妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
・・・と、思ったのも束の間。
また俺の方へと視線を向けた智くん、その姿を確認してからM本さんが深い深い溜息を吐いた。
「・・・ダメだな・・・ねぇ・・・S井くん?」
「・・・はい」
「やっぱりキミがいるとO野さんが集中できないみたいなんだ・・・申し訳ないんだけど一度、控室に移動してもらえるかな?」
M本さんは申し訳なさそうな表情でそう言ってから、
「お客様に順位つけるわけじゃないんだよ?でも、芸術家にとってお金を落としてくれる太客は生命線であるとも言える。特に初日にご招待している方々は熱心な智くんのファンなんだ」
事情を説明してくれた。
「そうですよね・・・お客様の存在がなければビジネスは成立しません。M本さん、俺は大丈夫です」
「理解が早くて助かるよ」
「これでも販売関係の仕事で生計を立てている身ですから。接客の大切さはいやと言うほど理解できているつもりです」
「ありがとう。作品に関してはまた時間を取って鑑賞できる時間を作るからね?・・・あ、そうだ」
M本さんはジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、
「ね、写真・・・1枚だけ撮らせてもらっていい?んー・・・パグの前で撮ろうか?あれ、O野さんが特に気に入っている作品なんだ」
「ジグソーパズルにもなってましたね」
「あれ、よく知ってるね?」
「さっき、チラッと物販ブースが目に入りました」
「ふふ、じゃあいいかな?」
促されて智くんのパグの絵の前まで行って、気恥ずかしさから笑顔が引きつっているのか、
「S井くん・・・リラックス」
M本さんが苦笑を漏らした。
宣言通り1枚だけ撮影してから、M本さんの案内で控え室へと通される。
・・・俺の写真なんてどうするんだろ?
とか思っていたら、
「・・・あのさ、S井くんなんてよそよそしくて嫌だから翔くんって呼んでいい?」
唐突に問われて、条件反射的に首を縦に振ってしまった。
「ありがとう、それから、連絡先も欲しい」
と、スマホを俺の方へと差し出したM本さん。
急に距離感を詰められて、俺の中に潜んでいた警戒警報が発動される。
だって・・・さっき、智くんとダメだったら・・・みたいなこと言ってたもん。
すると、そんな俺の気持ちなんて見透かしたみたいに吹き出したM本さんに、
「違うってば ww。変な意味じゃなくて、必要な連絡がある時用ね?」
先回りされて、自惚れに似た感情が漏れ出ていたのかと恥ずかしくなって恥ずかしくなった。