妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
やがて斗真がメンバーを引き連れて楽屋に戻り、すっかり明るくなったカズの表情にも安堵の色が宿った。
表向きは全てが順調に流れているものの、いつまでもこのままの状況が続くことは誰の本意でもない。
とにかく、今はできることを全力でやろう。
カズはその決意を固めると、智としての役割を全力でこなしていくのだった。
*****
「・・・何を笑ってるんですかっ!?」
智のマンションで鏡の中を覗き込んでいたカズ。
背後にS井の気配を感じて慌てて振り返ると含み笑いを漏らす彼とバッチリ視線が合ってしまった。
・・・
O野さんに身惚れている姿を見られてしまいました。
一生の不覚と項垂れるカズに、
「大丈夫・・・大丈夫 ww。智くん、イケメンだもんね」
クックッと笑いを堪えるS井。
恨めしげに見つめるカズに、
「いや・・・うん・・・やっぱ俺、カズのこと好きだわ」
S井はそう言って肩を震わせながら浴室を出ていく。
もぉ・・・恥ずかしすぎる。
カズが赤面すると、鏡の中の智が赤面する。
・・・O野さん。
「あなたは・・・何処にいるのですか?」
指先でO野さんをなぞるのは何度目でしょう・・・?
僕は・・・あなたに逢いたい。
直接、抱きしめて欲しい。
そう願った瞬間、今まで感じたことのない痛みに襲われる。
それは・・・まるでナイフで心臓を抉るような激痛だった。
あまりの痛みに呼吸が苦しくなり、目を開けていることもできないほどのそれに声にならない叫びをあげ、その苦しみから逃れようと智の身体を抱くようにしてカズは座り込んでしまった。
「・・・カズ!?」
異変に気がついたS井が扉を開いたのは、この直後。
S井の肩を借りベッドへとカズは移動した。
崩れ落ちるように蹲ったカズの姿に、
「救急車・・・!」
S井がスマホを取り出し119番しようとしたところに、智の手が伸びてそれを制止した。
「・・・大丈夫です」
「・・・カズ?」
「ちょっと・・・O野さんへの想いを拗らせすぎちゃいました」
力なく微笑む姿に、
「ごめん・・・俺にはどうしてやることもできなくて」
S井はカズが入った智を引き寄せると、強く抱きしめた。
伝わる暖かさ、それはS井の優しい気持ちそのもの。
・・・S井だって辛いのだ。