9話『交換条件』

 

 

「無駄な・・・こと・・・?」

 

「うん!そう思わない?

せっかく担当さんが付いたなら

早く自分の漫画描かなきゃ。

泊まり込みでアシスタントなんかしてる場合じゃないでしょ」

 

「!・・・あっ

環 それは」

 

「俺なんか間違ったこと言ってる?

 

恵はもう次のステージに行くんだから

これからは付き合う相手を選ばないと」

 

「・・・何それ・・・

どういう意味ー・・・」

 

「え?だってそうでしょ。

 

アシスタントなんて漫画家になれない無能な人間ってことでしょ?

 

そんな奴等とズルズル付き合ってたら

恵の才能も同レベルまで落ちちゃうよ?」

 

 

あまりの環の言葉に恵を手に持っていた本を落とし環の腕を掴みました。

 

 

「私の大切な人たちを・・・・・・

バカにしないで・・・・・・っ!

 

 

 

みんなプライド持って仕事してるのに

無能な人間・・・って何!?

 

そんな風にずっと私のことも見下してたの!?」

 

 

環は恵の手を払い落とした単行本を拾おうとしますが、恵は慌てて制しました。

 

 

「・・・別に恵のことはバカにしてないけど・・・

やっぱり俺は下請け仕事で満足する奴はダセーと思うし

・・・そこで必死に才能の無駄遣いしてる恵も見てて正直イライラする時もあったし・・・・・・

 

だから俺は・・・

敢えてハッパかけてたんだよ・・・

 

 

恵は一人じゃ何も変えられないから」

 

 

【goo辞書】

Q.発破かけるとは。

A.強い言葉で激励したり、気合を入れたりする。

 

 

 

環のセリフあまりにムカついたから言わせて下さい。

人を見下す発言のどこが激励ー???あーん?(ちょっとテニプリの跡部さん風)

あ・れ・の・ど・こ・が?

 

嘘だったってこと?

でも、言っていい事と悪い事があるよね??

ていうか、本当に思ってなきゃそこまでスラスラあんな酷い言葉出ないよね?

無能と思ってるのは素だよね。ダセーって言ってるし。発破という言葉で酷いこと言えるオマエの方がカッコ悪いわ。

 

 

(そうか それが環の本音だったんだ・・・

 

アレ?私これ怒るところだよね。

なんでだろう 頭がうまくまわらない。

 

 

早く何か言わないと一方的に決められて

アシスタントやめることになっちゃう

 

でも目の前が真っ白で

どうしたらいいのかわからない)

 

 

「そもそもさぁ・・・・・・

恵の居場所はここにちゃんとあるんだから

家で好きなだけ漫画描けるって

いちばん幸せな環境でしょ?」

 

 

(居場所?この家が

 

いちばん幸せな環境ー?

 

 

そうなのかな。私ずっと環の顔色ばかり見てた。

 

 

波風立てないようにヘラヘラ笑いながら

気持ちを押し殺した

 

そうした方が好かれると思って

もう誰にも嫌われたくなくて)

 

 

恵は小室さんに“自分のこと好きになってほしい”と言われたことを思い出します。

 

 

(でも私はそんな自分が嫌いー 

 

 

本当は何も気にしないで絵を描く

ありのままの私が好き

 

 

雲水先生や小室さん達と笑ってる自由な私が好き

 

 

そんな自分でいるために私は今

何ができる?)

 

「ほら恵っ!お茶淹れたからさぁ

こっちで飲んで少し落ち着きな?」

 

 

(環の言葉にこのまま流されて話を

うやむらにしちゃダメだ

 

 

臆病だった自分と

今ここでさよならするんだー)

 

 

「・・・環

さっき言った「無能な人間」って言葉だけど

やっぱりちゃんと謝ってほしい」

 

「・・・は?

別に俺は本当のことを言っただけ・・・」

 

「それは環が勝手に作った偏見だよ」

 

 

あれやっぱり本音だったんじゃねぇか!本当のことだと思って言ってたんなら相当ヤベー奴じゃん、コイツ。

その格好つけた髪型、今すぐ丸刈りにしてやろーか?💢

 

 

「アシスタントは専門職だから

誰にでもできる仕事じゃないし

 

漫画家になるのだってアシスタント

続けながら目指すのが一般的だし

 

絵から離れて実績もない私なんかは

周りに色々と教えてくれる人がいたほうが

家で一人で描くよりも早くデビューできる時も

あるんだよ。

 

そういう話 環はあまり知らないよね?」

 

 

「何 急にどうしたんだよ・・・恵っ」

 

「・・・何って 環に怒ってるんだよ。

 

漫画を応援してくれるのは嬉しいけど

だったら私の気持ちもしてほしい。

 

 

ーそれで」

 

 

「わかった

さっきのことは謝るからっ

 

 

じゃ・・・・・・

恵も俺の気持ちを尊重しろよっ!」

 

 

何で命令形なんだコイツ・・・

 

 

「雲水とかいう奴のところに行ってから

何かと言い争いが増えたし

 

帰宅もどんどん遅くなるしっ

 

パートナーとして

フツーに心配しちゃ駄目なワケ!?

 

これから一緒の時間も減ってって・・・・・・

 

 

恵が離れていくみたいで不安なんだよ・・・・・・」

 

環・・・それは」

 

「じゃあ わかった。

こうしよう・・・

 

・・・今年中にー

あと半年でデビューしてよ。

 

そしたらもうアシスタントも

行かないでほしい。

 

その約束を守ってくれるなら

俺は今後恵の行動に口出ししない。

 

そこを互いの妥協点にしようよ」

 

 

一方その頃、恵の担当に武井さんは上司と恵のことについて話していました。

 

「・・・読み切り!?」

 

「あったりまえだろ〜

急に連載って周り見えなさスギ」

 

「いやだって我聞恵が描くんすよ!?」

 

「“今”の我聞恵がでしょ

 

漫画はこの1件しか描いてない

15年のブランクあり

 

まずは読み切りで

体力作りから始めないと

 

彼女の才能は俺の方がよく知ってんだよ。

 

 

だから焦って潰すようなこと

すんなって言ってんの

 

あと秋に新しい漫画賞立ち上げるから」

 

「え!?」

 

「まずはここにオリジナルの読み切り1本

描いて出してね

 

その結果を見て彼女の実力が

どれだけかをハッキリさせる」

 

「それはすなわち・・・

俺の実力がどれだけかもハッキリさせる

・・・ってことですか?」

 

「あははっ

別に武井が実力ないのは知ってるし!」

 

「・・・じゃあ見ててくださいよ・・・

 

 

・・・未熟な俺でも

最高の読み切りひっさげて

我聞恵をデビューさせてみせますよ・・・!」

 

 

場面は再び、恵と環に戻ります。

 

 

「・・・わかったよ・・・・・・

 

今年中にデビューする。

 

そしたら

もう雲水先生のスタジオには出入りしない」

 


 

 

環、マジで全ての漫画家を敵に回す奴ですね。自己責任論者に似たものを感じます。

恵への束縛と支配欲が透けて見えるんだよな・・・

 

 

えっ、まさか自分は恵にふさわしい人間で最高の人間ってこと???

 

何でこんな奴と付き合ってんの?

別れようよ!!

 

あんな約束して大丈夫かなぁ、恵・・・汗

 

 

あとこの作品、

恵の母と環以外は大体みんな良い人ですよね。武井さんはちょっと熱くなりすぎたり言い方がキツくなるけど、良い人なんだなって思います。

環と違って嫌悪感を感じなかったもん。