は、8月14日をめどに、ゲーツ国防長官と北大西洋条約機構 (NATO)事務総長に今後のアフガン戦略に関する報告を提出する。その中で、偵察活動などの情報収集や仕掛け爆弾の処理、アフガン治安部隊の訓練のた め、米軍部隊の一層の増派と装備拡充、アフガン治安部隊の増強を求める見通しだ。

 マクリスタル司令官は米紙ロサンゼルス・タイムズのインタビューで、海兵隊を投入した南部へルマンド州での戦いが新戦略のカギを握ると指摘。アフガン治 安部隊と警官の訓練を急ぐ必要性を強調した。米政府はアフガン軍を13万4000人、警官を8万2000人にすることを目指している。AP通信によると、 同司令官はこれを約40万人まで倍増することを求める方針という。

 米軍としては、イラクでも実施した「クリア・ホールド・ビルド(制圧・維持)」作戦を実行することで、治安を安定化させたい考えだ。地元有力者は、米軍 が作戦終了後、同州から去ってしまえば、再びタリバンが戻ってくるのではと懸念しているというが、同司令官は、地元政府が再建されるまで米軍は駐留を続け ると明言した。

 アフガン駐留米軍の現有兵力は約5万7000人。今年末までに1万1000人が到着し、6万8000人になる。ただ、これでもイラクに増派された米軍の 半分にすぎない。ゲーツ国防長官は同司令官が増派を望むならば応じる用意があるとの見解を示しつつも、「あくまで小規模」と述べている。

 ブッシュ前政権はイラク部隊への権限移行を急ぎ、一時、治安悪化を招いた。専門家からは、オバマ政権が一層の増派に消極的な姿勢を示し続け、アフガン部隊への早期権限移譲を図った場合、「イラクの二の舞になりかねない」との声も出ている。