なぜ妊婦さんはすぐに腰が痛くなってしまうのでしょうか?

この図のように、普通の人と妊婦さんでは腰にかかってくる負担が倍以上違うんです!
例えば、私が4.5jkgの子供を抱っこしたとすると29.5kgの負担が腰にかかってきます。それが、妊婦さんが抱っこした時には、なんと68kgもの負担がかかってくるのです。
実際のお子さんは、もっと重さがありますよね?
自分の身体の使い方を上手にしていくことで、10ヶ月の妊娠期間中にトラブルがないように、お腹が張りすぎないように、体調を壊さないように過ごして過ごしていただきたいと思います。
●経産婦さんの体の動かし方
今回は経産婦さんが上のお子さんのお世話をしながら、自分自身の子宮(お腹の子も!)を守る、身体の使い方を説明します。
上のお子さんを抱っこする時に、お腹が張らないようにする工夫は絶対に必要です。
お腹を張らせない、そして腰を痛めない、トラブルがないように10ヶ月間健康に過ごしましょう。そのためのコツです!
「一回だったら無理してもいいや!」って思いやってしまうと、必ず後から「イタタタ・・・」となり、痛みが長引いて苦痛が続きますので、とにかく正しい丁寧な動きを心がけてください。
◾️「ママ抱っこ!」の時の注意点
まず、とっとも上手な抱っこの実例を紹介します。
お子さんに自分の膝に乗って立ってもらい、自分より子供の重心を高くしている状態です。この状態で子供を抱えてもらうと、お腹や腰への負担がなくなります。
お子さんの位置(重心)が、高ければ高いほど安定します。


そしてもうひとつのポイントは、正座からの立ち上がりのおかげで、真ん中の軸がブレずに、尿漏れなどを起こさない身体づくりができます。
みなさんもやってみましょう!
①すこし高いところに登らせる
「ママ抱っこして〜」って上の子に呼ばれた時、このように自分の腰をかがめてしゃがんでだっこしていませんか?

一日一回なら良いですけど、何回もとなると腰にものすごく負担がかかってきます。
こんな時は、「抱っこの時は必ず少し高いところへ登る」とママとお子さんのお約束を作ると良いです。もちろん、安全な場所に立たせてくださいね。

少し高いところへ登ってもらうことで、ママとお子さんとの距離が近くなって腰の負担もお腹の張りも少し軽減されます。
②膝立ちでスキンシップ
一日何度も「ママ抱っこしてぇ!」て言われますよね・・・何度も立って抱っこしているとやはり腰への負担は大きくなってきます。
そんな時は、やはり少し高いところへ登ってもらって、ママは膝立ちになり抱っこをしてあげましょう。

こんな感じでスキンシップをはかるのもとっても良いと思います。
③おんぶの練習
お子さんに、抱っこばかりではなく「おんぶ」をする習慣をつけることも大切です。
やはり、少し高いところに登ってもらい、自分から肩にしがみついてもらってから立ち上がります。


寝かしつける時に抱っこだけだったママは、おんぶでも寝かしつける練習をしましょう。
おんぶは、ママのお腹が痛くならないので、切迫早産などの危険性を少しでも回避していきましょう。
【注意】妊娠中の抱っこ紐・おんぶ紐について
妊娠中に使う抱っこ紐、おんぶ紐は腰ベルトがあるとお腹を圧迫してしまいます。
昔ながらの腰ベルトのないものをお勧めします。

④お風呂での抱っこ移動
お風呂場でお子さんを抱き上げるシーンは毎日ありますよね。これもけっこうママのお悩みです。
普段、写真のようにバスタブにかがむようにして、お子さんを抱っこ移動させていませんか?

これはお子さんとの距離がすごく遠くなってしまい、お腹がとても張りやすくなる体勢になんです。この時は、バスタブを跨いだ態勢をとりお子さんとの距離を縮めてから抱き上げると良いと思います。こうすることで、腰の負担がずいぶんと軽減されます。

◼️片側抱っこの時の注意点と簡単ボディケア体操
妊婦さんだと、上のお子さんを抱っこする時に大きくなったお腹がじゃまになってしまうので、どうしても片側抱っこになってしまいがちです。

しかし、この体勢は腰も痛くなるし、腹の下の方が狭くなってしまい逆子の原因になったりましす。また、産道のバランスが崩れて斜めになっていて、出産の時に大変になったりもします。
この抱っこの仕方はなるべく短時間にしてください。
そして用事が終わって、お子さんを下ろしたらこの形がクセになると良くないので、ちょっと修正の体操をしましょう。
《簡単ボディケア体操》
・お子さんをのせている側が中途半端に緊張したままなので、その状態で固まらないために更に腰を伸ばして柔軟性を取り戻します。
・お子さんを乗せていた方の腰をぐーっと突き出しきります。反対の手で腰を押しながら、気持ちよくなるように伸ばしきります。

・伸ばし切ったらそっと戻します。これを最低2回繰り返してください。夜寝る前までにこの体操をしてリセットすると骨盤がかたまらず、腰痛の予防になります。
◾️食卓での注意点
ごはんの時間。ママはお子さんに食べさせたりとか、いろいろなお手伝いをすると思います。
その時のママの体勢の注意点です。
写真のように、下半身に対して上半身だけ捻ってお世話していませんか?

この体勢が続くと背中が張ってしまったり、腰痛の原因になったり、お腹が張ってしまうことにもつながります。
少し面倒でも、自分の「お股、おへそ、お口」が一直線になるように、体ごとお子さんの方に向いて、お子さんのお手伝いをしてください。

◾️お片付けの時の注意点
床に落ちた食べこぼしや散らかったおもちゃを片付ける時にも注意しましょう。
こんな格好で、片付けしてませんか?
この動作はとても腰痛になりやすいですから注意です。

かがむ時は、お腹の縦を縮こめないことが大切です。それからゆっくりしゃがみましょう。


それから、床のものを片付けるようにしてください。しゃがんでいる時に、片膝をついてもOKです。

◾️椅子に座らせる時の注意点
お子さんを椅子に座らせ、テーブルにセッティングする時に、このようにしていませんか?

この体勢も、自分の身体からお子さんが遠くに離れてしまい、とても重くなってしまいます。
これはやめてくださいね。
次からは、お子さんを後ろから抱っこして、後ろから椅子に座らせてください。


この方法だと、かなりママの身体の負担が少なくなります。
少しの移動でしたら、正面から抱っこするのではなく、このように背中側から抱っこして移動する・・・ママの腰とお腹を守ってくれる方法です。ぜひやってみてください。

◾️自転車に乗せる時のコツ
上のお子さんを自転車によっこいしょって、後ろや前の自転車用チャイルドシート乗せることありますよね。これはかなりの重労働だと思います。


この時にもやはり、正面からの抱っこ、自分の身体からお子さんが遠いのはとても負担ですので、後ろ抱っこにしましょう。これは基本です。
そして可能なら(チャイルドシートの形状などで不可能な場合もあります)、後ろから乗せてあげます。

この時には、できるだけお子さんと自分の身体をくっつけて、ママの体も一緒に移動させるようにします。そうすることで、かなり腰の負担が減り、お腹も張らないと思いますので、出来る限りの工夫をしてみてください。
◼️ベビーカーの注意点
①ベビーカーのセッティング
ベビーカーにお子さんを乗せてお出かけする時。ベビーカーのセッティングって意外と前屈みになって、お腹が張りやすくなったり、腰が痛くなったりしてしまいます。
ちょっとした工夫でそれらを予防できるので、参考にしてください。
ママがお子さんを抱き上げて、ベビーカーに乗せる動作は一回でも減らした方が良いので、ひとりでベビーカーに乗れる子ならば、ママが抱き上げて乗せる必要はありません。
自分でベビーカーに乗ってもらいましょう。
そこからのセッティングするときに、ベビーカーの正面からですと、腰が痛くなってしまいます。我慢してセッティングしているママもいると思います。
さらに、少しでもベビーカーから離れたところから作業すると、より痛みが増します。

ベビーカーをセッティングするときは、なるべく正面からではなく、ベビーカーの横から作業するようにします。
ベビーカーの真横に立ち、少し膝(腰)を落とし、曲げた膝がベビーカーに触れたままの状態で作業するのが一番ラクかと思います。

②ベビーカーから降ろす時
ベビーカーでお子さんがぐっすり寝ちゃうことってよくあると思います。
寝ちゃった子をベビーカーから抱っこして、移動させる・・・なるべくやって欲しくはないですが、こればかりは仕方ありません。
その時も、正面から抱っこしようとするとお腹に力が入ってしまいます。

ですから、やはりベビーカーの横に立ち、子供にしっかり身体をくっつけて抱っこしてください。
それから移動しましょう。

③ベビーカー押し方
普段ベビーカーを押す時、どうしてますか? おそらく、下の写真のようになっているのではにないでしょうか?

腕が伸びたままベビーカーを押していませんか?
実は、腕が伸びているだけで肩や背中が緊張したままになっています。これが積もり積もって腰痛やお腹の張りの原因になってしまいます。
ベビーカーを押すときは、肘を曲げて少し引く感じにします。そして手の位置、腰の位置を固定し、そのまま押していくようにします。

ベビーカーを引いて、脇を締めて歩いていく感じです。

◼️まとめ
経産婦さんのケアをしていて一番ご相談が多いのが、「上のお子さんの抱っこの時に、どうやったら負担がなくできるか?」っていうことです。
ですので、今回はさまざまなシーンでの上のお子さんとの関わり方をご説明しました。
また、経産婦さんではなく、実は保母(保育士)さんにも腰痛や逆子が多いのは、腰の片側にお子さんを乗せるクセがあるからです。こちらのご職業の方も気をつけて生活なさってください。

この記事の内容は、YouTubeで番組を公開しておりますので、ぜひご覧になってください。
YouTube 経産婦の身体の動かし方!