妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
「助かる・・・俺の希望は二つだけ。一つ目は俺がここに居ることをウチの関係者に漏らさないこと。もう一つは今日泊まる場所の確保・・・こいつが一緒だからどんな小さな部屋でもいい。なんなら心理的瑕疵ありとかで使えない部屋でもなんでもいい」
・・・何処のホテルにも一部屋くらいあるだろ?
智が両手に抱き直した黒猫を鼻先に出されたドアマンは、
「・・・畏まりました。空いているお部屋をすぐにご準備いたしますので・・・その、普通のお部屋を」
またインカムで誰かと会話し、
「こちらの猫は一旦、お預かりを・・・えっ?!」
腕を伸ばしたドアマンの手を黒猫は前足でピシッっと叩いて、シャーッと臨戦態勢で威嚇した。
「・・・プッ」
今までツンとしていた猫があからさまに表現した拒絶の意思、その豹変っぷりに智が堪らず吹き出すとイカ耳になっていたそれがピクリと動く。
「悪い・・・なんか可愛くてさ・・・お前・・・おもしれー」
智はスーツ胸元に猫を押し込んで、
「ほら、これでいいか?」
と、ドアマンに問う。
関係者に知らせるなとか言っておきながら、その不思議なコンビの姿は嫌でも他人の目を引くことになるだろう。
あなたを見知った誰かが、あなたの姿を見つけてしまえばアウトですよ?。
と、ドアマンは内心は、穏やかではない。
「・・・むしろ目立ちますが」
なんて死んでも言えないドアマンは、仕方なく通常はお客様をご案内する時には使用しない非常用通路を使うことを決めた。
裏道から案内されたのは、客室の最上階にあるスイートルーム。
「・・・もっと普通の部屋でいいんだ」
と、中に入ろうとしない智に、
「常連のO野様をそのようなお部屋にご案内するわけには行きません」
ドアマンが困惑の色を浮かべつつ入室を促した。
万が一にも、この滞在の件が創藍の幹部の皆様のお耳に入った時のことを考えると、恐れ多くてそのようなことはできません。
というのがホテルサイドの本音であることは明白であり、智もそのことは分かっている。
長い付き合いのある企業関係の一部の人間には、創藍が元々はやくざ組織である【蒼紀会】から派生していることを知る者も多いのだ。
仕方なく部屋を使うことにした智は、広い室内を見渡してベージュカラーのソファに腰を下ろした。