G8の限界 パキスタン・アフガン問題 | インド・パキスタン・南アジア 最新ニュース

G8の限界 パキスタン・アフガン問題

パキスタン・アフガニスタンに関する問題を先月末、話し合った主要8カ国(G8)外相会合について「新しい話は何もなかった」との批判がくすぶって いる。イタリア北部トリエステにG8以外に計46カ国・機関を集めたが、具体的な進展はなく「G8の限界」さえささやかれている。

 G8外相会合の議長国イタリアは、「最も具体的な指摘ができる問題」として、パキスタン・アフガン問題で会合を開いた。しかし、議長声明は(1) 警察機構の強化(2)司法の確立(3)麻薬対策(4)武装解除(5)国軍兵士の訓練・育成の必要性--と、今年3月に開かれたアフガン安定化国際会議と似たような内容で、「新味はない」(日本外務省の担当者)。

 強いて新しい点を挙げれば、「汚職のひどいカルザイ政権への圧力」「アフガンとパキスタンを一地域として打ち出した点」(同)という。ブッシュ政 権時代のような「アフガンのテロリストが世界を攻撃する」という扇情的な危機感がうせ、「地域問題」としてとらえ直している。だが、これもオバマ米大統領 のアフガン新包括戦略(3月)の踏襲で、アフガン問題は米国に任せておけば良いという欧州諸国の意向が垣間見える。

 G8声明についてアフガン内務省高官は「課題、解決への努力が網羅され優等生的」としながらも「この8年間、G8は地域の問題解決に役立っておら ず、逆に治安の悪化や文化、生活の破壊をもたらした。多くは期待できない」と打ち明ける。声明で約200万人の国内避難民への支援を約束されたパキスタン は満足感を示したが、既に各国が表明した内容のため、地元メディアは淡々と報じた。

 政府と武装勢力の対話を訴えるパキスタン連立与党の「ジャミアト・ウレマイ・イスラム党」のムフティ幹事長は「G8は米国の方針に追従するだけ。G8が結束することで解決に寄与できる課題は新興国の興隆や多極化で減っており、限界を感じる」と話している。