然るべきモヤモヤ~関西リビングウィル研究会講演~ | にのさかクリニック公式ブログ

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福岡市早良区で外来・在宅診療を行っているクリニックです

にのさかクリニック公式ブログ、略して 「にのログ」

院長二ノ坂 建史です。

 

 

有難いご縁から、『関西リビングウィル研究会』 で講演する機会を頂きました。

なんとなんと・・・光栄なことで・・・恐縮です。

 

医療者だけの会ではなく、市民公開の会です。

何をどう伝えようか・・・?

そう思いながら、迷いながら、準備を進めてきました。

命の終わりを意識しながら過ごす人たちとの関わりの中で感じたこと、

学んできたこと、良い思い出や、苦い思い出もありました。

 

うぅ~ん、まとまらない!

どうしよう?

 

・・・結局、あえて 「まとめない」!

僕が感じたモヤモヤを、そのまま投げかけることにしました。

 

 

目次はこれ。

デカデカと書いた通り、「質疑応答・討論がメインです!」

と宣言してから始まりました。

 

在宅医療って、看取りにフォーカスされがちだけど、

看取りそのものがメインじゃないんだよね。

看取りの場所って、在宅が絶対良いわけじゃないんだよね。

病院での看取りだって十分な選択肢だよね。

病院には行かない、救急車は呼ばないで、入院はしたくない、って言うけど、

必ずしも在宅しか選択肢がないわけじゃないんだよね。

必要な時は病院と適切に連携する方が良いよね。

真実 (悪い知らせ) を伝えるのが絶対正義というわけではなくて、

「知る権利」 の一方で、「知らないでいる権利」 もあるんだよね。

家族の 「知らせたくない意思」 も、なんだかんだで無視できないよね。

在宅か病院か、病院に行くか行かないか、

救急車を呼ぶか呼ばないか、真実を言うか言わないか、

本人の権利か家族の意思か、結局どれも二元論では語れないよね。

 

そんな、日々のつぶやきのような僕の気持ちを、そのまま投げかけました。

モヤモヤをどうにかまとめようとするのではなく、

モヤモヤをそのまま話そうと思ったら、かえってスッキリしました。

 

予告の通り、後半は質疑・討論。

色々な思いが飛び交いました。

 

 

 

さて、あるお知り合いの方が、SNSにこんな感想を書いてくれました。

ご主人が在宅医療を受けながら療養しています。

(ご本人より掲載の許可を頂いています)

 

 

私にとって在宅は 「看取るために自宅に帰った」 ところから始まったので、

まずそこの認識の違いを理解。

もちろん理想は自宅で穏やかな看取りなのですが・・・

ホスピス (病院) に関しても最初は入ったら終わりと思っていたのですが、

今日のお話の中で、必要に応じて入院もありだということを再認識しました。

 

救急車に関しては、今でも少しは遠慮してしまいますが、

何かあったら在宅医の先生に連絡し、

先生が必要と判断されたなら呼ぶのもありという考えに変わってきています。

もちろん、必要な処置だけして帰って来るという前提で・・・

 

お話の例に出てきた各ご家庭のお話・・・

それぞれのご家庭で悩みは色々なのだけど、

どれにも当てはまる事が沢山あって、

まさに現在進行中の悩みを抱える我が家はとても考えさせられました。

 

・・・・・(中略)

夫も毎日死にたいと言いますが、その一方で仕事の復帰を諦めておらず、

生きたい場所ややりたい事をたくさん言うので、

私は夫に余命の話をしたことがありません。

嘘をつき続けています。

もうそういう話をしないといけないでしょうか・・・

希望を失った夫のリビングウィルはどうなるでしょうか・・・

ボソッと横で

「今飲んでる薬なんかも家族のために飲んでる。本当はそこまでして長生きしたくない」

と言っていました・・・

もう自分の言ったことは忘れているけど、それが本心なのかなぁと思いました。

 

私は夫の尊厳を守れていないのかもしれない。

色々考えすぎて最後は我慢できずに涙が出てしまいましたが、

改めて考える良い機会となりました。

夫と2人で参加できて良かったです。

 

 

ありがたいご感想でした。

これも “然るべきモヤモヤ” なのだと思います。

明快な答えを提供することはできませんが、

聴いてくれた方にとって、考える機会になれば幸いです。