妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
「そうか・・・そう・・・か」
ポツリと呟いた智が、
「N宮・・・その体質は、治せるのか?」
そう続けるとN宮は、
「・・・分かりません」
震える声で智に応える。
「治せるなら・・・俺は何だってする」
N宮を抱きしめる腕に力がこもり、
「・・・何故ですか?・・・僕のこと、覚えていないくせに・・・どうしてそんなに優しい言葉を僕に・・・くれるんですか?」
軽薄な優しさは暴力と似ています。
寂しそうに言ったN宮に、
「・・・分からない・・・俺はお前のことを知らない・・・俺の記憶の中にお前はいないはずなのに・・・お前が潤やA葉くんと親しげにしている様子を見て無性に腹立たしかった」
智はN宮の身体を押し戻し、真正面から視線を絡めると、
「・・・お前と離れるのが嫌なんだ・・・絶対に・・・どうしてって聞かれても答えようがない・・・怖い・・・お前を失うことが」
正直な、今の想いを口にした。
N宮は言葉もなく智を見詰めたまま唇を噛み締めて必死に嗚咽を堪えているが、溢れ出す涙を止めることはできないらしい。
そんなN宮の痛々しい姿に耐えられなくなった智は、自分の胸に彼の頭を抱き寄せた。
柔らかな髪の毛が智の顎下をくすぐり、フワリと立ち上がったシャンプーの香りを心地よく感じる。
「ごめん・・・こんな話されて迷惑なのは分かってるんだ・・・」
N宮の柔らかな髪を優しく撫でながら智が囁くと、彼はフルフルと首を横に振る。
「・・・僕は・・・貴方にとって何なんですか?・・・智」
「・・・N宮?どうして・・・名前で・・・?」
「ふふ・・・あなたが僕に指示したんですよ?名前で・・・【智】って呼べって・・・殆ど命令みたいなものでしたけれど」
この時、智の中にあった疑問が確信へと変化した。
昨日の俺は・・・コイツに。
N宮和也に・・・本気だったんだ。
と。
それは智の習慣と言うか・・・己の中にあるローカルルールのような決まりごとだ。
例えステディな関係の相手ができたとしても、決して【名前】で呼ばせることはしない。
・・・呼んでいい相手は限られている。
本気で惚れ込んだ・・・未だ見ぬ、運命の相手だけでいい。
智はずっと、そう思って生きてきたのだ。