妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。

 

 
 

「・・・智くん?」

 

ヘナヘナとその場へと座り込んだS井と、

 

「・・・俺はオマケか!」

 

不貞腐れたような顔をした斗真。

 

智はそのまま視線をカズに移し、自分を支える形で呆然と立つ正真正銘のカズの腕から抜け出して、

 

「・・・おい、大丈夫か・・・カズ?」

 

小首を傾げて、顔を覗き込むように言う。

 

「・・・あ」

 

震えるカズに、

 

「カズ・・・お前、カズなのか?」

 

S井が状況を把握するべく、座り込んだままカズを見上げて確認すると、

 

「・・・はい」

 

蜂蜜色の美しい瞳をS井に向け、コクリと頷いて見せた。

 

「カズくん、記憶・・・戻った?」

 

恐る恐るといった体で質問した斗真に、

 

「・・・はい。O野さんの姿を見た瞬間に・・・その、頭の中で真っ白に広がっていた霧が一気に散ったみたいな・・・そんな感じでした」

 

カズが戸惑ったような表情を浮かべて答えた。

 

「急展開すぎてなにがなんだか」

 

と、ぼやくようにS井は言い、

 

「俺たちだって意味が分かんねーよ・・・な、カズ?」

 

智はため息をついて、さり気なくカズを抱き寄せる。

 

「・・・あの」

 

智に腰を抱かれて真っ赤になったカズに、

 

「ちょっと待って・・・待って、あのさ?30分しか時間ないんだ・・・30分経ったらO野くんを楽屋に返す必要がある。それまでに俺とカズくんにも分かるように説明して!」

 

事情を全く聞かされておらず蚊帳の外状態であったことを不満に思う斗真にジロッと睨まれたS井は、

 

「分かった・・・けど、俺だけじゃどーにも・・・智くんとカズにも協力してもらって、経過と記憶の突き合わせをしないと」

 

ちょっとだけ情けない顔をして、3人の顔を見回した。

 

そして4人は床に輪になるようにして座り、S井は後で状況を確認できるようにと念のためにスマホで録音することを提案する。

 

それに全員が納得したこと確認して、S井がスマホのレコーダーをオンにし、とりあえずは今朝のことから説明を始めることにした。

 

******

 

この日の朝、午前6時を過ぎた頃、S井はまだベッドの中にいた。

 

けれどその心地よい眠りは、突然のスマホの着信音で破られてしまった。

 

「・・・誰だよ」

 

不機嫌そうに呟いてスマホに手を伸ばした。

 

くだらねー内容の電話ならコロス。

 

殺意に満ちたS井の視界に飛び込んできたのは、登録されていない上に全く見覚えのない番号が表示されたディスプレイ。

 

いつもなら警戒心バリバリで対応を考えるS井であるが、この時だけ違っていた。

 

・・・智くん!