妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
これは主である智の呼び出しサインだ。
昨日の約束通り、朝までベルが鳴ることはなかった。
主人に呼び出されたら即行動。
が、潤のモットー。
昨日の智の様子から抱き潰されているであろうN宮のことも気がかりで・・・自分だって失神するまでA葉を離さなかったことは完全に棚上げし、潤は智の部屋へと急いだ。
「ボス、お呼びですか?」
潤が智の部屋へと入ると、そこには予想外の智の姿があった。
全裸でいるのは智もN宮も同じ、けれど智の様子が明らかにおかしい。
まだぐっすりと眠り込むN宮の隣で、上半身を起こした智は困惑したような表情で潤を見つめていた。
「ボス・・・?」
潤はベッドへと近づいて片足を突いて跪くと、覗き込むように智の顔を見る。
すると、
「潤・・・こいつは・・・誰だ?」
チラリとN宮に視線を移して、そしてそれをすぐに潤へと戻した。
「ボス・・・」
潤は一瞬、言葉を失うもすぐに気を取り直し、
「ボス・・・昨日の夜・・・ラボでの出来事は覚えていらっしゃいますか?」
探るように言葉をかけた。
「昨日・・・?ラボでの出来事・・・」
智は思案顔で何かを思い出そうとしているのか、再びN宮に視線を落とした。
「ああ、そう言えば・・・誰かを拾ったような気が・・・」
智の様子に内心では狼狽えていた潤であったが、そこは厳格なことで有名な執事の養成学校出身である。
それを表に出すことは決してせず、ポーカーフェイスのままで会話を続ける。
「・・・A葉雅紀のことはご記憶されていますか?」
「・・・うん、S井くんの治験の被験者の・・・ああ・・・そういえばもう1人いたな?」
「N宮和也と言う名前をご存知ですか?」
「N宮・・・知らない」
「では、隣にいる青年に見覚えは?」
「ない」
「・・・さようで・・・ございますか」
「潤・・・?」
N宮の寝顔を一瞥して、そして潤を見つめて不安そうな声で名前を呼んだ。
「・・・はい」
「この青年は・・・誰なんだ?」
智に問われ、潤はひと呼吸置いてから、
「彼はN宮和也というA葉雅紀と同期で・・・S井が実施していた同じ治験の被験者です」
真実だけを、そのまま伝えた。