妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

「んー・・・いや、俺は嫌いじゃないよ・・・カズみたいなタイプ。でも、もう少しだけ他人の立場で考えられるようになったらいいんじゃね?」

 

嫌いじゃないと言われて、カズがパッと顔をあげる。

 

「うん、嫌いじゃないから・・・それでさ、今後のことも話し合わなくちゃダメだよなぁ」

 

S井は呟いてからチラッと腕時計の時間を確認した。

 

「0時過ぎ・・・か。明日は午後からだし、カズ・・・少し話そうか?」

 

S井の言葉にカズは素直に頷き、2人でこれからのことを話し合うことになった。

 

しかしS井からの提案は、カズにとっては地獄みたいなものだった。

 

智の記憶、智の身体に能力・・・歌にダンス。

 

全てをそのまま受け継いだ形でカズは存在しているものの、思考に関してはカズのままなのが現実。

 

今まで表舞台で活躍したような記憶もなく、認知度も高いアイドルグループのど真ん中に放り出されるなんて、ほんの数時間までは考えたこともなかったはずだ。

 

S井の話にドン引きし青ざめ、

 

「無理です」

 

と、繰り返すカズの姿にS井も頭を抱えるばかりだ。

 

体も動くし声も出てる・・・それは確かに智のそれなのにオーラが全く違う。

 

見え隠れするオドオドした態度がスケールを小さく見せるのか・・・とはいえ、メンタル的には素人のカズに智と同等の存在感を求めることの方が無理な注文なのだ。

 

それはS井にだって理解出来ている。

 

それでも、智には仕事が詰まっているわけで、ここはもうカズになんとかしてもらうしかないのが現実だ。

 

社長と・・・メンバーに真実を打ち明けるべきなのか。

 

膝を抱えて座り込んでしまったカズを茫然と眺めながら、S井は考えを巡らせていた。

 

・・・いや、それじゃ恐らく、周囲までパニックに陥れるだけで更に悪い結果を招くことになりかねない。

 

それは負の連鎖に他ならず、周囲が騒がしくなればカズの混乱も深くなるだけだろう。

 

それでも、この事態をS井1人で背負うには内容が重すぎる。

 

・・・そうだ。

 

S井は何かを思いついたように顔を上げると、スマホを取り出して誰かに電話をかける。

 

不安気に見上げるカズにS井は、

 

「彼は協力者だよ・・・俺とも智くんとも気心が知れた存在・・・だから安心して」

 

そう言って、真夜中にも関わらず応答してくれた相手と真剣な顔をして話し込んでいた。