How to fly・55 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















外見は、筋肉が多少増えたかな?と思うくらいで、以前と比べてもそれほど変わったようには見えない

しかし、内面が大きく変わった

彼は彼のままであるのに、圧倒されるほどに強く美しくなっている

そんな彼が、懸命に、素直に、心の内をしっかりと言葉にしている姿を目の前にして

俺は胸を張って、素直に懸命に立ち向かえているだろうか

知らされていなかったからと言って意地を張って

ピエロが悔しくて突っ撥ねて

それで何かが解決しただろうか



「分かったよ」

「いやだ!」

「嫌なのも分かった、お前なりに思うところがあるのも分かった、だから話も聞く、けど、その前に言っておきたいことがある」

「な、なにっ?」



言いたいことが分からないなんて狡い言い訳をしている場合ではない



「お前が居なくなってから俺も大変だったんだぞ、すごくがんばったんだぞ」

「あっ…うん、それは…」



彼の頑張りには敬服するしかないし、自分の気持ちだって誤魔化せない



「最後の夜になったあの時、俺が手を離したから飛んでっちゃったんじゃないかって、あのままずっと手を離さなければよかったんじゃないかって、何度も何度も考えた」

「…うん」



真正面から、真っ裸で、挑むしかない



「何も言わずに居なくなったのだって、嫌われたのかな、もう会いたくないってことなのかなって思って、すっごく辛かった」

「ごめ…」

「お前が居なくなった代わりに絵を描けって言われて、必死になって描いてもマスターにボロクソに言われ続けて、大変って一言じゃ表せないほど大変だったんだからなっ!」



ここを離れてからの時間をのほほんと過ごしていたのではないことは、今夜のステージを見れば分かる

出て行くことも、帰って来ることも、大きな決意を持って行われたはずだ

その行動力と努力に比べたら、俺の語る大変さなど、屁のようなものだと思う

でも、それでも、伝えるんだ



「お前が突然居なくなったら腹立たしく思う奴も、後悔する奴も、寂しく感じる奴も悲しく感じる奴も居て、俺はその全部だったけど、そうやってお前と繋がってた奴を全部切って全部無視して、想いも全部捨てて行ったってことなんだぞっ

決意が揺らぐとか揺らがないとかの前にっ ただいまとかおかえりとかの前にっ そこんとこほんとに考えたのか?ちゃんと分かってるって言えんのかっ?!」



言いたいこと、言いたかったことを全て隠さずに言えば、我儘になる、押し付けがましくなる

責めているようにも聞こえたかもしれない



「…分かって…なかったです…ごめ…なさ…」



恋愛対象やそれに伴う性癖について、拒絶する人も受け入れない環境もたくさん知っている彼だから

必死になればなるほどそれらを切り離そうとする心理が全く理解出来ないのではない



「人の心を読めって言ってんじゃないよ、お前が何も言わずに離れたらそれに影響される人がたくさん居るってことなんだよ」



だけど、今も、これからも、この店を、この俺を、そんな奴らや環境と同じ括りにされるのは腹が立つ



「今は?今も全く分からない?」

「今は…ごめんねとありがとうを言わなくちゃいけない人がいっぱい居るってことを、ちゃんと分かりたいって思ってる」

「うん、いや、まぁ、感謝とかはお前なりにちゃんと伝えてるだろうからいいんだけど、その…あれだよ、とりあえず俺にはさ、すっごく傷付いた俺には、お前が選んだ行動と気持ちをゆっくりやさしく説明したほうがいいと思うんだけど…どう?そう思わない?」

「…ん、ごめなさ…」



あーあ、情けない

素直な気持ちというものはやはり強欲で独占欲が剥き出しで、とても正気では聞いていられない



「ふぅーー…」



恥ずかしさと情けなさを息に乗せて大きく吐く

そして、しっかりと彼と向き合う

彼の輪郭、彼の色、彼の雰囲気

うん、ちゃんと見えている

多分、もう大丈夫



「こっちにはいつ帰って来たの?」

「…五日前、その時に面接してもらえて」



なんでそこで俺に連絡しねーんだよぉ!まずは俺だろーがよぉ!

という言葉は、今までの流れを振り出しに戻すので、紳士的に控える



「壁の絵は?ゆっくり見れた?」

「…見た」


「どうだった?」


「いつかあなたが描いた絵を見たいって思ってから、見た時すごく嬉しかった、俺が…いっぱいで…」

「愛も、いっぱいだっただろ?」

「…え?」

「お前への愛をいっぱい込めて描いたんだけど、感じなかった?」

「…うん、うん、いっぱいだった、愛がいっぱいで、愛が溢れてて、すごくびっくりした」



馬鹿の結晶で駄作だと思ったけど、ちゃんと伝わっていたらしい

よかった

描いてよかった!



「それなのに俺、なんで…なんで何も言わずに離れたりしちゃったんだろ…」



また泣くことを無理に我慢しているらしい



「俺は、お前の、恋人なのか?」



彼の手を握って、聞く



「俺はっ あなたのっ 恋人になりたいです!」



嬉しい

今度こそ心の底から嬉しいと思った



「うん、そっか」



手を離す

不安そうに上げた顔を肩に押し付けて、抱き締める

ステージで姿を見たときから、ずっと、ずっと、こうしたかった



「お互いに恋する相手ってことでいいんだな?」

「…うんっ…うんっ」



彼は、顔を押し付けたままで、何度も頷いていた

















つづく