妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
確かに入れ替わりを証明できない以上、世間一般的には今のカズの状況は多重人格者の可能性も含めて探っていく形になるのだろう。
「S井さん・・・」
「智くんは俺のことを【翔くん】って呼んでる」
「えっと・・・翔くん」
「いい感じだカズ・・・じゃあ、明日は斗真に会いにいくから・・・少し眠れる?」
コクンとカズがまた頷き、
「俺はソファを借りるね?やっぱ・・・ちょっと心配だから」
そう言ってS井はジャケットを脱いで、ベッドから少し離れた位置にあるソファに腰を下ろした。
S井にとってはカズを1人にできないから・・・というのがここに留まることにした理由だ。
同時にカズにとってもS井が傍にいてくれることは心強くて嬉しいことだった。
自分の中にいる智も・・・きっと、心細い思いをしているのでしょうね。
カズはそんなことをぼんやりと考えていると、やがて引力に逆らえなくなったように瞼がゆっくりと降りてきて穏やかな眠りの世界に落ちて行く。
S井はカズの寝息きを耳で確認して、漸く自分も眠りの世界に入って行った。
これからどうなるのか、それはS井にだって分からないのだった。
*****
「・・・はぁ」
「・・・気持ちは分かる・・・けど、マジなんだ」
事務所が所有するスタジオで合流した智と&S井と斗真、いつになく真面目な顔をして向き合う2人に怪訝な視線を斗真が向けた。
大きな鏡の前、床に胡座を書いて車座になった3人の間に流れる空気は重かった。
「つまり、このO野くんはO野くんであってO野くんじゃない・・・そういうことなんだね?」
斗真は俯いたままで顔すら上げようとしない智をチラッと見て、そしてS井に視線を着地させた。
暫し無言の時間が流れた後、
「O野くん、Rain踊ってみてくれない?ソロ曲でダンスの状態を確認させて欲しい」
斗真に言われて、カズが顔を上げる。
S井はそんなカズの様子を不安げな表情で見つめ斗真は、
「できるところだけでもいいから・・・ね?」
穏やかな笑みを浮かべてレッスン用の服へと着替えを促し、カズを鏡の前に立たせて自分たちは少しだけ後ろに下がって鏡の中に立つ彼を見つめる。
イントロが始まると・・・思いがけずカズは即反応を見せ始めた。