※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
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髪を撫でるこの手が優しくて
もっとそうしてて欲しくて
重い瞼に 抵 抗 した
「…どうしたの?」
「明日…」
「手術だね」
「ん…」
「眠ってる間に終わるから」
それで、そのまま目覚めないってか
「会えてよかった
…好きだよ」
好き
好きだ
好きだよ
大好き…
眠りに落ちるまで繰り返し言われた言葉は
呪文のような子守唄に変わり
脳へ、刻まれた
「おめでとうございます」
「…はぁ」
「傷もほんの1センチ程度ですので、すぐに見えなくなりますよ」
「…へぇ」
「こちらの都合で長引いてしまった入院費に関しましては、きちんと手続きをした後に返金させていただきますので」
「…どうも」
「次の検診の際も保険証をご持参ください」
「…はい」
「お大事になさってください」
退院した
手術の翌日
実にあっさりと
10
ここと駅を往復してるバスを、一人で待つ
ぴょんと跳ねてみた
…どこも、痛くない
覚悟を決めてしっかり聞いた術後の説明は拍子抜けもいいとこで
不審なところも不明なところもなく
世間でよく聞く内臓の炎症だった
「なんなの…?」
医者も、看護師も、普通に笑ってた
俺の人生の終わりはどこへ消えたんだ…?
見送ってくれると思っていた撫で肩は、最後まで姿を現さなかった
検診までの一週間
頭にはあいつが居た
身体にも…あいつが居た
「ン…ァン…ン…」
あいつの 手 、あいつの 舌
素 肌 に 触 れ る 指 と 髪
一人で ス ル のに 全 裸 とか 恥 ず か し い にも程がある
でも、あいつが 脱 が す から
「ンッ…ねぇ…もっと…」
後ろは…
あいつじゃないと届かねぇ
「はい、順調です
傷も綺麗ですね」
「…ありがとうございました」
違和感のない日常だった
恐らく、本当に完治したんだろう
「あの…」
「はい」
「研修医の名前って…教えてもらえますか?」
帰り際、受付で聞いた
つづく