妄想小説です。BLの意味が分からない&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
*猫の種類に関しては被毛と目の色で合致するコがいなかったので架空のものになります(ロシアンブルーとかシャルトリュー のイメージで書きました)。
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「・・・虚しい」
クライアントからの無茶振りで急遽残業を強いられたある日、翔は帰宅ルートにある繁華街を歩きながらポツリと呟いた。
この日は1月24日で週のど真ん中の水曜日、そして翌日の25日は彼の誕生日でもある。
この年になって誕生日なんて・・・と、翔は考えていたけれど、彼が勤務する会社には福利厚生の一つとして【誕生日休暇】なるものが存在し、それは本人の意思とは関係なく当然の如く適応される。
「お祝いの気持ちがあるなら、前日の残業なんて割り当ててるんじゃねーよ」
まだ日付が変わる時間帯ではないけれろ、夕食の時間はとっくに通り過ぎた時間帯。
街中には休日とか休日前と同じとはいわないまでもそれなりに人通りがあり、誰もが楽しそうは表情をしているように翔の目には映る。
翔はといえば残業中に差し入れされた軽食を軽く摘んだ程度で、端的に表現すれば【腹ぺこ】状態。
更に残念なことに翔は年明け早々、彼女に振られたばかりの寂しい身の上。
平日ど真ん中、社会人でもある翔は適当に友達を呼び出す気にもなれず、今年の誕生日はぼっち確定。
やさぐれても仕方がない心情であることに間違いはなかった。
ふと、視界に飛び込んできたのは立ち飲みの店。
さほど広くない店内、調理場をぐるりと囲むように設置されたカウンター席オンリーのその店に、翔は引き寄せられるようにフラフラと入店する。
「いらっしゃいませ!」
店には翔と同じような一人客も複数いて、特に気負わず気楽に飲めそうな雰囲気だ。
白髪まじりの恰幅の良い大将の元気な声に、
「あの・・・おすすめの日本酒と・・・それから寒ブリの塩焼き・・・さつま揚げと・・・メシ・・・何かありますか?」
翔が空いているカウンターに立ってオーダーを開始する。
立ち飲みだ・・・サクッと飲んでサクッと帰ろう。
取り急ぎ冷えた心と体を温める何かが欲しかった。
「外、寒いでしょ?鮭のお茶漬けなんてどう?」
「あ、じゃあ・・・それで」
翔は巻いていたチェックのマフラーを解いて首に掛けた状態にし、ホッと一息つく。
さっさと重いトレンチコートも・・・窮屈なスーツも脱いでしまいたい。
そう考えながら酒と料理を待ちつつ視線を外へと向けると、
「げ・・・マジか」
空からチラチラと舞い降りる白い羽のようなそれを認めて、ゲンナリとした表情を浮かべた。