妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。

 

 
 
そして個展前日の金曜日の夜、俺は仕事を終えてから智くんのマンションへと向かった。
 
「翔くん、正式に契約内容変更届を出したから今後は堂々とうちに来ていいからね?」
 
俺の到着から少し遅れて帰宅した智くん。
 
何か作りたいって言ったのに、智くんに懇願されて(何故だろう・・・?)。

この日は手作り料理ではなくて俺が勤務しているデパ地下で購入した複数のデリをテーブルに並べながら彼の話を聞く。
 
「・・・どういう意味?」
 
「ここ、元々は住人は俺1人で届出してたんだ。でも翔くんと一緒に住むんだから同居人が増えることは申告しないとダメでしょ?」
 
「・・・智くん」
 
イケメンな笑顔を浮かべる智くんの言葉に、なんだか耳が熱くて困る。
 
それって・・・つまりは今まで・・・智くんが恋人関係にある人と同棲関係になったことはないって意味だよね?
 
正式な手続きをしてくれるほどに俺との関係を真面目に考えてくれているんだと思うと、胸がギュッと苦しくなるような感覚に陥る。
 
でも、俺と智くんは同性で。
 
俺は今まで男性と交際した経験はなくて、智くんの方にそれがあるのか確認したこともない。
 
俺にとって智くんは特別な存在で、性別を越えた【オンリーワン】な存在なんだけれど、智くんにとっての俺ってどんな存在なんだろう?
 
放って置けないとは言われたけれど、
 
「好き」
 
とか、ましてや、
 
「愛してる」
 
なんて言葉をもらったこともなければ俺からいったこともない。
 
スキンシップはあるけれど、軽いキス止まりでそれ以上の関係になったわけでもなくて色々な意味で不安しかないけれど。
 
でも、智くんの言動は俺を・・・その。
 
パートナーとしてみなしてくれていると感じさせてくれる内容であることは間違いない。
 
そんなことを考えていたら俺はすっかりフリーズしていたみたいで、
 
「翔くん・・・ごめん。もしかして俺って・・・重い?」
 
急にバックハグされて不安げな声色で耳元で囁かれて、
 
「そんなわけなじゃん・・・俺・・・その・・・嬉しくて」
 
と、素直な気持ちを伝えてみると、
 
「そっか・・・よかった。翔くん、絶対に俺だけ見てて・・・他の奴に視線を奪われるなんて・・・許さないからね?」
 
泣きそうな声で言われて、俺も泣きそうになった。
 
智くんも・・・きっと不安なんだ。