妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

「じゃ、朝9時に・・・よろしく」

 

S井は電話を切ると、

 

「カズ、朝になったら斗真のトコに行こう」

 

そう言ってカズの様子を伺う。

 

「斗真・・・振付師の?」

 

「ちゃんと覚えてるんだね・・・よかった。うん、その斗真。カズ・・・聞いて?智くんが戻ってくるまでの間、カズにはどうあっても【智くん】として活動してもらうしかない」

 

「・・・そんな」

 

「・・・カズの気持ちは分かる・・・でも、智くんはstormの中心人物・・・休ませるわけにはいかない」

 

「・・・・・・」

 

「だから、まずは斗真にだけ真実を話す・・・あいつも俺と同じで途中から裏方に回ったけれど、俺たちと親しい関係だし信頼できる。歌はリップシンクでなんとかなるけれど、ダンスに関してはカズに頑張ってもらうしかない」

 

「無理ですよ・・・S井さんがすればいいじゃないですか!」

 

カズは喉が潰れるくらいの声で叫び、そんなカズの姿にS井が慌てる。

 

「カズ・・・喉は大切にしてくれ」

 

「僕に何を求めているんですか・・・誰も彼もが皆、そんな器用な真似ができるとでも・・・?」

 

「智くんの活動にはたくさんの人間が関わっているんだ・・・それはstormの活動の根幹に関わる大きなことなんだよ」

 

「・・・だって」

 

「俺だってまだ受け入れるのに精一杯だ・・・そして誰もが簡単にこんなこと、信じてくれるわけがない。下手をしたら智くんのメンタル的な病を疑われる結果になりかねない」

 

S井の言葉に、カズはビクッと震えて怯えたような瞳を向ける。

 

「精神的な入れ替わりを証明する方法なんてない・・・しかも、カズ自身が自分の正体を忘れてしまっているのなら余計に・・・カズ。stormは活動を止めることはできない・・・だから、今はやれることから潰して行こう。俺も全力でフォローする」

 

「他に方法は・・・ないのでしょうか?」

 

「残念ながら・・・ない。後は智くんが・・・カズの体の中にいるはずの彼が名乗り出てくれることを期待しつつ・・・俺たちもカズ自身のことを調べて行こう」

 

S井の言葉にカズも渋々ながら頷くことしかできなかった。