妄想小説です。ご注意ください。BLの意味が分からない方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

・・・けれど、それは普通のデザートプレートではありませんでした。

 

「・・・智」

 

「・・・改めてプロポーズするって言ったじゃん」

 

中華料理のデザートらしく、智のお皿には小さなサイズのマンゴープリンの器とか胡麻団子、桃の形のお饅頭なんかが見目麗しく盛り付けられていました。

 

でも僕の前にあるお皿には6時方向の縁に【Stay with me】とチョコペンで書かれたメッセージ。

 

可愛らしく飾られたお花の真ん中には、黒い小さなギフトBOXが置かれていました。

 

「・・・こちらのお客様からです」

 

A葉さんは恭しく智の方を指し示しながら僕に声をかけ、僕はといえば突然のサプライズに驚いて、言葉に詰まってしまいます。

 

「・・・今日、プロポーズするって決めてたんだ・・・M本さんがお前の手から離れた・・・もう、俺だけの和ってことでいいんだよな・・・?」

 

智がそう言いながら、白いお皿の上のBOXを手にとって開けてから、

 

「これからは俺だけの和でいてください」

 

優しい手つきで僕の左手を取り、薬指に指輪を通してくれます。

 

「・・・智」

 

その指輪は30年前にもらった控えめなタイプの指輪とは違い、存在感をしっかり主張しているみたいな。

 

少し太めのタイプのリングです。

 

これまで、仕事の邪魔になるからとネックレスとして使用していることも多かったのですが、

 

「もう現場に出る機会も少なくなったし・・・俺の和だって誰が見ても分かるようにしたい。俺の我儘・・・聞いてくれ」

 

少し照れた表情の智の顔が、また涙で滲みそうになって、

 

「あー・・・泣くな・・・泣く前に俺の指輪を・・・お前がつけてくれ」

 

そんな風に言われて泣かないはずもなく。

 

グズグズと鼻を鳴らしながら、それでも智がジャケットの胸ポケットから取り出した彼用の指輪を手に取ります。

 

微かに震える僕の指先に優しく触れた智、僕よりゴツくて節が目立つ智の左手の薬指にそれを渡すと。

 

「・・・ありがとう」

 

智が優しい顔で微笑んでくれました。

 

・・・ほらね、潤くん。

 

僕も・・・こんなに幸せなんです。

 

どうせならこの姿・・・あなたに見て欲しかったけれど、僕と智(と、A葉さん)の心の中に麗しい思い出として閉じ込めておけることも・・・また一興なのかもしれません。

 

僕はこれからも智に永遠の愛を誓いますし、それは智も同じでしょう。

 

僕の人生は波乱万丈ではありましたが・・・今、とても幸せです。

 

潤くん、あなたも絶対に大丈夫。

 

もう、直接会うことはないかもしれませんが同じ空の下、僕はあなたの幸せを祈りつつ智と共に過ごします。

 

(終)

 

後ほど、あとがきをあげます。