妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
あまり馴染みがない世界なのか気後れしているみたいな表情を浮かべるその人の緊張を解いてあげたくて。
俺は店内を案内しながら、お客様の好みを確認すべく会話を重ねていく。
曰く、
『おじさんっぽくなるのはイヤ』
だとのことみたい。
イケメンだし(俺の超絶的主観)、何を着ても似合いそうだとは思ったんだけど。
とてもスタイルがイイから、ボディラインに添うシングルスーツを試して欲しくてお勧めしてみる。
ちなみに、俺が着ているスーツと同じラインの色違い。
ダークカラーのスーツに白いシャツ、それから自分が着けているネクタイと同系色のものをピックアップして試着室へとご案内。
この後に及んでも、
「似合うかな?」
なんて不安げな彼の姿が妙に可愛らしく感じてしまって、
「保証します・・・さぁ、どうぞ」
半ば強引に試着室へと押し込んで、どさくさ紛れに私服を脱がせてみると、そこにあるのは鍛え上げられた肉体だった。
・・・かなり着痩せするタイプなんだな。
俺も筋トレは習慣化していて鍛えているんだけれど、やはり筋肉の付き方・骨格なんかでかなり印象が違ってくる。
細マッチョなボディは惚れ惚れするレベルのもので、でも仕事中に見惚れるわけにもいかないから。
仕事中だぞ集中しろ。
と、己を叱責しつつスーツを着せてネクタイまで整えてから鏡を確認してもらうも、彼は鏡を凝視したままでフリーズしてしまった。
あ・・・好みじゃなかったのかな。
スーツの見立てにはかなり自信があるつもりだったけれど、俺の好みとお客様の好みが解離している可能性もゼロではない。
鏡越しにチラチラと俺の方を見る彼の視線に気がついて、気に入らないと言い出せないのかと少し焦ってしまう。
「・・・お気に召しませんか?でしたら・・・」
と、別の商品をご提案しようと視線で商品を物色し始めた俺に、気に入ったらこれにすると慌てた様子で彼が言う。
もしかして気を使わせてしまったのかもと不安になって、他に気になる商品がないか確認してみても不自然に視線を逸らして首を横に振る。
慣れない場所は居心地が悪いのかもと俺も自分を納得させ、けれど今の自分と丸かぶりじゃ面白くないなと思って。
深いブルーのネクタイを当ててみると、なんだかそれが凄く似合ってて。
このコーデでOKをくれたその人の笑顔が凄く優しそうで、俺は意識をそっちに持っていかれないように必死だった。