妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

N宮はその手を振り払い自力で歩こうと試みるも思うように足が動かず、結局は智に頼らざるを得なかった。

潤は運転席から降りると後部座席のドアを閉め、先に屋敷の立派な木製の扉を開けてから車へ戻ると助手席に座ったままのA葉へ肩を貸す。

 

「・・・うわっ!」

玄関を潜った瞬間、N宮が足をもつれさせて転倒しそうになったのを智が咄嗟に支え、

「大丈夫か?」

 

声をかけるも、

「うるさい・・・俺に・・・触るな・・・!」

 

逆毛を立てた猫のようなN宮は反抗の意思を示す。


潤はチラッとN宮を横目で睨んだ後で、A葉を支えたまま玄関の重厚な扉を閉めてから鋭い双眼を彼に戻した。

「・・・っ」

その瞬間、ビクッとN宮が震える。

N宮の潤に対する反応は至極まっとうなもので、得体の知れない相手から発せられる殺気にも似た威圧感に対する恐怖がそこにあった。

潤の主に対する絶対的な忠誠は、決して義務感から派生したものではない。

根底にあるのは、智という人間に対する尊敬と敬愛の念。

潤の智に対する忠誠心の深さをN宮が知るよしもなく、そもそもそのような世界とは無縁の彼に潤が智に臣従する様は理解が及ばないものだったのだろう。

潤が智の主従関係になんとなくは気がついてはいても執事などという存在にまでは辿り着けないN宮にとって、潤のその佇まいは十分に威圧的であり恐怖の対象だった。

蛇に睨まれたカエルのように動けなくなったN宮、けれど智も彼に助け舟を出すこともなくことの成り行きをただ見守っているだけだ。

膠着状態にも似たこの状況、そんな2人の間に立ち塞がったのは意外にもA葉雅紀だった。

「・・・まーくん?!」

潤の肩から抜け出したA葉はフラフラした足取りで2人の間に入り、両手を広げて潤の視線を遮った。

「ごめ・・・な・・・さい・・・ご迷惑を・・・」

その間も襲いくる衝動に身体を苛まれているようで、A葉は必死に己を保とうとはしているものの遂には膝から崩れ落ちてしまう。

「っ・・・は・・・あっ」

蹲ったA葉の背中に潤の手が触れた途端、また一際大きな吐精感が押し寄せて来たのか全身を硬直させて耐えていた。