後夜祭・1 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















「一緒に飛ぼう!」



そう言われた時、すごく嬉しくて、本当に飛べると思った




明け方近くまでのんびり飲んで、ゆっくり話して、あの人の背中を見送った

戸締まりをして部屋に戻ると、幸せな疲労は眠気を誘った

だけど、眠れなかった

本当にそれでいいのか?このままの自分で本当にいいのか?という自問が押し寄せる

そして、違う、駄目だ、と思った

思った瞬間に腹を決めた

部屋を片付け、荷物をまとめ、出来る限りの掃除をして、昼過ぎに出勤してきたマスターへ契約終了を願い出た





「やっぱ外は暑いな~」



厳しいことで有名なスタジオが入っているビル

シンプルだけど、威圧的がある



「怒ってるかなぁ…嫌われたらどうしよ…」



すごく迷ったけど、あの人には何も言わずに店を離れた

もし言ったら、引き留めてくれたと思う

そして、引き留められたら、気持ちが揺らぐことも分かっていた



「うわっ 暑っ」



ビルのエレベーターも蒸し暑くて、汗が額から流れてくる

ぽーん

目的階に到着した合図

不安はある、迷いも残ってる

だけど、変わると決めたんだ



「よし、行くぞっ」



予約した時間ぴったりにスタジオへ入った





逃げなければ生きていけないと思った

ここも駄目、あそこも駄目、そんな日々を繰り返しているうちに、逃げることが日常になった

慣れとは恐ろしいもので、逃げている意識は薄れ、逃げた目的も、理由も、次第に忘れていった



安全な地下に籠り「逃げている自分」をすっかり忘れていた頃


あの人がお店に来た

ステージのすぐ側に椅子を寄せたあの人を見下ろす格好になった時、目が合ったのか、合わなかったのか、そんなことがとても気になった

そして、俺の客として目の前に現れた



どんな風に振る舞えばいいのか分からず、なぜか興味の無い振りをしてしまった

強気に押されて、きゅんとした直後の残念な セ ッ ク ス 未 遂 に、なぜか男同士の為の講義をしていた

それがとても楽しくて、また会えるといいなと思った

商売ではなく会えるといいな

ご縁があるといいな

そんなことを思う時点で、俺は、あの人を、好きになっていた

そして、あの人とたくさんの夜を過ごすうちに、大切なことを少しずつ思い出していった





「大会とか有名なイベントとか、そういうのに出た経験は?」

「ないです」

「ここに来る前に師事していた方は?」

「居ません、独学です」

「なぜここに?」

「パフォーマーとして、人間として、大きく成長したいからです」

「そう、そしたらまずは見せてもらおうかな、フリーで60秒、音楽要る?」

「いいえ」

「じゃあ1分後スタートで」

「はいっ」





きっかけは親友を好きになったことだった

世間知らずで、自分が思うよりも純粋であった俺は、想いを告げた

答えを貰う前に「お前ってそーゆーアレなの?」と親友が尋ねた

そーゆーアレがどういうアレなのか、この時はまだ理解していなかった

だけど、ドン引きとはまさしくこれのことかと、目の前の親友を見て思った



俺はそーゆーアレだったのか



その後、その友達は最上級の大人の対応をしてくれた

言い触らすこともなく、避けることもせず、深い一線をきっちりと引いて、友達っぽく振る舞ってくれた

今でも有り難いと思う


だけど、長期間の生殺しは己の存在意義に疑問を抱かせた



自覚したそーゆーアレは想像以上に手強いものだった

そーゆーアレ的な意味で、友を、同性を好きになってしまう

努力して目を背けたこともある

しかし、そーゆーアレが消えることはなかった



次第に友達という存在から距離を置いた

だって、置かざるを得ない

好きになってみろ、ドン引きだ、ドン引きの二の舞だ

















つづく