妄想小説です。ご注意ください。BLの意味が分からない方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

 

「・・・?」

 

取り出してみると、それは薄いブルーの小さな封筒に入ったメッセージカードらしきものでした。

 

【和へ】

 

智の筆跡で僕の名前が表に書かれた思いがけない智からのプレゼント。

 

「・・・いつの間に?」

 

だって、ここでS井先生と会うことが決まったのは昨日で、智は今日から飛行機の距離の場所まで出張で。

 

こんなものを準備する時間があったなんて思えないのですが、それでもコレがここにあると言う事実から智が時間をやりくりして準備してくれていたことは間違い無いんですよね。

 

暫く封筒を眺めてから、中に入っているメッセージカードを取り出してドキドキしながら開いてみたら、

 

「・・・智」

 

どこまで僕を泣かせたら気が済むんですか。

 

【和へ やっと和が俺だけの和になる日が来ました。後日、改めて俺からのプロポーズを受けて欲しい。 智】

 

丁寧な筆跡で書かれた智からの言葉には30年分の彼の気持ちが溢れてる気がして、せっかく止まったはずの涙がまた溢れ出して困ってしまいます。

 

・・・そういえば、30年前は僕の方から逆プロポーズをしたんでしたっけ。

 

あの時の智の焦った姿は、今でも僕の記憶の中で鮮明に蘇らせることができます。

 

首から下げている鎖の先端で揺れるプラチナの指輪を手に取ってみると、そこから智の温かな想いが伝わってくるような気がして。

 

傷だらけだし、年齢を重ねてサイズが変わってしまった僕の左手薬指には嵌められなくなってしまったけれど、今でも僕の宝物。

 

ふふ、人生にはいいことと悪いことが同じくらいの比率で起きると聞きますが、それは本当のことなのかもしれません。

 

辛い出来事の後には、こんな風に幸せを感じることができることがあって。

 

僕の場合はそれは物質的なことを意味しているのではなく、大切な智との深い繋がりを感じる出来事で。

 

だから僕は今、こうして生きていることができているのです。